#2
これを人間のサイズで例えるならバランスボールを担ぎ直すような状態だ。この際にもし、1mmでも傾きがズレるとポールシフトが起きてしまうので、地球の回転軸の位置が変わらないように、慎重に体を移動させた。
「磁場が逆転しないように持ち替えるのも大変なのよ~? あぁ、肩が凝るわ~。出来るなら石になっちゃいたいぐらいよ」
「重要な役割ねぇ。俺としちゃあ、あらかたの物を分解出来るイブキの能力が羨ましいぜ」
「私達にはそれぞれ役割を持って生み出されたのよ。グレンの能力も大事な役割よ」
「俺の能力なんて大気圏突入時の燃焼力にも及ばねぇ。大気圏サマがあれば、俺なんて必要ないと思うんだがね」
国際ガイドラインに人工衛星を処理する方法の一つとして、大気圏に再突入させて燃焼、滅却させる方法がある。その時に燃焼しきれなかった燃えカスの一部は南太平洋の『ポイント・ネモ』に落とす。別名『宇宙機の墓場』と呼ばれ、数えきれない程多くの残骸が海中に積もっている。
「もぉ~、そんなに卑屈にならないの! グレンちゃんの力だって立派じゃない」
「それに、ポイント・ネモに落とすのが問題だから、グレンの能力が必要になってくるのよ」
ぶっきらぼうで投げやりな態度でデブリの燃焼作業を行うグレンに、アトラスとイブキがグレンの能力に誇りを持つように諭した。
「それにアンタ達が来てくれて、こうやって毎日おしゃべり出来て、アタシは嬉しいわ。ずっとアタシ一人で・・・・・・」
『緊急事態発生! 緊急事態発生! 巨大な飛行物体が地球に接近中!』
アトラスが二体に話し掛けている最中、イブキとグレンの通信装置にJACAからの緊急通信が入る。内容は直径百メートル級の隕石が地球に向かって接近しているというものだった。もし、これが日本に落ちれば東京が一瞬で壊滅するほどの威力だ。
『イブキβ、グレンβに告ぐ。至急、隕石を軌道から逸らし、地球への衝突を阻止せよ』
「なんですって!? 解析開始!」
「どうしたの!? 何が起こってるの!?」
JACAからの伝令を受けた二体が即座に飛行物体についての解析を行う。アトラスは突然の緊急事態に慌てふためく。
「・・・・・・解析完了。地球に隕石が接近している。衝突まで残り三時間ってところだ」
解析が完了したグレンが冷静沈着なトーンでアトラスに隕石の接近を告げる。
「なんですって!? このまま衝突したらポールシフトが起きちゃうじゃない!」
もし、ポールシフトが起きてしまうと『宇宙線』という宇宙からの有害なエネルギーの粒子の直撃を防ぐ力が弱まってしまう。宇宙線が地球に直撃すると地球の生物や通信施設、電力施設などに悪影響が出る可能性があるのだ。




