三話 妖精の用心棒
前回のあらすじ
“森青葉”と名乗る異世界人にこちらの世界の事を教えるジーフ
彼女が召喚された理由を伝えると…
「ど…奴隷!?」
彼女の表情から好奇心が消えて、驚きに変わる
「チートスキルで無双とか、無限の魔力で魔法を極めて、魔王を倒すとかではなく…?」
いや、俺にそんな事を聞かれても…
「ええっと…貴族が異世界人を召喚する目的っていうのが、高い魔力を持った異世界人に魔法使いを産ませる事だと聞いてるので…」
「産ませるって…これ何ジャンル!?」
ジャ…もういい。気にするのは止めよう。
「後…さっきも言ったように魔法は魔法使いである貴族しか使えませんから…貴女も使えないと思いますよ」
「ええ~!?そんなぁ…魔力があるのに魔法が使えないなんて事ある…?」
「ええ。平民の中にも希に魔力を持った平民が生まれることもあって、その人達の事を魔石奴隷と呼んでいるんです…魔力は持っているだけで魔法は使えない。ダンジョンの魔物から取れる魔石と同じだからと貴族や冒険者が魔石の代わりとして使われてます…だから…貴女も…」
一瞬、嫌な思い出が蘇る
あまりこの話はしたくない
「…私はその魔石奴隷で、何も出来ずにただ魔力を搾取されるだけの存在って事…?」
流石に自分の置かれた状況が理解出来てきたのか、俯いてしまった
無理もない。
いきなり連れてこられてこんな酷な話…受け入れられないだろう
可哀想だが、俺にはどうする事も…
「…という事は、これは頭脳で乗り越える系なのね」
「はい?」
また訳の分からない事を呟いたかと思うと、いきなり顔を上げて夜空が俺を映す
「な…な…!?」
近い!
「ねえジーフ。拾ったついでに__私を助けてくれない?」
「ひろっ__!?助けるって…」
貴族から逃がせという事か!?
「無理ですよ!貴族はこの世界全体を統治しているんですよ!?…生活も貴族の作る魔道具がないと回らないし、誰も味方になってくれる人なんていない。そんな人達から逃れるなんて…」
そう。誰も何も、貴族に歯向かうことなんて出来ないし、しても変わらない
それに、俺はもう貴族には関わりたくないんだ
「そう…。じゃあ、逃げるのが無理なら、なにか武器をくれない?ナイフとか」
戦う気か!?
そんな華奢な身体で?
「それこそ無理ですよ!相手は魔法を使うんですよ!?それに__」
「だから、諦めて奴隷になれって言うの?」
それは…
「私は何も抵抗せずに大人しく奴隷になるなんて嫌」
そんなの…誰だって…
でも、抵抗したって、抗議したって、何も変わらない…俺はそれをよく知っている
それなのに簡単に助けるなんて、そんな事…言えるはずがない
もし、“また失敗”でもすれば__
「…逃げるのもだめ。戦うのもだめ、それなら__」
夜空が更に近づく
な、なにを…
身体が付きそうなほど近づいた所で、急に腰が軽くなった
「__!俺の短剣!」
腰に巻いていた短剣を抜き取られた!?
無力な異世界人だからと油断した!
「か、返してくださ__」
「…これなら、どう?」
手を伸ばすより先に、その剣先が細い首筋に向くので、思わず動きを止める
どうって…
「ねえ。私を召喚した理由って、私の魔力が必要だからだったよね?」
「そ…のはずです…」
何をしているんだ…彼女は
本気か?…暗い夜空の瞳ではその真意がうまく汲み取れない。
「じゃあ、私が死んだら困るよね?」
そりゃ、貴族は困るだろう。
いや、ここで死なれては俺も困る
カチャッと短剣を握る音がして、刃先がその柔肌に触れて皮膚が窪む
相変わらず考えは読み取れない
「わ、分かりました!ま、まずは落ち着いて…なんとか奴隷にならない方法を俺も考えますから…」
とにかく、その刃を下げてくれ
そのワンピースが血に染まる所なんて見たくない
しばらく沈黙が続いて
「なんてね」
彼女の首筋から刃先が遠ざる
…よかった。
「じゃあ、助けてくれるって事でいいんだよね?」
しまった。よくなかった。
これが狙いか…妖精だなんてとんでもない。
「いいんだよね?」
「う…はぁ…。分かりました。出来る限りの事はします…けど、やはり逃げるのも戦うのも現実的ではないですよ。」
一体どうするつもりなんだ
「うーん…これならいけるんじゃない?」
「これなら、とは?」
再び彼女は刃先を首筋に向けると、ニッと怪しく笑って答えた。
「“交渉”」
………脅しでは?
~人物紹介あとがき~
リーファ(森 青葉) 年齢???
身長162cm
日本からこの世界に召喚された。
前の世界の趣味はゲーム・アニメ・漫画
少女漫画より少年漫画や青年漫画、ラノベを好むオタク。
社交的なタイプ。押しが強い。




