表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アタシはギルドの受付嬢。でも、なんかちょっと違くない?  作者: 田古 みゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/31

甘い香りは、事件の香り?(4)

 タニアは目に見えてガッカリした顔をする。その様子にジャックスは苦笑いを浮かべた。


「おいおい。言っただろう。ここではそんなわかりやすい顔をするな。お前は諜報ギルドの受付嬢なんだぞ。なん時も腹の中を悟らせない顔をしていろ」


 ジャックスの言葉にタニアはハッとする。そして、慌てて真面目な顔を作った。


「気をつける」


 キュッと口を引き締めるタニアの様子に、ジャックスは仕方なさそうに笑った。


「まぁ、こればっかりは意識して慣れるしかない。とにかく、自分の立場を常に忘れるな」


 ジャックスはそう言い置いて、「香草亭」を後にした。


 ジャックスが去り、店の中が静まり返る。タニアは手持ち無沙汰にぼんやりと店内を見渡しながら考えを巡らす。


(オジサンは、野営の跡なんて珍しくないみたいなことを言っていたけど)


 タニアは何故だか、嫌な予感がしていた。


 森の奥地には魔獣がいるという。集落に近い森の入り口付近までは、魔獣も人の気配を感じて近寄らないが、森の奥地はそうではない。だから、魔獣を倒す術を持たない者は、決して一人では森へ足を踏み入れてはならない。タニアは小さい頃、ノルダにそう言い聞かされてきた。


(そんな場所で野営をするなんて……)


 タニアは心の奥に引っ掛かった棘を押し流そうとするかのようにハーブティーを口に含む。そして、ゆっくりと香草の香りとその甘みを楽しみながら飲み込んだ。


 しばらくの間そうしていたが、やがて手早く店じまいをすると、カウンターの上に置かれた籠から袋詰めされたクッキーを数個手に取り、カバンにそれを詰め込んだ。水筒にハーブティーを足し、それらを持って家を出る。タニアが向かうのは、東の森の入り口だ。


 タニアにはなんの力もなかったが、どうしてもその場所を自分の目で確かめてみたくなった。ジャックスの言うように、本当に何でもないことなのか。それとも、何か悪いことが待ち受けているのか。


 森の入り口付近まで来ると、辺りは薄暗くなっていた。タニアの不安を駆り立てるように、ザワザワと木々の葉擦れの音がやけに大きく聞こえる。ポッカリと開いた森の入り口は、まるでタニアを一飲みにしてしまいそうなほど暗く深い闇を湛えている。


 タニアはゴクリと唾を飲み込んだ。入り口から中を覗き込む。生温い風が頬を撫でた。その風に乗って甘い香りが微かにタニアの鼻先を掠める。途端に、タニアは頭が痺れるような感じがした。そして、足がふらりと動き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ