戦いの火蓋は切られた。
サリリは人間達に色々と質問しながら、並行して解析魔法も使用しているようだ。
魔法少女の天才的な頭脳ってのは伊達じゃないんだな…。
彼女はこの部屋の中央に備え付けられているキーボードを尋常ではない速度で打ち始めると、空中に投影されたディスプレイには意味の分からない文字の羅列が次々と流れていく。
え? あの速度で流れる文字を理解出来てるの?
10分程経過しただろうか…サリリが作業を終えたようで、良い仕事をしたわと額の汗を拭い一息ついている。
要塞外部では、宇宙空間に巨大な次元の裂け目が出現し、そこへ要塞がまるごと吸い込まれていく。
「なんかスゲーな…。それしか言えないや。」
「うん…。」
そうして、超巨大な宇宙機動要塞はこの世界から消失した。
【我こそは…が音声通話を申請してきました。承諾しますか?】
相手からの通話なんて珍しいな…
「許可。」
【我こそは…と通話を開始します。】
「“我こそは…”です。初めまして。」
「“ああああ”です。初めまして。対戦ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ。」
男の声だ。
なんだ、男かよ。
「要塞をどこへやったんですか?」
「えーと、役に立つかと思って貰っちゃいました。」
素直にそう答える。
「…もしかして、普通に何度もあんな感じの事が出来たりします?」
多分出来るよな? 要塞のエネルギーを利用して転移させるってサリリが言ってたし。
「出来そうですね。」
「降参するので、これ以上奪っていくのはやめて下さい。」
ん? 盗られても時間を戻せば良いだけでは?
「時間を巻き戻したら良いんじゃないですか?」
「相手に奪われた場合は、生命体でも物でも時間を戻したところで元には戻らないんです。」
そうだったの? 全然知らなかった……
ランク1,000超えともなれば、色々と知る機会もあったのだろう。
「あっ。これ以上は奪いませんが、貰った要塞は返しませんよ。」
「対戦の結果なので、そこは仕方ないと思ってます。」
なかなか潔い。
どうせ降参してしまうなら相手の戦力がどんなものか聞いてみたい。せっかくのSFっぽい戦力を持ってる相手なんだし。
「戦力ですか? “ああああ”さんが持って行った要塞が最大戦力ですね。正式名称は衛星型宇宙空母補給艦サテライト。全部で30隻あります。」
30隻!?
会話を続けていって判明したのだが、強い魔法使いが相手だと相性が悪いとの事。サリリはピンポイントで相手の天敵みたいな奴だった訳だ。
確かにあんなものが一斉に掛かってきたらと思うと、ダイでも危ういかもしれない。
この人は科学技術だけで対戦相手に勝ってきたらしい。特定の強者という者は存在していないとの事。
元々は一位の奴を倒す為に、戦力を強化中だったそうだ。
「俺もジョーダンさんから一位の奴が悪い奴だって聞いて、戦力強化中だったんですよ。」
「でしたら、サテライトの概要をお伝えしますので役立てて下さい。」
それはありがたい。
衛星型宇宙空母補給艦サテライトは戦艦二千隻、補給艦と工作艦百隻づつを格納しており、内部には建造ドッグが備え付けてある。
基本的には全てオートメーション化されており、人間が目標設定するだけで勝手にどこからか物資を集めて足りなくなった艦の補充をしてくれるらしい。
そして肝心の強さだが、万全の状態なら存在強度16,000,000の相手と戦えるのだそう。
サリリは本当に相性が良いだけらしかった。
そもそもサテライトを相手にするなら宇宙空間で活動できる事が前提になるので、宇宙空間で活動できない生命体相手だと地上に向けてエネルギー波を撃ちまくれば勝てるもんな。
ランク1,000超えの科学技術は伊達ではないようだ。
問題はデカすぎて相手の世界へ侵入させる事が出来ず、防衛戦しか選択肢が無い事…だが、それに関してはサリリがいれば解決出来そうなので、俺にとっては問題にはならない。
【我こそは…が降参しました。勝利報酬として100,000,000,000WPが与えられます。
あなたは創造神ランクが218になりました。おめでとうございます。
格上討伐報酬として100万上げる君を500個進呈します。】
俺の勘は正しかった。貰ったWPの桁が凄い。しかも100万上げる君だってよ。
効果は名前のまんま、存在強度を100万上げてくれるアイテムだ。
見た目はシメジの形をしたチョコレート。
“シメジの木”と“カズノコの海”で喧嘩になって、年間の負傷者数が百万人を超えるお菓子と同じ姿をしている。
「久満子ちゃんはシメジの木とカズノコの海どっち?」
「私はカズノコの海かな~。」
え? 何言ってんの?
「普通シメジでしょ。」
彼女は手で口を押え、信じられない…と驚いた表情をする。
「大五郎君こそ何言ってるの? その冗談面白くないよ?」
「いやいや…シメジでしょ。政治で言えば与党。カズノコなんて批判ばかりで、国会の進行を妨げるどっかの野党みたいなもんさ。」
「…大五郎君。」
俺を見る彼女の視線は、かつてない程冷たかった。
なんだよ。




