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覚醒の翌日は、だいたい忙しい

翌朝――

Midnight Mart 王都支店。

ユウトはレジ前で、魂が抜けたような顔をしていた。

ユウト

「……夢じゃ、なかったよな……

 名の王とか、覚醒とか……」

リゼリアがいつもの涼しい顔で棚卸しをしながら答える。

リゼリア

「夢ではありません。

 床に残っているその青い焦げ跡が証拠です」

ユウト

「現実の証拠が生々しすぎる!!」

床には、昨夜ユウトが叫んだ場所を中心に、

うっすら「ユ」の形をした焦げ跡が残っていた。

ユウト

「なんで字になるの!?

 現象としておかしいでしょ!!」

リゼリア

「“名の余波”ですね。

 清掃魔法をかけても消えませんでした」

ユウト

「最悪だよ!!

 店長にどう説明すればいいの!?」

そのとき、裏口が開く。

金色のマントを翻し、

アリシア王女が元気よく入店してきた。

アリシア

「おはようである!

 昨日は見事な名乗りであったな、ユウト!」

ユウト

「王女様!!

 そのテンションで来られると昨日の恐怖が薄れる!!」

アリシア

「ははは!

 だが安心せよ。

 今日は戦いではない」

ユウト

「じゃあ何しに……」

アリシア

「バイトである!!」

ユウト

「だと思った!!」

覚醒後の弊害

レジに立つユウトがバーコードを通す。

ピッ。

すると――

商品名が空中に青文字で表示された。

《ツナマヨおにぎり:信仰値 ★★★☆☆》

ユウト

「!?!?!?!?」

スライム客

「ピチ?(なんか文字出てる)」

ユウト

「なにこれ!?

 商品説明が勝手に可視化されてる!!」

リゼリアが冷静に頷く。

リゼリア

「名の覚醒後遺症ですね。

 “物に宿る意味”が見えているのでしょう」

ユウト

「いらない能力!!

 深夜バイトに不要!!」

アリシアが目を輝かせる。

アリシア

「おお!

 ではこれはどう見える!?」

王女がツナマヨを掲げる。

《ツナマヨおにぎり:

 王都に広がる新興宗教

 “ツナマヨ教”の聖食》

ユウト

「宗教になってるぅぅ!!?」

リゼリア

「……昨日の騒動で

 “名を守った食べ物”として

 一部で神格化されました」

ユウト

「なんで守護神がツナマヨなんだよ!!」

スライム客

「ピチピチ!(ありがたや~)」

ドラゴン客

「今日もツナマヨはあるか」

ユウト

「やめて!!

 ご利益ある顔で買わないで!!」

新たな違和感(さりげない伏線)

ふとユウトは気づく。

レジ横の鏡に映る自分の名札。

――ユート店員

だが一瞬だけ、

文字が揺れた。

《ユウト/未確定》

ユウト

「……今、なんか変なの見えた?」

リゼリア

「?」

アリシア

「どうした?」

ユウト

「いや……気のせいか」

ユウトは頭を振り、レジを打ち続ける。

だが――

店の外。

常夜灯の影が、

わずかに“別の形”を作っていた。

誰にも気づかれないまま。

ユウト

「……はぁ。

 覚醒したら楽になると思ってたのに」

アリシア

「何を言う。

 これぞ英雄の日常であろう?」

ユウト

「英雄、ツナマヨ売ってるんですけど」

リゼリア

「それもまた、名の在り方です」

ユウト

「深いようで深くない!!」

今日もMidnight Mart 王都支店は、

世界の危機とギャグの境目で営業中だった。

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