第1話 修学旅行にて
主要キャラクター
奥野…中性的な容姿。176cm。
植村…涼し気で大人っぽい顔立ち。183cm。
竹崎…派手じゃないが男前。180cm。
井崎…アイドルのような爽やかな容姿。178cm。
五月某日。
高校二年の奥野幸太は、沖縄のとある水族館に来ていた。修学旅行の最終日である。薄暗い館内でチンアナゴを眺めていた奥野はふと背後に気配を感じて振り返った。
そこにあったのは外の水槽と繋がる円柱水槽で、直立不動のアザラシが微笑むような表情で奥野を見つめていた。
「竹崎見て!ゴマちゃんがっ…神々しいゴマちゃん!!」
奥野は隣にいた友人の腕をつかみそのアザラシのところまで引っ張って行った。
「ゴマ神様…どうか僕に数学の点数をお与えください。そして僕が割った竹崎のスマホの画面を直してください」
奥野はアザラシの前で手を合わせてそう言った。そしてそのまま三秒ほどアザラシを見つめていたが、スマホを割られた友人の反応がないと、やっと隣に視線を向けた。
そこにいた彼は無表情で奥野を見つめていた。友人ではなく、知り合いでもない。しかし奥野は彼のことを知っていた。
六組の植村栄斗。
涼しげな顔立ちのイケメンだ。背が高く、百八十以上あるらしい。そのうえ文武両道とくれば、もちろん学校で一番のモテ男だ。同じ学校にいて彼を知らない人などいない。
奥野は端正な顔に釘付けになったように固まって、何も言わずただ彼と見つめ合った。
植村の後ろで友人の竹崎貴也は声を殺して笑っており、周りにいた他の生徒らもクスクス笑ったり可笑しそうな顔で二人のことを見ていた。