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どうする!?家康

※下ネタ注意。

※今回かなり汚いネタになります。お食事中の方はどうか閲覧を控えてください。

 元亀げんき3年12月22日。

 三方ヶ原(みかたがはら)の合戦で、侵攻してきた武田信玄殿にボロ負けしてしまった儂は、命からがら、浜松城に逃げ帰ってきた。

 しょうがないじゃん。だって武田軍、めっちゃ多かったんだもん!あんなの勝てるわけないよ。無理無理。正直、命があっただけでもありがたいと思っている。

 信玄殿は強い。それが、今回の戦で痛いほどによくわかった。


 儂は、同じ失敗は二度とせぬ男だ。

 過ちを繰り返さないためには、この悔しい気持ちを、常に忘れることないよう、何かに書き留めておくのが良いと思う。


「……なあ、儂はいま、どんな顔をしている?」


 そばにいた家臣に、ちと訊いてみた。すると家臣は苦虫を噛み潰したような顔をして「ひどく、険しいお顔をされておられます」と言う。うむ。それでよろしい。


「絵師を呼べ。儂のこの顔を、一枚の絵にして書き留めてもらいたい」


 こうして、儂のいる浜松城に、ひとりの絵師が連れて来られた。

 のちの『しかみ像』の誕生である。

 戦に負けた、この悔しい気持ちは未来永劫忘れたくない。信玄殿が憎い。信玄ゆるさじ。信玄コロス。


 きっと、いまの儂の顔はすごいことになっているだろう。ああ。完成した絵を見るのが楽しみだ。


 ところが……この絵師、何をもったいぶっているのか、かなり時間をかけて描いていた。


「ねえ……まだ?」

 しびれを切らして訊いてみるも、絵師は、まだ描いている、の一点張りだった。

「動かないでください。描きにくいですから」

「そうは言ってもさあ、ねえ、ちょっと長すぎない?」

「手の込んだ作品ほど、時間がかかるものです。ほかでもない家康様を描くんですから、いい加減な絵は描けませんよ」

「それは、そうだけどさ……」

 言ってることはわかる。大いにわかるのだが、儂はいま、それどころではないほどに切羽詰まっていた。

 椅子の下でもぞもぞと尻を動かす。

「ねえ、もうちょっとペース上げてくれない?いくらなんでも時間かかりすぎだよ!?」

「ですから、動かないでください。動かれると非常に描きづらいです」

 絵師は黙々と筆を動かしている。儂はもぞもぞと尻を動かしている。


 ――もう。限界だ!!


「だ、か、ら、ッ!!時間かかりすぎなんだよッ!!さっさと描けっつーの!!こっちは漏れそうなの!!!」

 言ってしまった……。

 傍らで、家臣たちが、ざわざわとささやき合っているのが見える。え。家康様、漏らすのか?大名なのに?もしかして大?大名だけに大?大を漏らした大名、略して大もらし大名、未来永劫語り継がれるやつだー!やだー!

「ちがうッ!断じて、大、ではない!!」

 そう言い切った瞬間、己の肛門から、勢いよく、ぶりぶりぶり…と何かが噴き出すのを感じた。

 ぷうんと、鼻をつく臭いが辺りに充満する。

「うわ!くせえ!」

「う○こだ!!家康様がう○こした!!」

 家臣たちがみな、鼻をつまみながら、わあわあと騒ぎ立てる。

「うるさい!!う○こしたとか言うな!!」

 ついさっきまで儂を慕っていてくれたはずの家臣たちの目の前で、盛大に糞を漏らす。今しがた、信玄殿にボロ負けしたとき以上の屈辱だ。もう信玄とかどうでもいい。このまま何もなかったように綺麗さっぱり消えてしまいたい。

「そういやさ、城に戻ってくる前から、なんか臭うなあとは思っていたんだよ。まさか家康様のう○こだったとはな」

 なにそれ!?聞いてないよ!ていうか、なんでそのときに言ってくれなかったの?それならそうと、途中で「かわやに寄りましょうか?」とか言ってくれればいいものを……もしかしてわざと?ねえ、わざとなの?

「言われてみれば、家康様の乗っていた馬だけ、鞍の辺りにべっとりと茶色っぽい何かがへばりついてた気がするんだよな……あれ、もしかしてう○こ?」

「え?じゃあ俺らが戦ってるときから家康様は脱糞してたってこと?」

「脱糞ニキじゃんwwもう戦場脱糞ニキで確定だよww」

「戦場脱糞ニキ、ウケるww」

 アハハ……みんなが笑ってる……。

 お日さまも笑ってる……。

 ルルルルルル……今日もいい天気……。


 いかんいかん。ここで屈してしまっては、儂の大名としての矜持きょうじが保たれない。

 どうにかして誤魔化さなくては。そうだ!


「あ、えっと、あの……そう!焼き味噌!これは焼き味噌だから!うん!う○こじゃないからね!焼き味噌だからね!そうそう、儂は鞍に焼き味噌を塗っておくタイプなの。知らなかった?こうしておくと戦いのときに力が入るんだよね~。まぁ今回はボロ負けしちゃったんだけど……三河の味噌は美味しいからね~。馬も喜ぶよね~」

 力が入った結果、思わず脱糞してしまったことは言わずにおく。

「あ、そうっすよね!天下の家康様が、まさか、戦の帰りに馬に乗ったまま脱糞するなんて、そんなことあるはずがないっすよね!」

「そうそう!そんなことあるわけないのよ!」

 まあ……そんなこと……あるんだけどね……。

 でも、口に出しはしない。『戦場脱糞ニキ』を認めてしまったら、これまでの儂の努力が水の泡だ。それだけは断じて認められない。


「……家康様、ご所望しょもうの絵、出来上がりました」


 出来上がった儂の顔は、いまにも、糞を漏らしそうなほど苦痛に歪んでいた。



 嗚呼。もしも『あの日』に戻れたら。


 儂は……。

今回はタイムトラベルしません。こういうパターンもあります(笑)


古くは、三方ヶ原の合戦の敗北後、敗北の悔しさを忘れないために描かせたとされている「しかみ像」ですが、近年では否定されつつあるようです。今回は『あまりの悔しさにう○こを漏らした』というエピソードの滑稽さを強調するために、あえて旧説のほうを採用させていただきました。

ちなみに、「戦場脱糞ニキ」のあだ名は、実際に一部のネット民のあいだで有名らしいです……。



家康公の愛した「焼き味噌の湯漬け」 ※う○こではありません。

https://www.kakukyu.jp/recipe_view.asp?id=148

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