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アタシはギルドの受付嬢。でも、なんかちょっと違くない?  作者: 田古 みゆう


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爽やか笑顔は、敵か味方か(5)

 それはあまりにも唐突で、何かを探るような質問だった。しかし、自身が考え出した「香草亭」を褒められて浮足立っているタニアは、その不自然さに気づかない。素直に質問に答えてしまう。


「お菓子をもらうために来るのよ」

「お菓子?」

「ええ。木の実や薬草なんかを持ってきた子には、それと交換でクッキーをあげているの」


 そんな話をしていると、ちょうど厨房から焼き上がりを知らせる音が聞こえてきた。タニアはセリオとのおしゃべりを一時中断して厨房に戻り、オーブンからクッキーを取り出した。焼き上がったばかりのクッキーはホカホカと湯気を上げ、香ばしく美味しそうな匂いで辺りを満たす。


 タニアは出来立てのクッキーを3枚皿にのせると、セリオのもとへ戻った。


「ちょうど焼き上がったところなの。どうぞ」


 差し出されたそれは素朴な焼き菓子だった。「香草亭」と言うだけあって、生地にハーブが練り込んであるようだ。セリオは何の躊躇いもなくクッキーを口へ放り込む。サクッと小気味よい音をたてて口の中でクッキーが砕けた。出来立てのクッキーは甘さ控えめではあったが、素朴な味が口に広がり、疲れた身体にじんわりと染み渡るようだった。


 セリオは残りのクッキーも次々と口へ放り込み、モグモグと咀嚼する。あっという間にクッキーを平らげたセリオは、大袈裟すぎるくらいの声で感嘆をもらした。


「美味いっ! これは、子どもたちも通いたくなるはずだよ」


 お世辞だとわかっていても、セリオの言葉にタニアは純粋に嬉しくなる。自然と頬が緩む。タニアが恥ずかしそうにモジモジとしていると、あることに気がついたらしいセリオが眉根を寄せた。


「でも、木の実なんかの交換できる物を持っていない子どもは、どうすればいいんだい? せっかくここへ来たのに、何も貰えないんじゃひどくがっかりすることになるよ」


 その口調は先ほどと変わらず優しいものだったが、その目は、まるで何かを見透かそうとするかのように鋭い光を放っていた。タニアはそれには気がつかず、「大丈夫」と自信に満ちた笑みを見せる。


「ここで、クッキーと交換できるのは、木の実や薬草だけじゃないの」

「というと?」


 セリオが不思議そうに目を瞬き、タニアは答えるように微笑んだ。


「木の実や薬草の代わりに、情報をくれる子にもクッキーを渡してるんだ」


 タニアのその言葉に、セリオはニンマリとした笑みを浮かべた。


「情報? 子どもたちから何を聞くっていうんだい?」

「なんでもいいのよ。森のどこそこがいつもと様子が違うとか、街に知らない人がいたとか。要は、街の異変について何かわかればいいの」


 そこまで話して、タニアは自身が失敗したことに気がついた。しまったと思った時にはもう遅い。完全に相手のペースに巻き込まれていた。


 思わず口を手で覆う。表情を歪めて必死で何かを言い募ろうとしたが、目の前の青年がそれを制した。


「なるほどね。つまり、ここはいろいろな情報を集める場所として作られたってわけか」


 セリオは大きく1つ頷く。その口調は先ほどまでとは打って変わって、妙に冷めて聞こえた。


 セリオは屈託のない笑顔を浮かべているのに、その瞳はまるで獲物を狙う肉食獣のような眼差しだった。

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