爽やか笑顔は、敵か味方か(2)
「今日はまだ朝摘み前だから、フレッシュハーブはないんだ。だから、このハーブでもいい?」
そう言ってタニアが差し出したのは、乾燥させた数種類のハーブを独自の配合で調合したタニア特製ハーブである。
青年はタニアから特製ハーブの入ったビンを受け取ると、興味深げにその中を眺め、蓋を開けて匂いを嗅ぐ。それから小首を傾げ、ニコリと笑った。
「俺にはよくわからないから、君にお任せするよ」
自分に向けられた爽やかな笑顔に、タニアは少し顔を赤くする。それを隠すように、タニアは俯きがちにハーブティーの用意を始めた。薄布で手早くハーブを包むと、それをポットの中へ投入する。途端に、爽やかな香りが辺りに広がった。
「ああ、良い香りだ」
深く息を吸い込む青年の仕草に、タニアはまるで自分が褒められたかのように照れ笑いをする。
「これはアウリスの葉とルドラの根、それからカリュナの花と、ミルセラの実を合わせたものなの。アタシ好みで調合しているから、あなたの口に合うかはわからないけど……」
ポットの中のハーブが蒸れて成分が抽出されるように、タニアはポットを数回優しく揺らす。それから頃合いを見計らいハーブティーをカップに注ぎ入れた。
赤みを帯びた香り高いハーブティーに、青年は目を丸くする。カップを手にすると、その香りをもう一度楽しむように軽く息を吸い込む。そしてゆっくりと口をつけた。思わず見とれてしまうような所作で一口飲み下し、青年の頬が緩む。
「美味しい……」
青年は一言呟く。その反応はとても良いもので、タニアはホッと胸を撫で下ろした。
「アウリスの葉は頭をスッキリさせて、ルドラの根は体を温める。カリュナの花の甘い香りは心を落ち着かせ、ミルセラの実は疲労回復に効くの。だから、長旅をする冒険者の朝にはピッタリだと思って」
タニアがハーブについて説明を始めると、青年は目を瞬かせる。それからカップの中のハーブティーに視線を落とした。その後再びタニアを真っ直ぐに見つめた。その瞳は興味と探求心でキラキラと輝いている。
「冒険者って、もしかして俺のこと?」
青年の問いかけに、タニアは首を傾げた。身なりからしてそうだと思ったが違ったのだろうかと思案しながらも、タニアはうなずく。
すると青年は、それまでの爽やかな笑顔から一転、少し意地悪そうな表情を見せた。
「へぇ。どうして俺を冒険者だと思ったの?」
青年はタニアを興味深げにじっと見つめて質問を重ねた。




