初めての異世界客、ドラゴン族(?)来店
コンビニ「ミッドナイト・マート」、深夜2時。
人間界側は、いつも通りの静けさに包まれていた。
けれど──裏口の向こうの“異世界側”は、今日もざわついている。
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ユウト「……なんか、昨日より明るくないか?」
異世界側の街道をのぞくと、街灯のような魔法の光がいくつも並び、夜でもにぎやかに商人たちが行き交っている。
昨日の“おにぎり騒動”がよほど話題になったらしい。
案の定、裏口の前には「行列」ができていた。
種族もさまざま——角のある獣人、耳の長いエルフ、体の一部が石みたいな人もいる。
そしてその中に、ひときわ目立つ影。
灰色の鱗に、赤い瞳。
背中からは小さな翼。
……ドラゴン、っぽい人。
ユウト(やばい、クレーム客か?)
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「おぬしが“米玉”を作った者か?」
声は低く、けれど意外と落ち着いていた。
「昨夜、我が同胞が感動して泣いていたのだ。“白い宝珠”を食したと……」
「いや、あれおにぎりなんですけど……」
「おにぎり、とな?」
ドラゴン族の男は、まじまじと商品棚を見渡す。
カップ麺、パン、缶コーヒー……どれも見慣れぬものばかり。
「ひとつ食してみたい。支払いはこれで足りるか?」
そう言って差し出されたのは、金貨。
コンビニのレジにドンと置かれた瞬間、電子音が虚しく響く。
「ピッ……? えーと……現金以外……っていうか、金貨!?」
「異世界通貨しか持たぬが……」
「……あ、店長に怒られるなこれ」
結局、ユウトは「試食用です」という苦しい言い訳でおにぎりを1個サービスした。
ドラゴン族はひと口かじると、目を見開く。
「……これは、戦の前に食す“覚醒の実”か!?」
「いや、ただのツナマヨです」
「ツナマヨ……! 覚えたぞ!」
異世界側ではその夜、**“ツナマヨ教”**が生まれたという噂が流れ始めた。
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ユウト「……これ、絶対あとで面倒なことになるやつだよな」
裏口を閉め、ため息をつくユウト。
けれどふと気づくと、レジ横に1枚のメモが置かれていた。
異世界文字で書かれたそれには、こう記されている。
> “王都にて正式に取引を望む。明日、使者を送る。”
ユウト「……いや、やっぱ面倒なことになってるじゃん!」




