ツナマヨは世界を救う(たぶん)
昼。
Midnight Mart 王都支店は、異様に混んでいた。
理由は簡単だ。
「……王女が……」 「……魔法使いが……」 「……棚補充してる……」
ユウトはレジに立ちながら、遠い目をしていた。
「……なんでこうなった」
アリシア王女はエプロン姿で、真剣な顔でおにぎりを並べている。
アリシア王女 「ツナマヨは“右から詰める”のが礼儀なのだな?」
ユウト 「礼儀とかじゃないです!! ただの棚です!!」
リゼリアは品出しをしながら、真顔で呟く。
リゼリア 「……この白と銀の配色…… ツナマヨは神聖な波動を放っていますね……」
ユウト 「放ってません!! 脂質です!!」
そこへ――
裏口が、いつも通りに開いた。
異世界客が、どっと流れ込む。
スライム、ゴブリン、ドラゴン(小)、
そしてなぜか全員、ツナマヨの棚に直行。
ユウト 「なんで!? なんで全種族ツナマヨ狙いなんですか!?」
老人がレジ横で頷く。
老人 「昨日の戦いでな…… 名の王の影響が残っとる。 “名”を守った食べ物として認識されたのじゃ」
ユウト 「守られてたの僕の名前なんですけど!!」
スライム客 「ピチ!ピチ!」 (※訳:ご利益)
ドラゴン(小) 「ガル……」 (※訳:一族に配る)
ユウト 「お守り感覚で買うな!!」
そのとき。
ガラッ。
店長が入ってきた。
相変わらず眠そうだ。
店長 「……あー…… ツナマヨ、売れてる?」
ユウト 「売れすぎて世界歪んでます!!」
店長は棚を見て、静かに言った。
店長 「……じゃあ、 フェイス二段にして」
全員 「はい!!」
――一瞬の沈黙。
ユウト 「今全員、 条件反射で返事しませんでした!?」
リゼリア(小声) 「……抗えぬ……」
アリシア王女 「王命より優先されるとは……」
老人 「恐ろしき“発注権限”……」
店長はバックヤードに消え、戻ってきた。
段ボールを抱えている。
店長 「……臨時補充……」
段ボールには赤字で書かれていた。
【ツナマヨ:異世界対応強化】
ユウト 「なんでそんな項目あるんですか!?」
店長 「……前にも、似たことあった……」
ユウト 「前例あったの!?」
アリシア王女は箱を見つめ、深く頷いた。
アリシア王女 「これはもはや食ではない。 “儀式”だ」
ユウト 「やめて!!」
リゼリアが真剣な顔でユウトを見る。
リゼリア 「ユウト殿。 今夜は“ツナマヨ奉納の儀”が行われます」
ユウト 「聞いてないです!!」
老人 「拒否権はない」
ユウト 「あります!!労基!!」
スピーカーから店内放送が流れた。
♪ ピンポーン
店長(放送) 「……業務連絡…… ツナマヨ、購入制限なし……」
異世界客たち 「「「おおおおおお!!!」」」
ユウト 「制限しろ!!! 世界が傾く!!!」
その瞬間。
ツナマヨ棚の奥で、
かすかに青い光が瞬いた。
ユウト 「……今、光りましたよね?」
老人 「……うむ」
リゼリア 「……名の王ではない……」
アリシア王女 「……“次”だな」
ユウト 「え、ちょっと待って!! ギャグ回ですよね!?」
全員 「……たぶん」
蛍光灯がチカチカと瞬く。
Midnight Mart 王都支店――
今日もツナマヨは、
世界を救っていた(かもしれない)。




