開店初日、異世界コンビニ戦争(後半)
店内の混雑は、昼を前にしてさらに加速した。
「ツナマヨ再入荷まだですか!!」
「オレは夜通し待っていたんだぞッ!
ツナマヨを食べるまで帰らん!!」
「焼きそばパン残り1つだって!?
どけッ! 私が取るッ!!」
ユウトは必死で声を張り上げる。
「みんな! 争わないで! 商品は追加しますから!!」
しかし客の熱気は止まることを知らない。
店内の温度がじわじわ上がっていく気すらした。
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■ ツナマヨ信者、ここに極まる
そんな混乱の中、ツナマヨ信者の集団が列の奥から現れた。
先頭の信者が、妙に神聖な顔で言う。
「聞いた……“クリスタル化ツナマヨ”が存在する、と……」
ユウト
「えっ、誰から?」
「“書簡”が届いたのだ。
“祝福されたツナマヨは、店の奥に眠る”と……」
(あ、これ絶対ヤバいやつだ……!
バックヤードに来ようとしてるやつじゃん!!)
信者たちが妙に落ち着いた足取りで前に進もうとした瞬間。
リゼリア
「止まれ」
王国使者の鋭い声が、空気を切った。
リゼリア
「そのような書簡、我らは知らぬ。
そもそも――ミッドナイトマートの奥は神域ではない。
異界の技術で満ちた“危険な区域”である。
部外者は入れぬ」
信者
「しかし……“異界の力”が働くと聞いた……!」
リゼリア(小声でユウトへ)
「……どうやら、裏口に関する情報が外へ漏れ始めておるな」
ユウト
「(やっぱり……さっきの商会のガルドか?
いや、言い切れないけど……危ないな)」
リゼリアは一歩進み、客たちに凛とした声で告げた。
「この店は“王国の庇護下”にある。
何人たりとも勝手に立ち入ることは許されぬ。
ツナマヨを求める心が真であるなら、列に戻り、己の順番を待つがよい」
信者たちはざわつきながらも、結局列に戻った。
(よかった……)
しかしユウトは内心、背筋が冷えた。
(裏口の存在……誰かが確実に“知ろうとしてる”)
その気配だけが、じわりと重く胸に残った。
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■ 戦いはまだ終わらない
昼過ぎ。
ようやく客の波がひと段落し、ユウトはレジ台に突っ伏した。
「死ぬ……俺、今日バイト代3倍ほしい……」
リゼリアは肩で息をしながら、ポニーテールの結び目を整えている。
「そなた……常人より働きすぎだ。
この気力、まこと侮れぬ」
「いや、それはリゼリアさんのほうでしょ……
客の前に立ってる姿、完全に“戦場の指揮官”だったよ……」
リゼリアはふっと目をそらし、少しだけ照れくさそうに言った。
「民を守るは、我が務めだからな。
……それに、そなたの働きぶりを無駄にするわけにもいかぬ」
ユウト
「(え……なにそのちょっと優しい感じ……!)」
ほんの少し、店内に柔らかい空気が戻る。
だが――
「……ユウト殿」
リゼリアの表情だけが、急に真剣に戻った。
「先ほどの“書簡”の件、看過できぬ。
誰かが裏口の存在に近づいておる可能性が高い。
我ら……しばらく注意して動く必要がある」
ユウト
「あぁ……俺も同じこと考えてた。
開店初日にこれは、ちょっと嫌な予感しかしない」
リゼリア
「うむ。
だが心配するな。
この店は――私が守る」
金色のマントが揺れる。
その姿は、まるで守護者のようだった。
ユウト
(……なんでこの人、こんなに頼もしいんだ)
そんな感情を抱いた瞬間だった。
バックヤードの床が、
かすかに、青く光った。
ユウト
「……え?」
リゼリア
「……“向こう側”が動き始めておるのかもしれぬな」
青い光はすぐに消えた。
だが、それは確かな兆しだった。




