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裏口の先は、見知らぬ夜の街

午前二時。

 店内には、電子レンジのチーンという音だけが響いていた。


 深夜シフトのコンビニ店員、ユウト。

 今日も眠気と戦いながら、肉まんの在庫を数えている。


「……二十個。多いな、これ。絶対余るやつだ」


 ため息をつき、裏口へ向かう。

 店長から「ゴミ出しも頼むわ」と言われていたのを思い出したのだ。


 夜風が肌に当たるのを想像しながら、無心でドアノブを回す。


 ――ギィィィ。


 次の瞬間、冷たい空気と共に、見知らぬ光景が広がった。


 アスファルトではなく、石畳。

 街灯の代わりに、ランタンがいくつも吊られている。

 遠くで鐘が鳴り、どこかの店から香ばしいパンの匂いが漂ってきた。


「……え?」


 ユウトは思わずゴミ袋を落とした。

 コンビニの裏手に、ヨーロッパ風の街並み。

 そんなはずがあるか、と目をこすっても景色は変わらない。


「ようこそ、異界の商人様!」


 声がした。

 見ると、金髪の少女がこちらに走ってくる。

 白いエプロンにフード付きのマント。手には木のカゴを持っていた。


「あ、あの……?」

「この場所を開いたのはあなたですね? “扉の使い手”に違いありません!」

「いや、俺バイト中なんですけど」


 少女はにこにこと笑って、ユウトの足元に落ちたゴミ袋を覗き込む。


「この黒い袋は……“闇の宝袋”ですか?」

「ただの燃えるゴミです」


 彼女は真剣な表情でうなずいた。

「なるほど、闇を燃やす術式……深い……」


 ユウトは頭を抱えた。

 どうやら夢ではない。

 それだけは確かだった。


「……店長、これ絶対バイト代合わないやつだ」


 深夜コンビニの裏口は、異世界に繋がっていた。

 ユウトの眠れない夜が、ここから始まる。

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