3話 妖精の用心棒
「貴女は、枯渇している魔力を補う為に召喚された魔石奴隷なんだと思います」
「魔石…奴隷!?」
「はい…ええっと俺たち平民には魔力はないって説明はしたと思うんですが、希に魔力を持った平民が生まれることもあって、その人達の事を魔石奴隷と呼んでいるんです…
魔力は持っているだけで魔法として使えないのでダンジョンの魔物から取れる魔石と同じだからと貴族や冒険者の魔石の代わりとして使われていて…」
一瞬、最後に会った時の妹の顔が浮かぶ…
魔石奴隷と知らされたあの時の驚きと不安の表情が今の彼女と重なった
流石に自分の置かれた状況が理解出来てきたのか
少し間を置いてようやく彼女が口を開く
「…奴隷…実感はないけどそんなに私魔力がすごいの?」
奴隷…と呟いた彼女の面持ちからして奴隷の意味までは説明しなくてよさそうだ
「そうですね__それに多分魔石としてだけじゃなく…その…」
一瞬戸惑う
これ以上過酷な現実を突きつけてもいいものか…?でも…
先ほどまでと違って少し不安の混じる目線に言い淀んでしまう
「え?なになに?まだなんかあるの…?」
いや、言っておくべきだ
「多分…貴女は魔法使いの子どもを産むために呼ばれたんだと思います」
「ええっ!?こどっ………これなにジャンル…!?」
魔法使いは魔法使い同士でしか子どもを産めない
厳密には産めないことはないが魔法使い同士でないと魔法使いとしては産まれてこない、らしい
なんでも魔力の量が関係している、らしい。
俺もよくは知らない
…後もう彼女の意味不明な言葉は気にしない事にしよう
「…なので、早くここから逃げた方がいいかと...あれだけ大きな魔方陣だったので、すぐ貴族が迎えに来ると思いますし…なぜ貴族邸やギルドじゃなくここに召喚されたのかは分かりませんが」
とは言っても今さっきこちらの世界に来たばかりの彼女に行く宛なんてあるわけないか…
「逃げるってどこに…ジーフは助けてくれないの…?」
う…
やっぱそうなるよな…
ただ、彼女を助けるということは必ず貴族とのトラブルになるだろうし…
……そんな迷子の子どものような顔で見ないでほしい…
「俺は…出来れば貴族とは関わりたくなくて…」
…でも、だから見捨てろって?
「ここまで話して、見捨てるの?」
こ、心を読まれた!?…やはり妖精…?
「…う、うう~ん…」
助けたい気持ちはある。だが、踏ん切りがつかない
そんな俺を見て、不安げな顔がふと吹っ切れたように笑った
「……ま、元々貴族に呼ばれたってなら行ってやろうじゃない!きっとなんとかなるって!…大丈夫!無理言ってごめんね」
「__っ!」
無理した笑顔、という訳ではなさそうだ…
なんならほんとになんとかなるという顔をしている
この人は…貴族からの魔石奴隷の扱いがどれほど過酷なものか知らないから…!
「話聞いてました!?貴族は貴女の話を聞いてくれるような人達じゃ…!」
「でも、ジーフは助けてくれないんでしょ?」
毛先をいじりながら
ちらりと様子を伺うような目にまた迷子のような困った顔
ああ分かった…これわざとか…
俺が見捨てるわけないと踏んでいるんだ
「……っ!……はぁ…」
覚悟を決めよう
きっとここがいい機会だ。
俺も貴族と、妹の死と。
いい加減向き合わないと
「分かりました…俺が貴女を守ります」
それに、もう二度とあんな後悔はしたくない
「ありがと!」
こうして俺はこの世界に飛び出したばかりの無邪気で、危うくて、どこか放っておけない、そんな妖精__…彼女の用心棒となった
~人物紹介あとがき~
リーファ(森 青葉) 年齢???
身長162cm
日本からこの世界に召喚された。
前の世界の趣味はゲーム・アニメ・漫画
少女漫画より少年漫画や青年漫画を好む
社交的なタイプ。押しが強い。