爽やか笑顔は、敵か味方か(4)
セリオは興味深そうに室内をぐるりと見回した。
「ここを始めたのは君のご両親かい? ぜひともお礼を言わせてもらいたいね」
セリオのその言葉に、タニアは小さく頭を振る。
「ここを始めたのはアタシ。アタシ、両親はいないから。一人でここをやってるの」
「そうか。それは辛いことを聞いたな」
セリオはそう言うと目を伏せる。タニアは慌てたように両手を振った。
「あっ! 気にしないで! アタシ、今、すごく楽しいんだ! だって、夢が叶って、こうして働くことができているんだから」
そう言ってニッコリと笑うタニアに、セリオは優しい眼差しを向ける。それからまたハーブティーを口に含んだ。しばらく沈黙が続いたが、やがてセリオはカップをテーブルに置くと口を開いた。
「夢って、こうしてハーブティーを出す店を持つことだったのかい?」
セリオの問いかけにタニアは「違う」と言いかけて、慌てて口を押さえた。危うく「ギルドの受付嬢になることが夢だった」と言いそうになったが、タニアはなんとか言葉を飲み込んだ。あたふたとするタニアの様子にセリオは目を細める。
「あ~、ちょっと違うんだけど、まぁ、そんな感じ? あはは」
笑って誤魔化すタニアにセリオはどことなく探るような視線を向けていたが、やがて静かにハーブティーを啜った。
タニアは内心、冷や汗をかいていた。まさか、ここがギルド拠点で、それを誤魔化すために休み処を運営しているなんて言えるわけがない。それは最重要機密。誰にも知られるわけにはいかないのだ。タニアは恐る恐るセリオの横顔を盗み見た。するとセリオはタニアの視線に気がついたのか、顔をあげてニコリと微笑んだ。
「ここは居心地が良いから、つい長居してしまいそうだよ」
ニコニコと人懐っこい笑顔でそんな褒め言葉を言われては、タニアも悪い気はしない。
「そう?」
タニアはすまし顔でそう答えたが、まるで自身が褒められたようで内心嬉しかった。
「ああ。ここで一休みした人たちは、ついついおしゃべりに夢中になってしまうのだろうな」
タニアは思わず苦笑する。確かにそれを見込んで「香草亭」を始めたのだが、今のところ目論見は外れ、閑古鳥が鳴いている。
「そうなってくれたらいいのだけど、今のところは、街の子どもたちしか来たことがないわ」
タニアの言葉に、セリオの目が一瞬鋭くなった。しかし、すぐにその目は細められ、優しげな眼差しに戻る。
「へぇ。子どもたちは、どうしてここへ来るんだい?」




