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影は、知らぬ間に足跡を残していく

翌日の深夜。


ユウトはいつものようにレジ前に立ちながら、

昨夜の自動ドア事件を思い出していた。


「……あれ、夢じゃないよな」


リゼリアは杖を片手に、魔力探知の魔法陣を調整している。

アリシア王女は店の奥で、真剣な表情で棚の整理をしている――けれど、

時々妙に肩に力が入っていて、いつでも戦えるような雰囲気を漂わせていた。


店は静かで、妙に張りつめている。


その空気を破ったのは、

店の奥の防犯モニターに映った“異様な映像”だった。


「……ん? ちょっと来てください!」


ユウトが声を上げると、リゼリアと王女がすぐに駆け寄ってきた。



---


◆ 1. 映ってはいけない“残像”


映っていたのは、

昨夜、誰もいないのに開いた自動ドア。


その前に――


『黒い指先のようなもの』が、静かに“ドアの縁をなぞっている”映像が。


ユウトは息を呑んだ。


「……これ、人? 魔物?」

「わかりません。だが……実体を持っていないように見えますね」


アリシア王女は目を細めた。


「魔物がここまで忍び寄っても気づけぬなど……

 まるで“影そのもの”が意思を持って動いているようだ」


リゼリアは映像を拡大しながら呟く。


「しかも、これは……“魔法の痕跡”ではありません。

 もっと古い、もっと原始的な存在の……気配です」


その言葉の重さに、店内の空気が少し冷えた。



---


◆ 2. 影は“何か”を探している


王女が画面をじっと見つめた後、静かに言う。


「その影……店に入ろうとしているのではなく、

 “何かを探しておる”ように見えるな」


「探してる……?」


ユウトは自分の胸を指差して冗談を言おうとしたが、

二人の表情が真剣すぎて口をつぐんだ。


リゼリアが軽く杖を叩く。


「ユウト。あなたに一つ、聞きたいことがあります」


「え? なんですか?」


「あなたが、この店の裏口を“初めて見つけた時”。

 何か……普通じゃない感覚を覚えませんでしたか?」


言われてみれば――

初めて裏口を開けた日、

まぶしい光と草の匂いがした瞬間に、妙な“耳鳴り”があった。


ユウトは思い出しながら答える。


「……耳鳴り、です。微かな音がして……でもすぐ消えました」


アリシア王女の表情が変わる。


「耳鳴り……?

 それはもしや――“境界の共鳴”では?」


リゼリアも息を呑んだ。


「もしそうなら……

 その影は“誰でもない普通の現世の人間が、門を開いた理由”を知ろうとしているのかもしれません」


ユウトはごくりと喉を鳴らした。


「ちょっと待ってくださいよ。

 僕はただのコンビニ店員ですよ!? 魔法もないし!」


二人はゆっくり首を振る。


「それでも、あなたは門を開いた」

「そして、影は……それを知っている」


ユウトの背筋に、冷たいものが走る。



---


◆ 3. その夜、もう一度“影”は現れる


店の外、石畳の道。


外灯がひとつ、またひとつと揺れ始めた。


「……来ます」


リゼリアの声が低く響いた瞬間。


入口の前の影が、風とは無関係に——

“逆方向へ”ゆらりと伸びた。


まるで、店の中へ手を伸ばすように。


王女が身構える。


「ユウト! 後ろへ!」


リゼリアが杖を持ち上げる。


「――《結界・二重展開デュアル・シールド》!」


透明な壁のような結界が自動ドアの前に張られた。


そして、影はその結界に触れた。


――パチッ。


一瞬、黒い火花のようなものが散った。


しかし影は、攻撃ではなく

“触れるだけ”で消えた。


ユウト「……え、今の……」


リゼリア「まるで“挨拶”のようでしたね」


アリシア王女も表情を引き締めたまま言う。


「影は、今日も様子見か……

 本気で侵入しておらぬ。

 これは……警告だ」


ユウトは手のひらがじんわり汗ばんでいることに気づく。


「警告って……何のために……?」


二人は答えなかった。

ただ、影が触れた結界の跡をじっと見つめていた。


その跡は、かすかに“歯形のような模様”を残していた。


まるで――

“自分の存在を刻みつけた”かのように。


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