秘密ギルドは、お休み処!?(3)
「お前の所属は、諜報ギルドなんだぞ。その意味がわかってないのか? 呑んだくれが集まったら、街外れのお前の家をギルド拠点にした意味がないだろう。食堂や酒場なんか街中にいくらでもある。呑みたい奴らはそっちへ行けばいいんだ」
ジャックスの指摘にタニアはシュンとなった。だが、すぐに顔を上げる。
「でもさ! いくら街外れだって言ったって、ここも人の目がないわけじゃないんだよ。今まで人の出入りがなかったのに、急に人が出入りするようになったら、変じゃん! むしろ、怪しまれるかもしれないじゃん!」
タニアの主張にジャックスはうーんと唸った。確かにタニアの言うことにも一理ある。だが、だからと言って簡単に了承はできない。
「そうは言ってもなぁ……。隠密行動に長けた者たちが出入りすることになるはずだから、そんな心配はないと思うが」
ジャックスが考え込むのを見て、タニアは畳み掛ける。
「オジサンだって、これからウチに出入りすることになるんでしょ?」
「ん? まぁ、様子見を兼ねて初めのうちはな」
「でしょ? だったら、絶対噂になっちゃうよ。オジサンごついもん。いくら街外れとはいえ、目立つよ」
タニアの言葉に、ジャックスはギクリとした表情を見せた。
「そ、そうか? いや、しかしな……。就労状況の確認はプレースメントセンターの仕事のうちで……」
ジャックスはしどろもどろになりながら、何とかタニアの言い分をかわそうとする。だが、彼女は追い討ちをかけるように、グッとジャックスに詰め寄った。
「ここにはアタシしか住んでいないの。近所の人たちはみんなそのことを知ってるんだよ? そんな場所にごっついオジサンが通うようになったら、絶対勘繰られる。そっちのほうがマズくない?」
タニアの説得を受けてジャックスは考え込んだ。しばしの間沈黙が流れる。そして、折れたのはジャックスの方だった。「まぁ、そうだな」とうなずく。そんなジャックスを見て、タニアは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「だから、オジサンが来ても変じゃないように、食堂か酒場は必要なんだよ」
まるで演説をするように両手を広げて話す彼女の瞳はキラキラと輝いている。ジャックスは無言のまましばし天を仰ぐ。ふと、高い天井の太い梁から吊り下げられているいくつもの魔動灯が目に入る。
(こんなに高い天井の家は珍しいな)
ジャックスはなんとなくそんな感想を抱いた。タニアに気付かれないように改めて家の中を見回してみる。




