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変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第四章 王都学園編 〜それぞれの思惑〜
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第五十八話 紫色のアキレイギア




 「そろそろ時間のようだ」

 学園の中央西にある闘技場の最上部から決闘場所(ステージ)を見下ろすエヴェック。

 その隣には白髪に白い髭を伸ばした男がもう一人いた。

 「とうとうこの日がやってきたのだな。およそ1000年続けてきた我々人類の平和がここから崩れ去ることになろうとは、今日この武術祭を以ってな」

 「そう悲しそうな顔をしないでほしいぞ我が友よ。エールトヌス王国18代目の国王として、我と共にこの歴史の転換期を見届けるためここにやって来たのだろう?」

 「ああ、そうだな。今日私はこれから世界を救う事になるだろう英雄達の勇姿をこの目で見に来たのだ。どうやら天も、今日という日を祝福してくれているようだ」

 エールトヌスは空を見上げた。

 そこには雲一つない晴天が国を守るようにして広がっていた。

 そこでエヴェックは何か思い出したかのように尋ねた。

 「天と言えば、あれから接触は無いのか?」

 「今日まで()()()が夢に出てくる事は無かった。あの晩の1回きりだ」

 「その時汝に、この武術祭でリーベストの力を周知させるよう伝えたのだったな。おかげで、ルールを変更しなければいけなかったし、貴族達の対応も面倒だった」

 「手間をかけさした事はすまんと思っている」

 「なに、軽い冗談だ。実際、魔族達の動きが活発化し何か対策を施さねばと思っていた。だからタイミング的にも都合が良かった、ちょうどリーベスト達も奴らとの戦いを経験している事だ、奴らと戦える実力が果たして今の普通の生徒だとどのくらいの差があるか比較しやすい」

 「今はまだ力を蓄える時、あの時もそう言われたからな。まだ少年のあの子達に背負わせるには重たいが、それでも必ず期待に応えてくれるはずだ。何せ、『世界を均す者(シャイデマン)』が認めた者達だからな」

 「そんな少年達を支えるのが我達の責務だ、その為にもこの本選を共に見届けようではないか」

 

 

 「定刻だ、お前達、そろそろ準備は良いか?」

 ソージュ先生が時計を確認し、教室にいる俺達に声をかけた。

 「はい、いつでも大丈夫です」

 俺がそう言うと、フランメもセリウスも続けて首肯した。

 それを確認したソージュ先生は、目を軽く閉じ口角を少し上げた。

 「では会場に向かうぞ」

 

 会場は前世で言うサッカースタジアムと同じ規模の広さであった。

 観客席はそこまで高くないが、広さは十分すぎるほどだった。

 その観客席の最上部に位置するガラス張りになっている部屋には、多くの来賓客と思われる正装をした人たちが集まっていた。

 「す、すごい人だな」

 セリウスが決闘場所に向かう通路の出口の陰から覗いて声を上げた。

 「まあ今回は特に多いんじゃないか? 学園側も色々手が込んだ事しているみたいだしさ」

 学園内はさながら祭りのような飾り付けがされており、この闘技場には出店といった物もあるようで人々が数多く来場し賑わっている。

 去年までの武術祭は、この広い闘技場で参加生徒とそれを見に来た来賓だけだったので、ここまでの盛り上がりでは無かったらしい。

 それ故、この闘技場は敷地の無駄使いとして揶揄されて来た経歴を持っている。

 だが、今年の武術祭で初めてこの闘技場は人で溢れる事となった。

 「それにしても、よくもまあここまで人が集まったものだ」

 俺は観客席を眺めながら一言漏らした。

 「こんなに大勢の前で戦う機会は無かったもんね。ちょっとワクワクするよね」

 フランメは目を輝かせ興奮気味の様子だ。

 その様子にセリウスは若干引き気味の顔をした。

 彼は緊張しているからか、体調が悪いからかは分からないが顔色があまり優れていない。

 「セリウス、大丈夫か?」

 心配だったので声をかけてみたが、「ああ、大丈夫だ」と言うのだった。 

 本当に大丈夫かな?

 心配だ。

 

 「それでは、只今より武術祭本戦を開始いたします! 本選に出場する生徒はこの方達です!!」

 会場中にそのアナウンスが響き渡り、会場の熱気は上がっていく。

 そして俺達は決闘場所へと歩を進めた。

 視界が開けると共に耳に響く歓声がそこを包んでいた。

 その光景に圧倒され、二人は開いた口が塞がらない。

 俺もその光景に血が騒ぐ気がした。

 「素晴らしい光景だ、貴君もそうは思わんかね?」 

 後ろから不意に声が聞こえたので振り返ると、俺の後ろにクロミア先輩が歩いていた。

 声をかけられるまで彼女の気配をあまり感じなかった俺は、あのロリババアが言っていた事を思い出していた。

 彼女の実力はこの参加者達の中でもトップクラスだと言う事を。

 「そうですね、これほどまで盛り上がるなら学園側も今後継続してやれば良いと思いますけどね」

 「今年はイレギュラーな年だからな、次がどうなるかは此方も分からない。だが、確かにこれだけ盛り上がるのなら今年だけで終わりにするのも勿体ない気がするな」

 クロミア先輩は落ち着いていた。

 いや、内心はどうか分からないが少なくとも見た目はいつも通りって感じだ。

 これほどの状況なら、普通誰だって緊張してるはずだがそれを感じられない。

 「クロミア先輩は緊張とかしないんですか?」

 「緊張か、生まれて此の方した事はあまりないな」

 「すごいですね、俺なんて今にもトイレに駆け込みたいくらいですよ」

 「フッ、そう言って油断させようとしても無駄だぞ? 貴君からは不安も焦りも感じれないからな」

 「それは買い被りですよ、本当に緊張しているんですからね」

 「ほう、では開幕式に出ている場合ではないんじゃないか? 早く用を足してくるといい」

 「確かにそれも考えましたが、やはり大舞台の開幕式くらいは参加しないといけないじゃないですか」

 などと二人で対話していたが彼女は揺さぶりにも全く動じてくれなかった。 

 やはり油断ならない人だ。

 

 「ねえ、あの二人何を話しているの?」

 「分からないが、怪しい取引をしているように見えるな」

 俺と先輩がお互いを牽制している頃、セリウスとフランメは俺達を見ながらそんな話をしていた。

 「それにしてもクロミア先輩の実力は全く分からないな。彼女の成績が優秀って事くらいしか情報がないし」

 「ふん、大丈夫よ。私が勝つに決まってるわよ」

 「ああ、だが油断するなよ」

 「分かってるって、私はもう負けないって決めたんだから。例えそれがリーベ相手だったとしても」

 フランメは鋭い目で二人を見ていた。


 「ふぅ、でも戦うからには手加減はしませんよ」

 俺は一息吐き真面目な声でそう口にした。

 「ああ、その時はお互い全力で戦うとしよう」

 「先輩が勝ち進めたら、ですがね」

 「それは此方も同じだ、戦いたければ勝ち続けるしかないのだから。だから、貴君も此方をガッカリさせてくれないでおくれよ」

 「……臨むところですよ」

 俺は笑いながらそう言った。

 それを受け取った彼女は先へと歩み始めた。

 俺もそれに従って前へと進むのだった。


 本選に出場する生徒の紹介が終わり、いよいよ本選が始まる。

 「それでは早速第一試合を始めましょう、第一試合の対戦カードはこの生徒達です!」

 実況が声を上げると、俺の試験番号の札が赤く光っていた。

 「対戦カードが出ました、試験番号が赤く光った生徒は決闘場所に上がってください!」

 

 「良いなぁ、リーベが一番最初かー」

 「頑張って来いよ、リーベスト」

 「ああ、行ってくる」

 三人でグータッチを交わし、俺は決闘場所へと向かった。

 決闘場所には既に対戦相手の人物が上がっていた。

 俺の最初の相手は一学年上の人で、騎士団への入団を希望しているサンセールという人物だった。

 それにしてもまさか第一試合から出番が来るとはな。

 「まったく、色々とやってくれるぜ」

 俺は観客席最上部のガラス張りの部屋を見つめた。

 そこには、こちらを見下ろすエヴェックの姿が見えた。

 彼としばらく目が合った後、フイっと背を向け歩いて行った。

 あの人の言いたい事は分かっている。

 この世界の常識に風穴を開けてみせよ、と。

 これはその為の戦いだ。

 だからしっかり観ていてもらおうではないか。

 「それでは武術祭本選のルールを説明する。生徒はこの決闘場所からの離脱、及び気絶した時のみ勝敗を決する。魔法や武器の使用は可能だが、対戦相手を殺したりするのは無しだ。制限時間はもちろん無い、勝敗が決するまで戦ってもらう」

 審判役のリューグナー先生が説明する。

 それを聞いた俺とサンセールは頷く。

 「では、お互いの健闘を祈る。それでは試合開始!!」

 上にかざした手を振り下げ、開戦の合図をかける。

 合図と同時に歓声が闘技場に響いた。

 

 開戦と同時に相手のサンセールが突っ込んできた。

 様子見など無く全速で接近を試みる。

 その一連の動きには迷いが感じられなかった。

 彼はどうやら俺の事を調べてきたようで、魔法使い相手には定石な戦略且つさらに自分が得意な近接戦闘に持ち込もうとしてきた。

 俺は腰に携えていた魔刀を抜き、相手の攻撃を防ぐ。

 ガキンッという甲高い音がこの闘技場に響き渡った。

 受け止めた刀からは鈍い衝撃が身体に伝わってくる。

 俺は一旦距離を取ろうと後ろに引くが、彼は追撃を止めようとしなかった。

 俺が後ろに引くよりも早く距離を詰める。

 再び武器と武器が重なり、衝撃が辺りに広がる。

 

 「魔法使い相手に簡単に距離を取らせると思ったか?」

 「へえ、随分と俺の事を研究してるみたいで光栄ですね」

 「当然だ、お前を含めあの5人は先の戦いで既に有名人だからな。今や学園内でお前達を知らない者はいない」

 彼の力に押し返され後ろに飛ばされる。

 いくら俺の実力が知られているとは言え、彼の剣の実力もそれなりのものだ。

 彼の技術はまだまだ荒っぽいが、一撃一撃が重く鋭い。

 今まではじっくり構えて対応してきたが、今回はどうやらその時間を与えてはくれない。

 息を吐く暇もなく彼は攻撃を繰り出してきた。

 (意外と厄介だな)

 片手が剣で塞がっている以上もう片方で魔法を放つ必要があるのだが、そのタイミングがなかなか掴めずにいた。

 彼の剣の重さに対抗するためにはどうしても両手を使う必要がある。

 なぜなら俺は身体強化魔法が苦手だからだ。

 フランメみたく常時の数倍ほど身体を強化できないので、どうしても単純なパワー勝負には弱いのだ。

 リヒャルトに仕込まれた柔剣流もそこそこだからか、上手く受け流すには力に頼ってしまう癖がある。

 それを頭では理解していても身体では反応しきれない。

 ずば抜けた剣術をマスター出来ていればと心の中で舌打ちをした。

 「どうした、ずっと受けるだけでは私には勝てないぞ! お前の力はそんなものか!」

 「…………っ!」

 

 「あーもう、何してるのよリーベは!!」

 「いや、魔法の隙を与えないよううまく立ち回っている。あのサンセールと言う生徒はリーベストの間合いをちゃんと理解している」

 「だからってこのままやられるわけにもいかないのに——早く何とかしなさいよもう!」

 戦いの様子を見守っているフランメは、いつも通り戦えていないリーベストを見て苛立っている。

 その怒りは今にも壁を殴って破壊しそうなほどだ。

 それに対してセリウスはリーベストの武器に目を向けていた。

 「リーベストのあの剣、今までに見たことが無いような気がするな……」

 顔に手を当て思案していた。

 すると次の瞬間、彼の持っていた武器が光を帯び始める。

 やがて二人はその光景に目を見開くのだった。


 「ふぅん!!」

 「チッ」

 距離を取ろうと試みるも、彼はそれを許してはくれなかった。

 それに驚いたことではあるが、彼は持久力がずば抜けている。

 ここまで攻撃を休まず続けているが、一向に動きが鈍らない。

 適当に受け流し続ければやがて疲れが出てくるだろうと思っていたが、どうやらその見立ては甘かったようだ。

 気付けば決闘場所の端まで来ていた。

 これ以上攻撃を受け続ければ場外になる。

 (まさか、この先輩がここまでやれるなんてな)

 サンセールの想像以上の猛攻に後手に回っていたが、それもそろそろ終わりにしないといい加減色々な人達から怒られてしまいそうだ。

 本当は二人の対戦まで取っておきたかったが今のままではそうは言ってられまい。

 「ふん、噂に聞いていた人物がこれまでとは、期待が外れたな」

 サンセールは止めの一撃を繰り出そうと一歩踏み出した。

 「これで終わりだ!」

 そして剣を振りかざした。


 「……はあ、仕方ないか——ここからは全力だ」

 俺はポツリと独り言ち、練っていた魔力を刀に流した。

 すると、刀は魔力を帯び淡い光を発する。

 「風魔法 『艫の風神(リプス・テンペスタ)』」

 魔法を唱え、剣を振るうと同時に風が勢いよくそれから放たれた。

 「……っ!! な、何ィ!?」

 攻撃をしようと近寄ってきたサンセールは、その突風を間近に受け吹き飛ばされる。

 何が起こったのか分からなかったが、彼は地面に着地と同時に剣を突き刺し勢いを殺して膝をついた。

 そして追撃に備える為慌てて立ち上がり顔を上げた。

 すると目の前に見えるのは突風を纏っている一人の男だった。

 

 「ほう」

 その光景に声をあげる者。

 「フッ」

 その光景に期待の眼差しを向ける者。

 「あ、あれは!?」

 「……っ、本当隠し事が好きなんだからアイツ!」

 驚きと興奮を隠しきれない者。

 「な、何だ今のは!?」

 会場中がどよめきを起こしていた。

 「今のは一体?」

 「あの武器は何だ?」

 「さっき詠唱していなかったよな??」

 「何だあの子は!?」

 あちらこちらから疑問の声が上がっていた。

 「これじゃパニックだな」

 エヴェックは笑みをこぼしながらそう告げる。

 「あれが噂のリーベストとやらか。無詠唱魔法に謎の武器を使うとは、確かに他同年代の者達とは少し違うようだな」

 「だが、あれが奴の実力ではない。恐らくこんなものでは無いはずだ」

 「ふむ、まだ何か彼には秘密があるというのか?」

 「それは見てのお楽しみと言うやつだ」

 

 「一体何が起こった?」

 よろめきながらも立ち上がったサンセールだが、何が起こったのか分かっていなかった。

 警戒を強めた事でさっきまでの勢いは衰え、距離を保ったまま動けずにいる。

 だが、そこにいては俺の間合いだ。

 俺はマナを練り直し、刀を持っている腕と逆の腕から魔法を発動する。

 「氷魔法 吹雪の投槍(ブリザード・ランス)

 魔力をギリギリまで高め、氷の槍を射出する。

 魔法の速度にマナのリソースを割き、殺さないように調節された魔法はあっという間にサンセールのいる所に到達する。

 「……くっ?!」

 サンセールは何とか反応し、魔法を受け流そうとしたが弾かれてしまう。

 「しまっ……!」 

 その隙を見逃さず、俺は一気に距離を詰め剣を振るった。

 「リプス・テンペスタ」

 魔法を唱えると再び突風が吹き荒れ、その風をもろに受けたサンセールは決闘場所からそのまま場外へと吹き飛ばされた。

 その様子を確認し、審判のリューグナー先生が手を挙げた。

 「それまで! サンせールの場外により、勝者はリーベスト・ドミニアンとする!」

 一瞬静まり返った後、会場は大歓声に包まれた。

 俺は先輩の所へ向かい、腕を抱えて彼を起こした。

 「ありがとうございました先輩」

 「くそ、やはり手強いな。油断していたわけではなかったが私の力負けだ」

 そしてお互い一礼をし決闘場所から降りて行った。

 控え室に向かっていると後ろから強い衝撃が背中を走った。

 「イタタ、そんな強く叩く必要なんてあったのか?」

 「さすがねリーベ! 最初は見てて焦ったかったけど、魔法を使えば楽勝ね。なんでさっさと使わなかったのよ?」

 「あれは本来お前達との対戦まで見せる気はなかったんだよ。まあ、結局使うハメになったけどな」

 「俺たちに内緒であんな切り札を持っていたなんて正直驚いたよ」

 「そうよ! 何よあの武器! 剣術と魔法の組み合わせなんてずるいでしょ!」

 「これはマッヘン兄さんが作ってくれた試作品だよ。思った以上に使い勝手が良かったし使って確認できた事は収穫だったな」

 「え、あの引きこもりのお兄さんってそんな凄い人だったんだ」

 「引きこもりは確かにそうだけどその言い方は酷いんじゃないか?」

 一応フランメにとってもお兄さんだし。

 だが彼女はそんな事気にしておらず、意外といった目でこの魔刀を見ていた。

 セリウスも興味深そうに魔刀を見つめている。

 そうこうしていると、魔石を通じて実況の人の声が聞こえてきた。

 『次の対戦カードはこちらです!』

 声の後しばらくすると、フランメの番号札が赤く光っていた。

 「……っ!! 次は私の番ね!」

 「頑張れよフランメ!」

 「当然よ! とっとと勝ってここに帰ってくるわ!」

 「あまり油断するなよ。向こうは相当俺達の事研究しているはずだ」

 「大丈夫よ、そんなもの私には関係ないんだから」

 そう言って拳を向けてきた。

 その瞳には油断は感じられない。

 俺はそんな彼女の拳に自分の拳をぶつけた。

 「じゃあ頑張ってこいよ」

 「ええ、行ってくるわ!」



 「さすがリーベスト、戦い方を研究されようが物ともしないあの戦いぶりには安定感があるね」

 会場の警備に当たっているサクレは試合を見終え、そう呟いた。

 「そうでしょうか、最初の戦いぶりは少しらしさがなかったように思ったのですが」

 エクレレは少し不満な表情でサクレを見た。

 「確かに最初は相手の出方を伺った分、後手に回っていたけど立ち回り的には余裕を感じられたよ。それもあの武器が関係しているはずだと思うけどね」

 「あれは一体何だったんでしょうか? 魔剣、とは少し違うような……」

 「あの武器の事は一言も教えてくれませんでしたね。まあ、普段から使っている『未来視』を制限しているのも最初の出方に影響されていたのでは?」

 「なるほど、その考えもあると思うよシュヴァリエ」

 サクレにそう言われシュヴァリエは少し嬉しそうにした。

 「さて、君はどう思ったかな?」

 サクレは一人の獣人の少年に話を振る。

 「別に何も」

 「もう少しまともな意見はありませんの、サディク?」

 素っ気ない回答にエクレレは溜め息を吐いた。

 「別にあれくらいならリーベストはなんて事はないだろうし」

 「それは確かにそうですが……」

 「でも、気にならないところが無かったと言えばそんな事もないけど」

 「へぇ、それは興味があるね」

 サクレは微笑みながらサディクを見た。

 その顔にサディクは少し身構えた。

 それを窘めようとしたシュヴァリエをサクレが腕で制し、サディクに向き直った。

 「どうして君はそう思ったんだい?」

 「それは————……!?」

 サディクは何かを言いかけようとして言葉を飲み込んだ。

 (この匂いは?!)

 すぐに警戒態勢を取った。

 その様子にサクレ達も身構える。

 「どうした?」

 「いる、この近くに」

 注意深く周囲を探っていき、その匂いのする方へ走りだした。

 「やはり忍び込んでいたんだな、魔族が」

 それに続いてサクレ達も後に続いた。


  


 

 

   

最新話遅くなりましたがよろしくお願いします。

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