コトリバコの使い方 参【 冬のホラー企画2】
“コトリバコ”。
外見は唯の寄せ木細工の箱だ。
呪いたい相手に送ると相手は死に至ると呪殺の箱。
そんな都市伝説が存在する。
この世には……。
白い。
白い。
白い雪が。
雪が降っている。
チラチラと。
チラチラと。
「先輩雪ですね」
後輩は窓から外を見上げ僕に呟いた。
「後輩そうだな」
僕は仕事の後片付けを終わらせると荷物を纏め始めた。
「先輩汚れ酷かったすね」
「そうだな~~二時間掛るとは思わんかった」
清掃業とはいえだ。
仕事が早く終わることに越したことはない。
だから酷い汚れは正直勘弁してほしいと思う。
リンリンリン。
リンリンりん。
音がする。
音が。
リンリンリンと。
リンリンりんと。
どこかでベルの音が鳴っている。
街頭のあちこちでクリスマスの歌が聞こえる。
市街地の道路や広場。
様々な場所で聞こえる。
クリスマス一色だ。
それを聞きながら僕はクリスマプレゼントを通行人に渡す。
三十個程のリボンの付いた小さな箱を。
とは言っても仕事の宣伝も兼ねた割引券入の箱だが。
終わったら今日の仕事は終わり。
帰るか。
「ねえ先輩」
先頭を歩いていた後輩が此方を振り返る。
人懐っこい顔をした後輩が僕を見上げ声をかける。
ふくれっ面で。
というか後輩。
お前。
生物学的には女なんだが。
スカートぐらいしろ。
ジーパンにジャンパーって……。
「あんだよ後輩」
僕は後輩に不貞腐れた顔で聞き返す。
「世の中はクリスマス一色ですね」
「そうだな」
あ~~。
言いたいこと分かる。
分かるんだけど。
「何で俺ら仕事してるんですかね」
「いうな」
ため息を付いた。
ええ。
眼前のカップル達を見れば誰でも不貞腐れる。
多分。
「ふふっ凄かったわ大輔さん」
「照れるな」
うん。
何だな。
爆発しろ。
別のカップルは……。
「いや~~ん課長逞しい~~」
「優子くんも中々どうして」
「今度気になるバックが出るんだけど~~」
「冬のボーナスで買って上げよう」
「有難う~~」
……。
社内恋愛では無いな。
うん。
深く考えるな。
更に別のカップルが居るな。
若い。
物凄く若い。
高校卒業したてか?
大学生かな?
まあ~~良いが。
「その何だ痛くなかったか?」
「大丈夫でした」
「そうか」
え~~と。
不味い。
この状況は不味い。
嫌な予感がする。
「先輩……」
「あんだよ後輩」
「何で俺等の仕事場ラブホテルなんですか」
「……」
後輩の言葉に僕は目を思わずそらした。
「あんたっ! その女は誰っ!」
「お前っ!」
あ~~浮気がバレて修羅場。
包丁持ってるんだが。
「課長……奥さんとは分かれたってっ!」
「いやっ! これはっ!」
やはり不倫か。
警察と救急車の手配……。
いや今は不味い。
仕事中だ。
「しねええええっ!」
「きやああああああああっ!」
見なかった。
僕は何も見なかった。
奥さんの手に先程僕が渡したクリスマスプレゼントを持ってたけど。
僕は見なかった。
目を逸らした先に立ち並ぶビルの山。
繁華街の一角が見える。
まあ~~眼前にはラブホテルの看板が多数下がってるが。
ラブホテルから色々なカップルが出入りしていた。
「ここ専門の清掃業者だし仕方ないと思う」
「先輩ムラムラするんで後で相手お願いします」
やめろ。
美少女なのに……それはやめろ。
というか僕は四十代何だが。
童貞は彼女で卒業したんだが。
四年まえに。
何が悲しくてムラムラしたという理由で卒業せないかん。
気持ちよかったけど。
気持ちよかったけど。
「彼氏作れや」
「出会いがないです」
「出会系アプリは?」
「俺等が使えると?」
そうでしたね。
ええ。
「分かったよ」
「ではよろしく」
黄色い太陽を見るな。
うん。
明日。
生きてるかな僕。
手加減してくれる事を祈ろう。
スマホが鳴った。
条件反射でメールを見る。
「仕事だ」
「え~~今からですか~~」
「ぼやくよ、ぼやくな」
僕は言いながら目的地まで足を運んだ。
後輩はというとボヤきながらついていく。
三十分後。
指定された場所に向かう。
当然のことだがラブホテルだ。
但し高級とつけとく。
受付に名刺を見せたら302号室に案内された。
中には床に眠りこける女性が二人と男が一人いた。
但し女性は永遠の眠りについていたが。
首を捻り千切られて生きて居るはずが無いと言っとこう。
男は自分の心臓を一突きしていた。
口から泡を吹いて。
目が酷く充血していた。
錯乱し自殺したんだろう。
その脇には小さな箱が有った。
寄せ木細工の箱が。
札束の入った封筒と共に。
うん。
僕が渡したクリスマスプレゼントですね。
どうやら正しい使い方をしなかったみたいですね。
寄せ木細工の箱の呪いが掛かる範囲に居たんだろう。
呪いに苦しんで自殺。
これでは死体掃除の清掃業者である僕達の必要は無いですね。
ええ。
僕は寄せ木細工の箱と現金の入った封筒だけ回収してその場を去った。
こうして今年最後の仕事を終わりますか。
「先輩この後良いですね」
「……」
翌日まで絞られ黄色い太陽を見る羽目になりました。
ええ。




