爽やか笑顔は、敵か味方か(7)
それでも、なんとかこの場を切り抜けなければと、タニアは頭をフル回転させる。
「ぎ、ギルド? 何言ってるの? そんなの知らない。アタシはただ……」
タニアは必死で誤魔化そうとした。しかし、セリオの笑みはますますその邪悪さを増していく。タニアの全身が恐怖で震えた。そんなタニアに、セリオは優しく語りかける。
「そんなこと言ったって、ダメだよ。俺、もうわかっちゃったんだから」
セリオは恐ろしく冷たい目をしたままニッコリと微笑んだ。タニアには、それがとてつもなく恐ろしく感じられて、膝から力が抜けた。ガクリとその場にへたり込みそうになったタニアを、セリオが瞬時に席を立って支える。両手でしっかりとタニアの腰を抱きとめ、その耳元に口を寄せて囁いた。
「ハーブティー、ごちそうさま」
それはまるで恋人に、甘い言葉をささやくような仕草だったが、かえってタニアの全身は恐怖に固まった。
もう逃げられない。
そう思った時、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「おい。 何やってるんだ」
タニアは咄嗟にその声の主を探す。そして、セリオの背後にその姿を認めて思わず叫んだ。
「来ちゃダメ!」
その鬼気迫る叫び声に、縁側の向こう側に立つジャックスは怪訝そうな顔をする。
「イチャつくのは結構だが、時と場所を弁え……」
そこまで言いかけたジャックスだったが、タニアが恐怖に震えていることに気がついて言葉を切る。そして、ギロリとセリオを睨みつけた。
「おい、お前。一体何をしたんだ? タニアが怯えているようだが?」
そんなジャックスの視線を軽く受け流して、セリオはニッコリと笑う。
「嫌だなぁ。師匠。久しぶりの再会なのに、そんなに怖い顔で睨まないでくださいよ」
そう言ってニッコリ笑う青年の笑顔には、先ほどの邪悪な雰囲気など微塵も感じられない。最初の好青年の笑顔に戻っている。
ころころと変わるその態度に、タニアは混乱して目を白黒させた。そんなタニアに、セリオはいたずらが見つかった子どものようにペロッと舌を出す。
「ここまでかな。驚かせてごめんね」
その口調は、全く悪びれた様子がなかった。
呆気にとられているタニアを椅子に座らせると、セリオはニヘラと笑いながらジャックスに向き直る。その態度は、まるで何事もなかったかのようだ。しかし、タニアは放心状態。ジャックスはそんな二人の様子を交互に眺めて、小さくため息をついた。
「セリオ。俺にぶっ飛ばされたくなければ、正直に言え」




