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青い名の余熱と、ツナマヨ大量発生事件

名の王が消え去ったあと。

Midnight Mart 王都支店には、いつもの白い蛍光灯の音だけが残っていた。

ユウトは床に座り込み、レジ台にもたれかかっている。

「……今日、時給上がらないかな……」

リゼリアはため息をつきながら、割れた陳列棚を魔法で元に戻していた。

「命が無事だったことを、まずは喜ぶべきです」 「いや、ほんとそれなんだけどさ……」

アリシア王女は剣を片付けながら、妙にキラキラした目でユウトを見る。

「なあユウト!

 あれが“名の覚醒”というやつか! かっこよかったぞ!」 「いやもう二度とやりたくないです……」

そのとき、カウンターの奥から老人が咳払いをした。

「……ひとつ言っておくがな」 「え、まだなんかあるんですか」

老人は、床に落ちていた名札の残骸を拾い上げる。

「名の王を退けたことで、お主の名は――

 異世界側に完全に“登録”された」 「……登録?」

リゼリアの動きが止まる。

「つまり……」 老人は続けた。

「これからこの店を訪れる異世界客の一部は、

 “ユウトという名”を無意識に認識するようになる」

ユウト 「……え、それって」 アリシア 「有名人ではないか!」

「いやいやいやいや!!

 それ完全にトラブルフラグじゃないですか!!」

その直後

チリン、とドアベルが鳴った。

一人目の客は、ローブ姿の青年。 二人目は、角の生えた商人。 三人目は――

「おお……!

 そなたが“名を拒んだ人間”か……!」

ユウト 「もう広まってる!!」

しかも全員、なぜか同じ商品を手に取っている。

棚にずらりと並ぶ――

ツナマヨおにぎり。

リゼリアが眉をひそめる。

「……なぜ、全員それを」 商人が神妙な顔で答える。

「最近、王都で噂なのだ」 「“名を守る食べ物”があると……」

ユウト 「待って待って待って」

アリシア王女がぱっと手を打った。

「もしや!

 ツナマヨ教の教義が、変な方向に進化しているのでは!?」

老人 「……ああ」 「まさか」 「うむ」

老人は遠い目をした。

「“名を失いたくなければ、ツナマヨを食え”

 という教義が追加された」

ユウト 「俺のせいじゃん!!!」

深夜二時

ツナマヨが、売り切れた。

棚は空っぽ。 バックヤードにも在庫ゼロ。

ユウトはレジで頭を抱える。

「明日、発注書どう書けばいいんですかこれ……」 リゼリア 「通常の三十倍ほど、でよいかと」 「コンビニじゃないよそれ!!」

そのとき、裏口の異世界ゲートが、かすかに揺れた。

誰も気づかない。 だが――ユウトだけが、胸の奥にあの青い熱を感じる。

(……来る)

ユウトは、何も言わずに裏口を見る。

まだ、何も現れない。

だが確かに――

“名を持たぬ何か”が、こちらを探している感覚。

老人が、ユウトの表情に気づいた。

「……感じたか」 「……はい」

リゼリアが静かに言う。

「日常は、戻りました」 アリシア王女も笑う。

「だが――

 日常の“質”が変わった、というだけだな」

ユウトは深く息を吸い、立ち上がった。

「……じゃあさ」 「この店、今日も開けますか」

全員がうなずく。

チリン。

また、ドアベルが鳴った。

――Midnight Mart 王都支店。

名を守った店員がいる、ちょっと普通じゃないコンビニの日常は、

今日も深夜に続いていく。

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