表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/53

扉の向こうから、かすかな声

祭り騒ぎも、ツナマヨ教の儀式騒動も落ち着いた深夜。

Midnight Mart 王都支店の店内は、まるで嘘のように静かだった。


ユウトはバックヤードの棚を整理していた。

その最奥──例の“裏口の扉”の近くで、妙な寒気を覚える。


「……ん? なんか冷房強すぎじゃね?」


コンビニの裏口とは思えないほど、ひんやりしている。

まるで風がどこか遠い場所から吹いてきているような。


その時、扉が――


コト……


わずかに揺れた。


ユウトは思わず後ずさりする。

「え、ちょ、誰!? リゼリア?」


だが返事はない。


扉の隙間から、かすかに光が漏れていた。

いつもの淡い青じゃない。

もっと……白に近い、硬質な光。


クラッ……。


“音” が聞こえた。

どこか遠くで、電子的な何かが鳴るような――現世の駅でよく聞くアナウンスチャイムのような。


ユウトは凍りついた。


「……え?

なんで現世の音が聞こえるんだ……?」


そこへ、リゼリアが駆け込んでくる。


「ユウト、下がれ! 扉が……変質しておる!」


彼女はマントを翻し、扉にそっと指先を当てた。

その瞬間、光がリゼリアの指をかすめ、彼女は眉をひそめる。


「……やはり。“別の経路”が開きかけておるな」


「別の経路って……俺がいつも使ってる現世への通路じゃなくて?」


リゼリアは頷く。


「うむ。これは――

“誰か”が、扉の向こう側から干渉してきておる証だ」


その言葉にユウトの喉が乾く。


誰か?

現世の誰か?

異世界の誰か?

それとも、さっき現れた黒フードの連中か?


リゼリアは扉から手を離し、真剣な表情で続けた。


「ユウト。

お主がこの店に来る前……現世の暮らしに“変わったこと”はなかったか?」


ユウトは少し考え込む。


(……あった。

最近、なんか妙に疲れやすいし……

目を離したはずのスマホが、別の場所に置いてあったり……

でもそんなの、ただの気のせいだと思ってた)


「いや……特に、大きなことは……」


そう言いかけた瞬間――


扉が、


ガチャン!!


激しく鳴った。


まるで、“何か”がぶつかったように。


リゼリアの顔色が変わる。


「……来るぞ。

 ユウト、この扉の向こう――

 “向こう側の何か”がこちらを見ておる!」


ユウトの背筋を氷のような感覚が走った。


だが扉はそれ以上動かず、やがて光も収まっていった。

静寂が戻る。


リゼリアは深く息をつく。


「……扉は、一時的に安定したようだ。

 だが、誰かが“開けようとしている”のは確かだ」


ユウトは思わず尋ねた。


「その……誰が、こんなことを?」


リゼリアはゆっくりと答える。


「ツナマヨ教でも、王国の魔法使いでもない。

 もっと別の意図を持つ者だ。

 しかも……ユウト、お主を“知っている者”かもしれぬ」


「えっ!?

俺を知ってるって……現世の誰かが異世界に干渉してるってこと?」


リゼリアは小さく首を振った。


「断定はできぬ。だが、扉の揺らぎ方が“お主の気配”を追っておった。

誰かが、ユウトお主に――

会おうとしている」


ユウトは言葉を失った。


現世と異世界。

二つの世界を結ぶ扉に、第三の気配。


Midnight Martの夜は、ますます静かで、そして深い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ