13 リア充予備軍
俺はそっとその場をスルーして、空いている席を探すことにした。
だが、運命は俺を逃がしてくれなかった。
「お、拓海!どこ行くねん!こっち座れや!」
翔太が俺を見つけ、めちゃくちゃ嬉しそうに手招きしている。
……まるで「カモがネギしょってきたで!」と言わんばかりの顔だ。
「いや、俺は静かにメシ食いたいんだけど」
「何言うてんねん!男同士の熱い友情トークしよや!」
「お前の周り、さっきまで女子しかいなかったけど?」
「まぁまぁ!こっち座れって!」
翔太に 強制連行 され、俺は半ば強制的に翔太の隣に座らされた。
俺の目の前には、まだニヤニヤしている女子たち。
「え、翔太くん、この人誰?」
「ワイの親友の拓海や!」
「へぇ~」
いや そのリアクション何!?
「え、翔太くんって陰キャとも喋るんだ?」みたいな顔すんな!!
「てか、拓海くんって……サークル入ってる?」
「……うん」
「「ええ~~~~!?」」
うるせぇ!! 俺が サークル入ってる ってだけで何その驚き!?
大学生って サークル活動する生き物じゃなかったっけ!?
「え、なになに? eスポーツとか?」
「違う」
「じゃあ、パソコン系?」
「違う」
「まさか……アニメ研究会!?」
「違う」
なぜお前らの選択肢、陰キャ一直線 なのか
「……じゃあ何?」
「写真サークル」
「「はぁぁぁぁ!?!?!?」」
また悲鳴。
いや、おかしいだろ!! 俺 写真サークル所属 って言っただけなのに!?
お前らのリアクション、俺が「魔王軍に所属してます」ってカミングアウトしたレベル だぞ!?
「ちょ、待って待って、写真サークルって 結衣先輩 いるとこじゃん!?」
「ああ、そうだけど」
「えっ、ウソ!? 拓海くんって 結衣先輩と知り合いなの!? 」
「うん、まぁ……」
「いやいやいや!! あの “学食ランキング” の結衣先輩と!?」
「……学食ランキング?」
「そう!! 『一緒に写真撮ったらSNSのいいね爆増する先輩No.1』!!」
「何そのピンポイントなランキング!?」
「え、てか 『文化祭で彼女のフリしてくれたら人生の勝ち確定ランキング』 でも1位だったし!!」
「もはや 都市伝説扱い されてるじゃん!!」
「『この大学に通ってる理由の40%が結衣先輩』って人もいるんだよ!?」
「いや、割合高すぎるだろ!! 残り60%は!?」
「……そんな先輩と サークル一緒ってことは……」
「連絡先も知ってる!?」
「……まぁ、うん」
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」
── 学食、崩壊。
待て待て待て。
お前らにとって、 結衣さんのLINEって国宝か何か!?
「え、じゃあさ……結衣先輩と 写真撮りに行ったりするの!? 」
「たまに……」
「「ギャアアアアア!!!」」
ちょっと待て、ここ学食だぞ!?
なんで俺 異世界転生してチート能力持ってた勇者 みたいな扱いされてんの!?
「ねぇ翔太くん、もうこれ…… 拓海くん、陰キャじゃないよね!? 」
「いや、せやな……これはもう……」
翔太が 神妙な顔 で俺を見つめる。
「リア充予備軍 や……」
「だから違うって!!!!」
俺の大学生活、もうめちゃくちゃだ。