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part8

???の世界・樹海の奥


「ん〜、ふぅ。今日もいい天気」


とある樹海の奥、ぽつんと建った1軒の家に住む1人の少女。


「・・・あ、昨日ぶっ放した魔法の後処理忘れてた」


いそいそと新たに魔法を使い、見事に抉れた地形を元に戻す少女。


「これでよし。ふふ、魔法の研究も進んできた。・・・ん?なんか来た?」


不意に空を見上げ、手をかざし魔法を放つ。かなり離れた場所で、1匹のワイバーンが魔法に直撃し墜落した。


「よし。・・・でも勇呀みたいにかっこよくは決めれないなぁ。博は転生してもムキムキになってるかな。澪は転生しても私よりぼいんなのかな」


いつか出会えるかもしれない誰かのことを考えながら、少女は今日も魔法の研究に精を出す。


──────────────

数日後・・・


「なんで今になって騒ぎになってるんだよ〜!?」

「あ、あはは・・・」


情報公開の解禁によって一気に拡散され、無事(?)有名人となってしまった輝。彼はあの1件以来頻繁に関わるようになった美咲と共に地元民しか知らないような、ほとんど人気のないダンジョンに潜っていた。


「ごめんね輝くん。私が配信切り忘れたばっかりにこんなことになっちゃって・・・」

「いや、元はと言えばべらべら喋った僕の方が悪いし、美咲は気にしないで」


いつの間にやら名前で呼び合う間柄になっている2人。これは美咲が希望したことではあるが、輝は前世の頃から直ぐに他人に懐く性格だった(前々世ではむしろ真逆で、ネット上では喋れる程度だった)こともあり、ある種の人たらしな輝に落ちかけているということでもある。輝は無自覚天然人たらしな罪深い(?)男である。見た目は女の子だが。


「流石にメディアもこんな辺鄙なダンジョンの中までは来なかったか。よいしょ」


視界の先に見えたモンスターをアウトレンジから撃ち抜きながらつぶやく輝。


「文句言う割には武器、変えないのね」

「まあね。昔から使ってたし、今更変えれないかな。それに」パァン


さらにモンスターを撃ち抜いた輝。


「こうしてアウトレンジから撃つことって、地味だけど安全なんだよ。その分偏差とかしっかり取らなくちゃだけど、そこは技術でカバーすればいいし」

「うぐっ」


輝との出会いを思い出し、自業自得とはいえ心に多少のダメージを受ける美咲。


「あ、ごめん。傷を抉ろうとした訳じゃ」

「分かってるよ。これは私が勝手に痛がってるだけだから…」

「えーとえーと、あーもう!」


上手い慰め方が思い浮かばず、前世で澪や梓にしていた癖が発動して最終的に頭を撫でるという方法を取った輝。


「美咲は配信で、派手な画が必要だったからそうしたんでしょ?それは責められることじゃないよ」ナデナデ

「そうかな?でも、それでリスナーさんを心配させちゃったし」

「リスナーがそれを求めてたんでしょ。…そうだね、探索者ってのは常に選択をしなければならないって話をしようか」

「選択?」

「そう。まず、美咲はダンジョンに潜る時は何を重視する?」

「私は…そうね、やっぱり配信映えを重視するかな」

「そうだね。その時点で、地味な探索は捨てることになるでしょ?次に、配信映えする戦闘シーンってどんなの?」

「そうね…、一気に近づいて、ずばばばーって感じ?」

「なるほどね。そうすると、僕みたいに遠くからチマチマってのは外れるね。そして美咲のスタイルにはリスクがある、と」

「うっ…分かってはいるんだけどね。でも、こうした方が同接増えるし、ハイチャ…ハイパーチャットも貰えるから」


ハイパーチャットとは、要するに投げ銭のことである。


「ああ、責めてる訳じゃないんだ。ただこう考えると、あの時の美咲は自分の思うやり方の最善をしてたって思えない?」

「…確かに、あの時は私のやりたい様にやってたけど」

「ね?だから気に病む必要はないよ」

「うん、そうね。よし、元気出てきた!今なら何でもできる気がする!」

「調子乗るんじゃありません」

「あたっ」


調子に乗って突撃しようとする美咲にチョップをお見舞いし、そして2人して笑い合う。


「ま、こんなこと言っておきながら、僕も昔は銃持って突撃してたんだけどね」

「え、そうなの?見てみたいなぁ」

「いいよ。見てな?」


近くに湧いたゴブリンに突撃に、ゴブリンの初撃を避けたあと、銃床でどつき怯ませた輝。そして怯んでいる隙に撃ち殺した。流れるような動作はかつての腕が大して鈍っていないことを表すが、現在の輝のポテンシャルを示してもいる。


「こんな感じ。どう?」

「す、すっごい!輝くんも配信した方がいいよ!これなら有名になること間違いなしだよ!」

「そ、そう?」


今までぐいぐい来るタイプの女子と絡んで来なかった輝は若干押され気味である。


「でももう有名ではあるんだよね…」

「あっ…」

「あっ、やべ」


再び落ち込みモードに突入した美咲をなんとか慰めること5分。


「うーん、けど僕は自分から配信はしないでいようかな」

「えー、なんで?」

「僕は探索だけで生きてくだけの収入は得られるし、配信をして目立とうという欲がないからだね」

「でも輝くん、もう目立ってるじゃない」

「いいかい?目立つと目立たされるは、違うからね?分かった!?」

「は、ハイ」

「よろしい。よし、そろそろ探索再開しようか。流石に同じところにいすぎだ」

「そ、そうね。あ、あと魔結晶回収しないと」


魔結晶は文明の更なる発展をもたらす。が、ダンジョン内に放置するとそれを取り込んだモンスターが強化されたり、新たなモンスターの出現に繋がるので、ドロップした魔結晶は全て回収するというのがマナーとなっている。


「よいしょ、白かぁ。にしても、白魔結晶の価値も上がったなぁ」


かつてはごみ扱いされていた白魔結晶。その処理は燃やすしかなかったのだが、研究により燃やした際に排出される温室効果ガスの量が石炭に比べ10の1程度であること、石炭よりも燃焼効率が高いということが判明。さらに従来の石炭と同じように使えることから、石炭を補完することで白魔結晶に使い道を見出した。

その際たる例が鉄道である。それまで動態保存されていた蒸気機関車は石炭を使用していたが、これを白魔結晶に置換することを試験的にやってみたところ、問題なく運用できたことから、全国の動態保存機に広まった。また、石炭に比べての燃焼効率が高いことにより、無補給での運転可能距離が大幅に長くなり、更には最高速度も更新された。

これらを受けて迷宮省は、電気が断線し電車が動けなくなっても動けること、また技術の継承と新たな需要の開発を目的として。そしてかねてからのSLブームも後押しし、探索者専用列車のための蒸気機関車を新造した。

これらの事象により、かつては雀の涙程の価値(1個=1円レベル)しかなかった白魔結晶は、1個30円程度と交換レートに昇格した。


「上がった?前からこんなじゃなかったっけ?」

「ああ、昔はろくに使い道もないからタダ同然の価値しかなかったんだよ」

「へー、そうなんだ。歴史詳しいんだね」


(あ、やべ。つい昔の話をしてしまった)


表面上は取り繕っている輝だが、内心は汗ダラダラである。


「よいせっ、と。まあなんだ、自分から配信することはないけど、たまに美咲の配信に映る程度ならまあ、いいかな」

「ほんと!?」

「たまにだけどな?」


輝は知らない。この選択により、美咲の中の輝の好感度がライクからラブに移行しようとしていることも、この先の人生で修羅場をいくつか踏むことになることも────。

前回に引き続き、冒頭に「誰か」の1日を切り抜いております。それが誰なのかは…最初から読んで頂けている方にはお見通しかな?(ΦωΦ)フフフ…


「なんでちょっと時間空いて有名になるんだよ…」


仕方ないジャン、輝くんがすぐに有名になっちゃったら物語として崩壊するからサ。


「解せぬ」

「まあまあ、輝くん。落ち着いて」


ふむ…輝くんや。


「なんだよ」


前世でもそうだったが…キミ、おっぱいの大きな女の子が好きなんだねぇ(*´艸`)


「ばっ、おま」


安心したまえ、キミの周りはおっぱいだらけにしてあげるし、キミも見た目は美少女だから世の紳士諸君にボコボコにされることはないさ。そうだよなぁ、諸君?


「…誰に話してんだ?」

「さあ?」


──────────────

最後までお読みいただきありがとうございます!よければいいね・コメントをいただけると嬉しいです(作者のモチベにつながります)。次回ものんびりお待ちいただければ幸いでございます。

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