甘い香りは、事件の香り?(7)
(……本当に大丈夫だろうか)
不安に駆られるタニアとは対照的に、女の子の足取りは思いの外しっかりとしている。タニアは手を引かれるまましばらく無言で歩き続けた。
やがて、女の子は足を止め、タニアの顔を見上げるとニッコリと笑う。タニアは、その笑顔を見て、ようやく森の入り口に戻ってきたことを知る。
振り向くと、暗くて鬱蒼とした森がタニアを捕まえようと、その口を大きく開けていた。タニアはブルっと身震いをすると、少しでも早く森から離れようと女の子の手を引き、早足で歩き出した。
そのまま女の子を家まで送り届けると、タニアはその足で就労斡旋所に向かった。今頼るべきは、あの大柄の所長しかいない。タニアはそう確信していた。
就労斡旋所に駆け込むと、ちょうどジャックスが所長室から出てきたところだった。タニアの姿を認めたジャックスが驚いた顔をする。
「どうした? 店で何かあったか?」
タニアはジャックスに縋り付くように駆け寄る。そのただならぬ様子にジャックスは眉を寄せた。タニアを落ち着けるかのように、その肩にそっと手を添える。それでタニアはようやく大きく息を吸うことができた。そして、ジャックスに事の次第を話した。
一通り聞き終えたジャックスは難しい顔をして腕を組むと、小さく唸る。タニアは不安げな表情でジャックスを見つめた。
「ねぇ。すぐに男の子を探してもらうにはどうしたらいいの?」
タニアの不安そうな声音に、ジャックスは彼女を安心させるようにその肩を叩いた。
「傭兵ギルドに捜索してもらえるよう、すぐに依頼を出そう」
安心したように息を漏らしたタニアを他所に、ジャックスは険しい顔で言葉を続けた。
「だが、難しいかもしれんな」
ジャックスの言葉に、タニアは目を剥く。そして縋り付くように彼に迫った。
「どうしてよ? あの森にいることは確かなの。みんなで探せば、すぐに見つかるでしょ?」
タニアの表情は必死の色を湛えていた。そんなタニアを宥めるように、ジャックスは落ち着いた声音で告げた。
「今は傭兵ギルドも冒険者ギルドも人手が足りていない状況らしい」
ジャックスの言葉に、タニアの表情がさらに強張る。
「どうして?」
ジャックスは眉間に皺を刻み、声を顰めて答える。
「じつはな、同じような人探しの依頼が何件もあるらしい。それに人手を取られている」
「他にも行方不明になっているの? それってなんかヤバくない?」
タニアの指摘に、ジャックスは重々しく頷く。




