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異次元の聖力に驚かれました

「さてと。まずはどれくらい魔力があるのか調べよう。いや聖女の力だから聖力か」

「どっちでもいいですよ。どうやって測るんですか?」

「これに手を置いてくれ。ただ置いてるだけでもいいが、できればしっかり手を乗せて、じっとしていることをお勧めする」


 そう言って、ソラさんは机の上に置いてあった水晶玉を指した。

 言われた通りに両手でしっかりと球を掴むと、透明なはずの水晶の中に、ぼんやりと何かが浮かんできた。

 これは…?

 

「何の文字ですか?これ」

「ソラ。お前でも読めないのか?」

「うーん、初めて見る字ですね。そもそも字か、これ?」

「字というよりは、記号のようですね」


 謎の記号にみんながざわついている中、俺だけが妙に落ち着いていた。

 俺にはこれが読めるからだ。


「これは俺の世界の文字ですよ」

「セージの世界の?」

「はい。王子には一度書いて見せたことありますよね?これは漢数字といって、数を表しています」

「ああ、そういえば。この『二』というのは見たことがあるな」


 俺に言われて改めて水晶を覗き込んだ王子が、浮かんでいる数字の中のひとつを指さした。

 他の数字は読めなかったみたいだけど、王子はあの時ちゃんと覚えていてくれたんだな。


「そうです。これは誠二の二で、2です。ソラさん、そこにある紙とペンお借りしていいですか?」

「ああ。ほれ、好きに使ってくれ」

「ありがとうございます。1~10まではこう書きます」


 左手を水晶につけたまま、右手に持ったペンで一、二、三…と順番に漢字を書いていくと、全員が食い入るように見つめてきた。


「これがセージ様の世界の数字ですか…」

「一、二、三は一本ずつ線が増えてるからなんとなく理解できますけど、四からは全く意味がわかりません」

「こんな複雑なのを文字と言うなんて、セージの世界は面白いな」

「この他にも数字を表すものがありますよ」

「えっ?!一種類じゃないんですか?」

「他には…」


 俺の世界の数字に興味を持った王子たちが盛り上がり始め、俺も乗せられて数字について話そうとしたとき、パンパンと手を叩く音がして、音の主に注目が集まった。


「待った。セージの世界の文字や数字については、そのうち詳しく聞かせてもらいたいが、今はそれより先にやることがあるだろ」


 みんな落ち着けとソラさんに冷静に言われて、王子たちだけでなく、俺もハッと我に返った。

 危ない、危うく脱線するところだった。


「すまない、ソラの言う通りだ。セージ頼む」

「あ、はい。これは『八万六千百五十二』、86152です」

「なんだと…?」


 俺が数字を言った瞬間、ソラさんは信じられないという表情で俺と水晶を交互に見た。

 いや、ソラさんだけじゃない。

 王子もリリアナたちも、驚いた顔で俺を見つめている。


「どうかしましたか?」

「どうも何も、今の数字は何だ?!」

「何だって言われても。見えた数字をそのまま言っただけで…」

「5桁だと!?あり得ない!まさか故障…いや、それはないな。しかし、5桁は尋常じゃない」


 そう言いながらも、ソラさんの視線はまだ水晶から離れない。

 そんなにおかしいのか?

 ソラさんの動揺や王子たちの驚きっぷりから察するに、平均値よりかなり高めなのは想像できるけど、そもそも平均がどれくらいかが分からない。

 何かブツブツ言っているソラさんではなく、俺はこっそり王子に聞いてみた。


「あの、すみません。普通はどれくらいなんですか?」

「そうだな…天才と呼ばれる魔導士で3桁。一般の魔導士がせいぜい2桁。4桁もあれば大魔導士だ」

「えっ!それじゃあ俺、天才ってことですか?」

「そんなもんじゃない。伝説レベルだ」

「マジか」


 予想以上にとんでもない数値が出てきちゃったな。

 これってもしかしてチートってやつ?

 うわ、テンション上がるな。


「まあ、聖力が膨大にあっても使いこなせないと意味がないんだがな」

「と、言いますと?」


 いつの間にか復活してたソラさんが、俺と王子の会話に口を挟んできた。


「魔力っていうのは、魔法を使うための燃料みたいなもんだ。だから魔力が多ければ多いほど、それだけ多くの魔法が使えるし、同じ魔法を使っても威力も増す。だが魔力が強すぎると、暴走することがある」

「暴走…制御できなくなるってことですか?」

「そうだ。制御されていない魔法は恐ろしいぞ。俺も若かりし頃、魔法を暴走させてしまったことがある。新しい魔法の試し打ちで制御に失敗して、部屋の中で大爆発したこともあったな」

「うわあ…大惨事ですね」

「部屋の壁が半分くらい吹き飛んでな。瓦礫に埋もれて死ぬかと思ったぜ」


 はははっ、と笑いながら話す内容じゃないと思うんだけど。

 リリアナたちもドン引きしている。

 この人、やっぱり変な人だよな。


「まあ、幸いにも大怪我したヤツはいなかったし、吹き飛んだのは俺の家じゃないから問題はなかったんだが」

「吹き飛んだのは城の一部だから、かなり大問題だと普通は思うはずなんだが?」

「補修の費用は自腹で工面したんだから、許してくださいよ」

「いや、そういう話ではないだろ…」


 王子が呆れたように呟いたけど、ソラさんはまったく気にしていないようだ。

 図太いというか、豪快というか…。

 俺もさすがに引き気味にソラさんを見ていると、急に真面目な顔を向けてきた。


「俺の失敗談は置いといて。魔法には危険も伴うということは分かってもらえたかな?特に聖女様は魔力量が桁違いに多いから、常に意識して心に留めておいてほしい」

「分かりました。肝に命じておきます」


 真剣な表情で言われて、俺も気を引き締めて返事をした。

 聖力量が多い分、暴走すると大変なことになるみたいだし、ちゃんとコントロールできるようにならないと。

 と、そこまで考えて、ふと疑問が浮かび上がった。


「あの、王子」

「なんだ?」

「今更な質問なんですけど、俺が力の使い方を覚えても使うことってあるんですか?」


 俺の役目は魔王と友好関係を築くこと。

 それがどういう感じなのかは分からないけど、俺が与えられた4つの力も使う機会はない気がする。

 だったら別に制御訓練をする必要はないんじゃないか?

 そう思って聞いた俺に、王子はあっさり答えた。


「いや、ある」

「あるんですか?」

「ああ。友好条約を結ぶときに、魔王にこちらに来ていただくのだが、そのときに魔海にを越える必要がある。魔海については覚えているな?」

「こちらと魔国との間にある、魔物が棲む海のことですよね」

「そうだ。魔海の魔物は強いうえに凶暴だ。魔王が安全にその海を渡るために聖女の力が必要になる」

「安全にって、具体的にはどんなことをするんですか?」

「聖女が女神イグラシルから与えらえる力の強さや数には個人差があるが、光の力は必ずある。それを使って魔物の寄り付けない区域を作るんだ」


 なるほど。

 俺の力で安全な道を作り、魔王をお出迎えするってことか。

 結界みたいな感じかな。 


「そしてそれは、聖女の力を魔国に披露する機会にもなる。詳しいことはその日が近づいてから話すが、力の制御だけ気を付ければ難しいことはないはずだ。それに…」


 そこで一度言葉を切った王子は、ニッと悪戯っぽい笑みを口元に浮かべた。


「それに?」

「せっかく与えられた聖女の力、使ってみたいだろう?セージは魔法がない世界から来たと言ってたしな」

「うっ…!」


 それは確かに。

 だって、魔法だよ?

 危険もあると聞いても、使えるもんなら使いたいよ。


「制御できるようになれば、光以外にも与えられた力を使えるようになる。力があるのに使わないのは、セージが嫌いな『もったいない』ってやつだぞ?」

「うぅ…」


 王子のニヤニヤ顔が癪にさわるけど、反論できない。

 まあ、ムキになって反論するようなことでもないしと、俺は諦めて小さく息を吐いた。


「まったく…人の気持ちを正確に推測しすぎですよ」


 一応王子をひと睨みしてから、ソラさんに向き直って小さく頭を下げて言った。


「よろしくお願いします。ソラ師匠」

魔力が4桁というのは、現在の魔導士ではソラの他には3人しかいません。

ソラはその中でも、8000を超えていて、5000を超えるのはソラだけです。

実は天才大魔導士だったりしますが、本人はそういう扱いは嫌がります。

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