王都へ、はじめての出張販売
その夜、コンビニ裏口の先。
昨日までの石畳の道は、見慣れぬ光で包まれていた。
魔法陣のような模様が地面に描かれ、空気がピリピリと震える。
リゼリア「準備はよいか?」
ユウト「いや、“準備”って……エコバッグしか持ってきてないんですけど!?」
リゼリア「心配いらぬ。こちらで護衛もつける」
……そして、光が弾けた。
気づけば、ユウトの目の前には──
見上げるほど巨大な城壁と、人の波。
石造りの街並みに、香ばしい焼き菓子の匂い。
そこが、アルダ王国の中心・王都だった。
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王都コンビニ、臨時開店!
リゼリア「ここが広場だ。今日ここで“神の店”を開いてほしい」
ユウト「いや、これ文化祭の出店レベルだよ!?」
リゼリア「問題ない。我らが民はすでに並んでおる」
振り返ると、広場いっぱいに行列。
昨日の“ツナマヨ教”信者たちが、米玉を求めて手を合わせていた。
「ツナマヨ様、どうかお恵みを……!」
「神よ、カップラーメンに湯を注ぐ加護を!」
ユウト「なんで宗教になってんだよ!」
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慌ててレジ代わりの木箱を設置し、持ってきた商品を並べる。
・おにぎり(ツナマヨ、昆布、鮭)
・ペットボトルのお茶
・インスタント味噌汁
それだけなのに、人々は目を輝かせて群がった。
「この“ペットボトル”という器、割れぬのか!?」
「おぉ……封印を解くと“茶の精”が現れる!」
「うまい……これが神々の飲み物……」
──王都初の“コンビニ出張販売”は、瞬く間に完売した。
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リゼリア「見たか、ユウト! 王都が熱狂しておる!」
ユウト「見たけど……なんか方向性が心配です」
リゼリア「王も興味を持たれた。“ツナマヨの預言者”として、謁見を求めておられる」
ユウト「預言者て。バイトだってば!」
だが、抗う間もなく護衛たちに囲まれ、王城へと連れて行かれるユウト。
静かな夜勤を望む彼の願いは、いま完全に踏み潰されたのだった。




