王都の使者、コンビニへ
翌日の夜。
ユウトはいつもより少し早めに出勤していた。
理由はひとつ。
昨日、ドラゴン族が置いていった「王都の使者が来る」というメモ。
……あれが、ずっと気になっていたからだ。
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ユウト「異世界の王都から“使者”って、なんだよ……。こっちはバイトなんだけどな……」
コーヒーを飲みながら愚痴をこぼしていると、裏口のベルが鳴った。
「……ピンポーン?」
いや、そんな機能はつけた覚えがない。
恐る恐るドアを開けると、そこには――
金色のマントを羽織った少女が立っていた。
背中まで伸びた銀髪に、透き通るような青い瞳。
どこか気品のある雰囲気をまとっている。
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「我が名はリゼリア。アルダ王国の使者として参上した」
ユウト「……マジで来たよ……」
少女は堂々とした態度で店内を見回し、目を輝かせた。
「これが“神の店”か。なんと眩い……! すべてが整然と並べられ、同じ形をしておる……!」
「いや、ただの陳列棚ですけど……」
棚に並ぶお菓子やドリンクに感嘆しながら、リゼリアは真剣な顔に戻る。
「我が国は貴殿に正式な取引を求める。“米玉”及び“飲料カップ”の大量納入を希望する」
「飲料カップ……それ、カップラーメンです」
「カップ……ラーメン……!」
彼女はその単語を神聖語のように繰り返した。
そして、胸に手を当てる。
「王の命により、そなたを“商会代表”として招待する」
「え、俺バイトなんですけど」
「神は身分を問わぬという」
「だから俺は神じゃねぇ!」
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その後、コンビニの裏口では交渉(?)が始まった。
リゼリアは一枚の巻物を取り出し、魔法文字でびっしり書かれた契約書を広げる。
ユウトはレジのロール紙で見よう見まねに返答を書く。
どうにか「物々交換方式」で話がまとまった。
リゼリア「では、明晩ここで“王都行きの門”を開く」
ユウト「ちょ、ちょっと待って! 俺、シフト表確認してからでいい!?」
リゼリア「シフト……それも神の掟か?」
ユウト「まあ、そんな感じです」
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彼女が去った後、静まり返る店内。
ユウトはレジ横のコーヒーマシンをぼんやり眺めた。
「……俺、いつから外交官になったんだろ」
そんな独り言が、夜勤の蛍光灯に吸い込まれていった。




