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2話 異世界の妖精

「え!?貴女誰ですか!?…一体どこから…」


というか薬草が!


妖精の下にはまるで草のベットのように

無惨に押し潰された薬草達が


あぁ…結構育てるの大変だったのに…

…じゃなくて


「あ、もしかしてさっきのでっかい魔方陣から…?」


でかすぎてここが召喚場所だったとは思わなかった

でも近くに召喚者っぽい人は見ていない

多分貴族なんだろうけど…


もう一度周りを見渡すがそれらしい人はいないようだ


よかった

出来るだけ貴族とは関わりたくない。

それに


「ま、まず家に入りましょう!その、服を、着た方がいいかと…」


妖精は身体が透けるほど薄くてキラキラした布しか着ていなかった。


確かに妖精のイメージそのままではあるが…

その、目のやり場に困る…!


ポカンとしたままの妖精の手を引いて畑の側に建っている小さな小屋に入る

もとい、俺の家だ。


ビスは一応貴族が来たら知らせるよう見張りに行ってもらった


…が、居てもらった方がよかったか?

あまり妖精…のような彼女を見ないようにしながら棚をまさぐる


「確かここに…あった!…これ妹のものですが…」


唯一残していた妹の服を渡す

妹が15の頃の服だがまあサイズは大丈夫そうだ

妖精…彼女は幼くも見えるし大人びても見える不思議な容姿で年齢不詳だ


俺と同じ…くらいだろうか


たれ目がちの俺とは違って猫のような大きな瞳と少しうねった長い髪は夜空のように黒い


「後ろ向いているので着替えて下さい」


しばらくして布が擦れる音がし出す


さて、とっさに家に連れてきてしまったが

これからどうするか


遅かれ早かれ召喚者である貴族が探しに来るだろうし

このまま追い出す…わけにもいかないか

かといって匿うと厄介な事になるだろうし…


「あの―…」


「あ、…えと、着替え終わりました?」


うん。サイズは問題なさそうだ

見慣れた妹の服を着てるのに彼女が着るとなんてことない深緑のワンピースもどこか大人っぽく見える

着こなしが違うのだろうか

夜空のような黒髪が深緑のワンピースの上でふわふわ浮かぶように揺れている


「あの、着替えありがとうございます…えーっと」


「あ、俺はジーフと言います。ここで薬草の栽培と、一応傭兵もしてるんですが…」


いやこれは言わなくてもいいか


「傭兵……やっぱここ絶対日本ではないよね…」


にほ、ん…?


「は!ごめんなさい自己紹介の途中に…

私は森青葉って言います」


「もりあおば、変わった名前ですね…」


貴族の召喚は異世界から呼び込むらしいけど

それがにほん?


「もり、あおばです。森が名字で名前が青葉。」


みょ…?

さっきから聞き馴染みのない言葉ばかりだ

彼女が言うには彼女がいた世界では名前の前に家族と共有の“みょうじ”というものが付くらしい


「ええっと、じゃあ、アオバさん、貴女は貴族に召喚されたんですよね?」


「召喚…やっぱりここは異世界なの!?」


俺が質問してるんだけどな…


「とりあえず貴女の言っていたニホン?ではないですね…」


「…え?夢…じゃないよね…ほんとにあるんだ異世界転生…え?じゃあ私死んだ?…んん~~…だめだ普通に仕事から帰ってスマホ触ってて…そのまま寝た記憶しかない…」


すまほ?時々何を言っているのか分からない…


が、急にもと居た場所から連れてこられて混乱しているんだろう

多分この様子じゃ自分が誰に呼ばれたのかも分かっていないんだろうな


「とりあえず、一度お互い情報交換しませんか?聞いてる感じ元いた場所とこちらでは色々と違いそうなので…」


「そ、そうですよね、えっと…何から話せば…」


「じゃあ、まず、今までの話を整理しましょう。

貴女はニホンという所から来たと言いましたが、言いにくいんですが俺の知っている限りニホンなんて所聞いたことありません、

だから多分ですが、あなたのいう通りここでないどこか違う世界…異世界から召喚されたんだと思います」


「……召喚って…誰が…」


「俺じゃないですよ?召喚魔法を使えるなんて貴族くらいしかいないので、貴族かと…」


「……貴族だと魔法が使えるの?」


え?まさかそんな当然の事も知らない…!?


「えぇっと…ちょっと待って下さいね…」


異世界や召喚については知ってそうな雰囲気だったから彼女の元の世界でも常識なのかと思っていたが…違うのか?


「…貴族だと使えるというよりは、貴族しか魔法は使えませんよ…」


そんなの常識だ、が…


「…なるほど…つまり貴族は魔法使いってことね」


俺からすればそりゃそうだろうって感じだが、やはりこの反応そもそも根本的に違う常識の世界から来たのか


「アオバさんのいた世界はどんな所だったんですか、その、ニホンってのは」


「えっとね、日本っていうのは私の住んでた国の名前で私はそこで普通のOLとして働いてて__ってそこはいいのか…えっと、私のいた所では魔法とか魔法使いとかそういうのは漫画__って分かんないよね……んーおとぎ話?架空の話みたいな感じで存在は知ってるんだけど実際にはないっていうか~…」


なるほど。分からない。


「…思ったより根本的に世界の仕組みが違うみたいですね…」


「ごめんなさい…上手く伝えられなくて」


「ああいえ、じゃあもっと初歩的な所から説明しますね、まず__」


__まず、この世界には5つの国があり

この5つは全てその土地にあるダンジョンを中心に広がっていている。

れぞれダンジョン名をとって

大樹のドライアド

深淵のアビス

巨大地下迷宮モーヴ

天へのタワー

果てなきロード

この5つだけだ

ニホン、なんて国はない。


そしてさっきの話を詳しく説明するとそれぞれ貴族である魔法使いが統治していて基本、魔法は貴族しか扱えない



「例外として冒険者はギルドからスキルや魔法武器が報酬としてもらえるんですが…____

え?ギルドや冒険者もニホンにはない?そうですね…」


ギルドは貴族が運営していてダンジョン攻略の為に冒険者を雇ったり育成したりしている施設だ。


俺たち平民は魔力を持たないがスキルと魔力媒介…魔石などがあれば魔法に近いものが使えるようになる


この世界では15歳になるとギルドでスキル適性診断が行われる。

そして一つでも適性があればスキルが与えられ、冒険者となる




「__と、大体こんな感じなんですが…何か聞きたいことは…」


「ダンジョン…ギルド…冒険者…スキル……すごい!漫画の世界じゃん!!」


「あ、あの?」


なんか時々興奮してしゃべるな…この人

ちゃんと俺の話、聞いてたんだろうか…?


「あ、ごめんなさい、私前の世界でこうゆうの大好きだったから興奮しちゃって…!」


一応ちゃんと聞いてたみたいだ


「ジーフさんは__」


「…あ…俺の事はジーフでいいです。それにもっと楽に話して下さい、多分そっちが素ですよね?」


「ふふ、そう?じゃあジーフはスキル適性がなかったの?薬育てたり傭兵をしてるんだよね?」


「あ~…俺はその、ちょっと複雑な経緯がありまして…__」


まあそれは彼女には関係のない俺の過去の話だ


「…それよりも、多分これはアオバさんに__」


「私の事もアオバでいいよ!丁寧な言葉も不要ですよ!」


ニカッと夜空のような黒い瞳がスッと細くなる、活発な子どものような笑顔だ

表情もこっちが素なんだろう


「…言葉遣いは癖なので…それより、…アオバにとって重要な話なのでよく聞いてください」


「うん?」


ここの世界の常識が元の世界とまるで違うのなら自身が置かれている状況も全く分かっていないと思う、いや絶対分かってない


話を戻すが、召喚は貴族がしたものでほぼ間違いはない

そして貴族が異世界から召喚を行う目的はおそらく


貴女は魔石奴隷なんだと思います____


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