王女殿下、バイト志願!?
朝のMidnight Mart 王都支店。
ユウトはレジ前で深呼吸し、今日も異世界客に備える。
「……今日も無事に終わるといいな」
その瞬間、店の裏口が勢いよく開き、金色のマントが舞った。
背中まで伸びた銀髪、透き通る青い瞳――王都の王女、アリシア殿下が颯爽と入店してきた。
「おはようございます、王女様!」
ユウトは慌てて頭を下げる。
アリシア殿下はにこりと笑い、手を掲げた。
「我が名はアリシア。アルダ王国の王女にして、Midnight Mart王都支店のバイト志願者として参上した!」
ユウト「は、はあ……!? 王女がバイト……ですか……」
リゼリアも眉をひそめ、凛とした声で告げる。
「……王女陛下。ここは一般市民も利用する店舗でございます。
無闇に手を出されますれば、混乱は避けられませぬ」
「ふふ、心得ておりまする。今日はツナマヨおにぎりの心得を学ぶため、私自ら調理補助に参るのです」
その言葉に、店内の異世界客たちもざわめく。
「……王女もおにぎりを?」
「伝説になりそうだな」
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混乱の始まり
最初は礼儀正しくおにぎりを握っていたアリシア殿下だが、手際が王国式で複雑すぎる。
ユウトは叫ぶ。
「王女様、それじゃ時間かかりすぎです! 普通の握りで大丈夫です!!」
しかし王女は聞かず、ひとつひとつ丁寧に巻き、魔法で温め直す。
スライム型客が「ピチピチ!」と跳ねながら列を崩す。
ドラゴン型の客が大きな体で陳列棚に当たり、商品の箱が倒れる。
ユウト「うわぁぁああ!!」
リゼリア「……落ち着いて、ユウト」
金色マントの裾をひるがえし、リゼリアは杖をひと振り。
「――《秩序結界》」
小さな結界が店内を包み、客たちを安全な位置に誘導する。
ユウト「はぁ、助かる……でも王女様は無理ですね」
リゼリア「ふふ、まだ慣れておらぬだけです。指導すればすぐに……」
王女はにこやかに微笑み、握ったおにぎりを差し出す。
「ユウト殿、召し上がれ」
ユウト「あ、ありがとうございます……って、熱っ!」
「魔法で温めたのですからね!」
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王女バイト大成功……?
数時間後。
店内は混乱しつつも、笑いに包まれていた。
ユウトは疲れた顔でリゼリアに耳打ちする。
「リゼリアさん、これで王女バイト、初日で伝説級ですね……」
リゼリアは微笑み、杖を軽く振る。
「王女陛下の熱意ゆえ、想定の範囲内です。
ただし、次は少し段取りを簡略化するよう指導いたします」
ユウト「……ええ、お願いします」
王女は満足げに笑い、金色マントをひらりと翻した。
「明日も参りまする!」
ユウト「……やっぱり深夜バイト、普通じゃないな」
店内に、異世界キャラたちの歓声と笑い声が響いた。
Midnight Mart 王都支店――今日も戦場のように賑やかだった。




