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新たな異世界素材と、静かに現れた影

ツナマヨ教の暴走儀式を止めた翌日。

Midnight Mart 王都支店は不思議なほど静かだった。


まるで昨夜の光の渦が夢だったかのように、棚はいつも通り整い、王都の客たちは普通に買い物をしている。


ユウトはレジに立ち、ひと息つく。


「……昨日のあれ、結局なんだったんだ?」


リゼリアは隣で商品管理台帳を見ながら答える。

「ツナマヨ信者たちが使っていた“クリスタル豆”。あれは魔導植物だ。

本来はここまで大きな力を出せぬ。誰かが手を加えておるな」


「誰かって……ツナマヨ教の上の人?」


「断定はできぬ。ただ――」


そこで彼女の瞳が一瞬だけ鋭く光る。

「儀式の気配。その奥に“別の力”を感じた。あれは信者だけのものではない」


ユウトが聞き返すより早く、入口の鈴が鳴った。


チリン……。


入ってきたのは、黒フードを深く被った人物だった。

顔はほとんど見えず、ただ淡い灰色の瞳だけが覗いている。


ユウトは思わず声を張る。

「あ、いらっしゃいませー!」


その人物は、返事をしない。

ただ静かに店内を一巡するように歩き、魔道ポーションの棚の前で足を止めた。


リゼリアが小声で囁く。

「……気をつけろ、ユウト。只者ではない」


「え、客じゃなくて?」


「客だとしても“普通の客”ではない」


その時、黒フードの人物が手に取ったのは、

店でも人気の高い新商品《閃光エナジーポーション》。


……だが、問題はそこではなかった。


人物の手にふれた瞬間、瓶の底に刻まれている小さな模様が淡く光ったのだ。


ユウトは気づかない。

しかし王女アリシアは、奥の厨房から目を丸くして叫ぶ。


「リゼリア! あの光……“封印の痕”でする!」


黒フードの人物は振り返る。

その灰色の瞳がユウトをゆっくりと見た。


リゼリアは即座にユウトの前に立つ。

「……何者だ。答えよ」


黒フードはしばらく沈黙したのち、静かに言葉を落とした。


「――はじまりは、まだ序章だよ。

 昨夜の光は“合図”にすぎない」


「合図……?」


人物は商品をレジにも持って来ず、身体が霧のようにゆらめくと、

そのまま店の出口へすり抜けるように消えていった。


何も買っていない。

ユウトの「レジ通して〜!」という悲痛な思いもむなしく。


静寂が戻ったコンビニで、リゼリアだけが強く眉を寄せていた。


「……ユウト。

 これは、ツナマヨ教だけの問題ではない。

 “別の勢力”が、水面下で動いておる」


ユウトは思わず喉を鳴らす。


「なんで……俺のバイト先でそんなことが?」


すると王女アリシアが、ぽつりと呟く。


「実は……店の裏口の“あの扉”。

昨夜の光のせいか、いつもと違う反応をしているのでする」


「反応?」


「扉の向こうに“何か別の経路”が繋がりかけているのでする」


ユウトは背中が冷たくなるのを感じた。

あの扉は、現世と異世界をつなぐ唯一の境界。

そこに別の異変が起きているとしたら──


リゼリアは静かに告げる。


「ユウト。次に来るのは……

ツナマヨ信者より、はるかに厄介な存在かもしれぬ」


Midnight Mart 王都支店の夜は、まだ終わらない。

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