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深夜コンビニ、最大の脅威は寝不足

蛍光灯の明滅が、ふっと安定した。

ユウトはゆっくりと立ち上がり、レジ横で爆睡している店長を見下ろした。

「……この状況で普通に寝れるの、逆に才能だと思う」

老人が杖で床を軽く叩く。

「いや……

 “鈍い”のではない……

 あれは――気づかぬのではなく、気に留めぬ器じゃ」

ユウト

「フォローになってないですよそれ」

リゼリアは慎重に店長を観察していた。

「魔力反応……なし

 呪い……なし

 祝福……なし

 ……にもかかわらず、この安定感」

アリシア王女

「常人ではないが、英雄でもない……

 なんだこの分類不能さは……」

店長が、寝言のように呟く。

「……廃棄……

 発注……

 ツナマヨ……」

アリシア王女がピクリと反応した。

「……また聖具の名を……」

ユウト

「王女様、それもうただのおにぎりです」

リゼリア

「いえ……

 ですが不思議です

 “名の王”が消えた今も、

 この店の結界は安定している……」

老人が静かに頷く。

「うむ……

 本来なら、名の嵐が去った後は

 余波で空間が歪むはず……」

ユウト

「……え

 じゃあなんで平気なんですか?」

全員の視線が、

レジ裏で寝返りを打った店長に集まる。

店長

「……五分……

 あと五分……」

リゼリア

「……まさか……」

老人

「この男……

 無意識のうちに“現世の基準”を

 この場所に固定しておる……」

ユウト

「え、ちょっと待って

 店長って、

 結界の代わりなんですか?」

アリシア王女

「世界を守る盾が、

 寝不足の中年男性……?」

ユウト

「やめてあげてください!!」

そのとき。

ピロン♪

レジの端末が、いつもの発注アラート音を鳴らした。

ユウト

「……あ」

画面を見る。

【ツナマヨおにぎり 在庫:0

 緊急補充推奨】

アリシア王女

「……導かれている……」

リゼリア

「ツナマヨ教徒たちが

 再び動き出す兆し……」

ユウト

「そんな予兆いらない!!」

ユウトは深く息を吸い、いつもの動作で発注ボタンを押した。

カチ。

その瞬間、

床の青い線が――一瞬だけ、脈打つ。

だが誰も気づかない。

いや、

一人を除いて。

爆睡していたはずの店長が、

目を閉じたまま、ぼそっと呟いた。

「……ユウトくん……

 無理すんなよ……」

ユウト

「……え?」

次の瞬間、店長は再び深い眠りに落ちた。

スゥ……スゥ……。

沈黙。

リゼリア

「……今の……」

アリシア王女

「聞こえた……よな?」

老人

「……名でも魔でもない

 ただの“人の言葉”じゃ……」

ユウトはしばらく黙り、

そして苦笑した。

「……ほんと、

 よくわからない人だな……」

蛍光灯は、もう揺れない。

Midnight Mart 王都支店。

ここでは今日も――

世界の危機と日常が、同じレジを通っていく。

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