爽やか笑顔は、敵か味方か(6)
獲物を見定めるその眼差しに射抜かれて、タニアは思わず息を呑む。恐怖すら感じて動けずにいるタニアをセリオはじっくりと見る。頭の天辺からつま先まで、じっとりとした視線が絡む。まるで値踏みでもするかのようだ。
タニアは思わず身震いした。
(この人、一体何なの?)
そんな疑問を浮かべながらも、それを口にすることはできなかった。
青年の不躾な視線に耐えかねたように、タニアは顔を背ける。そんな様子を見て、セリオは狡猾そうな笑みを浮かべる。そして、顔の前でパンッと両手を合わせた。楽しそうな声をあげる。
「そうか! ここがこの国に新しく作られたっていう諜報ギルドの拠点だね」
その声音は軽薄で明るい雰囲気だったが、どこか鋭さを感じさせた。
タニアの心臓が早鐘を打ち、全身に冷たい汗がどっと噴き出す。そんな反応をすれば図星だと告白しているも同然だ。しかし、そうとわかっていても、この恐怖にも似た感情をどうすることもできなかった。
タニアはギュッと目を閉じる。心臓が早鐘を打ちすぎて、今にも口から飛び出してしまいそうだった。
セリオはそんなタニアの様子を、まるで観察するかのような眼差しで見つめている。
沈黙が辺りを包み込んだ。その静寂は、タニアにはまるで永遠のように長く感じられた。やがてセリオが静かに口を開く。
「そうと分かれば、ここは潰しておかないといけないな」
セリオは、口元だけを歪めた笑みを浮かべていた。その笑みのあまりの邪悪さに、タニアは恐怖で全身の血が凍りつくような気がした。
もうダメだ……。この人はきっと、隣国のスパイか殺し屋だったんだ。ここを潰して、アタシも殺すつもりなんだ。
タニアは絶望で目の前が真っ暗になった。




