揺らぎ探知器、試作開始
翌朝。
ユウトが店に入ると――すでにカオスだった。
「ユウト殿! 良いところへ!」
バックヤードのど真ん中。
リゼリアがペットボトルを20本並べ、真剣な顔で魔力を流し込んでいる。
その横では、
アリシア王女が金色のマントを床に敷き、胸を張って宣言した。
「余も“王家式魔導加護”を施す準備万端である!」
ユウト「ちょっと待って!? 勝手に研究室みたいにするのやめて!?」
リゼリアは冷静に言う。
「問題あるまい。まだ開店前だ」
「いや問題しかないよ!? ペットボトル光ってるし!」
見ると、
1本の500mlペットボトルが内側からぼんやり青く輝き、
炭酸のように魔力の泡が浮かんでいた。
ユウト「絶対ダメな色になってんだけど!」
アリシアは誇らしげに胸を張る。
「案ずるなユウト殿!
これは余が施した“光輝の王家印”だ!」
「なんでペットボトルに王家印を押す必要があるんだよ!」
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◆ 説明(王女の暴走)
アリシアはペットボトルを抱え込み、
ほほに手を添えて語り出した。
「余は昨夜考えたのだ。
揺らぎを探る道具であるならば――
それを扱う者の格も宿すべきだと!」
「いや格とかどうでもいいんだけど!?」
リゼリアが軽くため息をつく。
「アリシア殿下、混合術式は“無駄な属性”が混ざると暴走する。
王家印は……少々、強すぎる」
「余の威光が強すぎると申すか!?」
「そうではない。主張がうるさいだけだ」
王女、秒でしょんぼり。
ユウト(めんどくさ……かわいいけど)
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◆ 試作開始
リゼリアは杖で輪を描き、
青く発光する魔法陣をバックヤードの床に展開した。
「ユウト殿、そなたの世界の“感知器”を持ってくるがよい」
「えっ、感知器……?
え、これのこと?」
ユウトはスマホの人感センサー付きライトを出した。
昨日買ってきたやつだ。
リゼリアは真剣にうなずく。
「それだ。
そなたの世界の“目”……それを核とする」
アリシア「では余は光の属性を……」
「殿下は黙っていてくれ!!」
二人同時に叫ばれ、王女は口をむぎゅっと閉じた。
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◆ 混合術式 発動
魔法陣の中心にスマホを置き、
その上に青く光るペットボトルをそっと重ねる。
リゼリアが杖を構え、低く呟いた。
「――《混合術式・光注入》」
青い光が魔法陣からゆっくり立ち上がり、
ペットボトルへ吸い込まれていく。
スマホがブルブル震えた。
ユウト「いや震えてる震えてる!?
混合術式でスマホ壊れたりしないよね!?」
リゼリア「案ずるな。私が制御して――」
そのとき。
――ピシッ。
部屋の空気に、昨日と同じ“青い線”が走った。
ユウト「……出た……っ!」
アリシアの瞳も一瞬だけ険しくなる。
リゼリアはすかさず杖を構え直す。
「反応したか……!
揺らぎがこちらの実験を“見ている”……!」
青い線は一瞬、ペットボトルの方へ寄り――
すぐにふっと消えた。
魔法陣の光が収まり、
ペットボトルは静かに淡い青を放ち続けている。
リゼリアはひとつ大きく息をついた。
「……成功だ」
ユウト「え、ホントに!? このペットボトルが……?」
リゼリアは微笑んだ。
「揺らぎが近づけば光が強くなる。
その距離が近ければ近いほど、反応する」
アリシアも目を輝かせる。
「ではこれが……“揺らぎ探知器”か!」
ユウト「まじでペットボトルが魔導具になったの……!?」
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◆ しかし異変が起こる
その瞬間――
ペットボトルの青い光が、ふっと濁った。
リゼリアの表情が一変する。
「……おかしい。
揺らぎの反応ではない……これは――」
次の瞬間だった。
バックヤードの床下から、
――“コン……コン……”
昨日よりも近い、はっきりとした“足音”が響いた。
ユウト「やっ……来た……!
昨日の影、また近づいてる……!」
ペットボトルの青が一気に赤に近い紫に変わる。
リゼリアは叫んだ。
「ユウト殿、下がれ!
これは普通の揺らぎではない……
“形を持とうとする意思”が強すぎる!」
アリシアがマントを翻し、杖を構える。
「余も戦う! ユウト殿を危険に晒すわけにはいかぬ!」
床がきしむ。
青い線が、今度は“外”ではなく
――店の“内側”を横切った。
ユウトの背中に冷汗が走る。
(……これ、
もう見てるだけじゃ済まない……)
リゼリアは振り返り、
ユウトにだけ聞こえる声で囁いた。
「――ユウト殿。
今日、最初の“突破”が来る」
その言葉と同時に。
床が、確かに――沈んだ。




