6話 貴族との交渉2
「私も行くの!?ダンジョン!」
ちょっと…黙ってほしい…
「……」
「どう、でしょうか…」
流石に貴族相手に脅しと要求が過ぎただろうか
だが現状これしか突破口がない
いくら貴族でもリーファの魔力を使えるなら1人くらいは殺せる
せっかく召喚した異世界人を貴族が殺す事はないだろうから、
俺を殺すためにリーファを殺したりはしないはず
そして希少な貴族である魔法使いを失う危険を犯してまで、俺自身を殺しにくるということもきっとない…
ないと思うが、もしそれを選ばれたら、
そうなると100%こちらの負けだ
俺が殺されてリーファは拐われる
「………いいだろう、以前の失態は不問とし、冒険者に戻ることを許可する」
「ミレイン!」「平民の脅しに屈するなど!」
他の貴族はそうはいかないが、
なんとかギルド長を説得出来たようだ
ここで、あのくすんだ水色の髪の青年の口が開く
「…父様、この者は確か貸し出した魔石奴隷を逃がしてパーティーを壊滅させた、あのBランク冒険者ですよね?…信用なりません」
父様って言ったな…
確かミストレイという息子がいると聞いたことがある。
ギルド長の息子ならギルドで何回か目にしたのかも
彼の言葉を聞いて後ろの貴族達が思い出すように呟く
「ああ、確か妹が魔石奴隷だった冒険者か。」
「妹が死んでずいぶん騒いでいたから代わりをやったんだろう?それを逃がしたとか」
「身内に魔石奴隷が出るとこうゆう奴もでてくるから困ったものだ。」
思わず口を出しかけて、止める。
貴族にとって、魔石奴隷はどこまでいっても“もの”だ。
彼らにとって俺の妹は“替えが効く魔石奴隷”
こいつらに何を言っても俺のあの時の怒は、絶望は、伝わらない
「ジーフ…」
怒りで自然と腰の後ろに忍ばせていたナイフに手を伸ばしかけた、その裾をつままれる
はっと見下ろすと悲しそうな目のリーファと目が合う
着ている妹のだったワンピースの胸元に手を当てながら、俺の裾をぎゅっと掴みながら見上げている
それを見ているとなぜか怒りは引いていった
あなたが悲しむ事はないのに…
そうだ、俺はリーファを同じ目に遇わせないように今度こそうまく貴族と交渉しないと
冷静になれ。
「確かに俺は魔石奴隷を逃がしました。でも、それはそちらにも過失があったはずだ。そうですよね、ギルド長」
「…そうだな、少なくとも私がそう判断して処分を下した」
また後ろの貴族達がざわついたが
ギルド長は続けて
「ギルドを管轄しているのは私だ、この者の責任は私がみよう。…もちろん、処分を撤回してやるのだ、もし失敗すれば、その時はより重い処分となる事を覚悟しなさい、それと__、ドライアド攻略には、ミストレイ、君も監視役として同行しなさい」
「「は?」」
嫌そうな声が被った
ミストレイ、と呼ばれた青年はすぐさま
「なぜ私が…!」
こんな者達と…と言いたげな目で抗議する
冗談じゃない、貴族の冒険者と一緒に攻略だなんて、俺だって嫌だ
「お前の言う通り、信用は出来ない、それは他の者もそうだろう、お前はいずれギルド長を継ぐのだから、見張り役として適任だろう。…みな、どうだろうか」
呼び掛けられた後ろの貴族達は
「それならいいだろう」
「そうだな。ここで争わず自滅するのを待つのが得策だろう」
と口々に言い方はあれだが、概ね納得した様子だ
ミストレイだけ大変不服そうな顔で「分かりました」とだけ答える
「ジーフ、それでいいな」
「…分かり、ました…」
俺だって大変不服だ
「では私達は先に戻る。準備が終わり次第すぐにギルドに来なさい。ミストレイ、後は頼みましたよ」
ミストレイの返事を聞く間もなく、彼を残してギルド長達は転移魔法で去っていく
残ったのは俺、リーファ、ミストレイという若い貴族の3人だけ
気まずい…
冒険者の経験がある身として、パーティー間の信頼や情報交換は武器やスキルより重要だ
異世界から来た世間を知らない怖いもの知らずの妖精に
平民や魔石奴隷を対等に扱わない貴族
このパーティーでドライアドのダンジョン攻略を…不安だ
「…すぐに私達も移動する、転移魔法を構築する間に準備を終わらせなさい」
準備と言ってもなあ…
防具の類いは冒険者資格を剥奪された時にほとんど売ってしまったし
残っているものといえば腰のナイフと報酬の魔道具くらい
後忘れているものは…
「あ__」