秘密ギルドは、お休み処!?(6)
口を尖らせているところを見ると、何か反論したいことがありそうだ。ジャックスは静かにタニアの言葉を待つ。やがて、タニアは絞り出すような声で話し始めた。
「一人じゃない。ノルダばぁちゃんに手伝ってもらおうと思ってたの」
その声にはどことなく、先ほどまでの勢いがない。そんなタニアを気遣って、ジャックスの声音も幾分優しくなる。
「その名は昨日も聞いたな。確か、隣人だったか? ノルダばぁちゃんというのは、お前の親族なのか?」
ジャックスの問いに、タニアは違うと首を振る。
「アタシは、ノルダばぁちゃんに育てられたの。だから、家族のようなものだけど、血のつながりはないよ」
ノルダという人物は、タニアの家の隣に住む老婆らしい。家を空けがちだった両親に代わって、これまでタニアの面倒をみていた人物だ。
「なるほど。一人では無理だから、親代わりのノルダと一緒に食堂か酒場をまわそうと考えたわけか」
ジャックスがそう言うと、タニアは再び口をへの字にする。そんなタニアを見下ろしながら、ジャックスは少し感心していた。
タニアの考えは甘い。だが、自分の力量を過信することなく、他者に助力を請うという姿勢は悪くない。どのような仕事でも大切なことだ。タニアはそれを教えられずとも知っている。
ジャックスは、黙ったままのタニアの頭にポンッと手を置いた。タニアは反射的に顔を上げる。困惑した表情を見せる彼女に、ジャックスはニッと笑って見せた。
「ノルダはギルドの関係者じゃない。だから、ノルダの手を借りるというのはダメだ。だけど、自分だけで全てやろうと思わなかったのはいい。周りを頼ることは大切なことだ。よく覚えておけよ」
褒められ慣れていないのだろう。タニアはむすっとしたまま、さらに顔を背けてしまう。しかし、頭の上に乗せられたジャックスの手を振り払うことはしなかった。ジャックスはポンポンとタニアの頭を撫でた。
ジャックスの中で、タニアはただの問題児ではなかった。むしろ、伸びしろのある子供だった。だからこそ、潰さずに育ててやりたいとも思う。
ジャックスはタニアの頭から手を離した。そして、両腕を組み直して彼女を見おろす。
「それにしても、一人の力では出来ないとわかっていて、一体どうして食堂や酒場をやろうとしたんだ?」
ジャックスの問いかけに、タニアは顔を背けたまま答えた。
「だって、人が立ち寄るところだったら、いろいろな情報も集まると思って」
「情報?」




