第五十二話 シャクヤクに乗せて
グレンツェと別れた俺は、そのまま学園に真っすぐ帰っていた。
きちんと話をしないとダメ、とハッキリ言われたので、ここはきちんとお互いの思っている事を話すべきだろう。
「それにしても、サディクは今どこにいるんだろうな」
学園内を探し回ったが見つからなかったので、どこか遠くに行ったのかもしれない。
とは言っても、人探しの為に時間魔法を使うのも勿体ない気がしていた。
目ぼしい場所とかが分かっていれば良いのだが、何の手がかりも無しに探すのは体力を結構使う。
だから、頑張って自分の足で探すしかない。
最悪、明日学園で会えるだろうしな。
そう思っていた時だった。
目の前の空から黒い影が降ってきた。
そいつは、肩で息をしながら膝に手をついて俺の方を見た。
「や、やあ」
「お前、ずいぶん派手な登場だな」
まだ夜の7時くらいで、ここは王都の6本ある大通りのうちの一つなので、通りにはたくさんの人がいる。
そんな中上空から突然現れたら、誰だってびっくりするものだ。
辺りはザワザワとしている。
「……っっ」
ようやく自分の行動が目立つ事だと気付いたのか、少し顔を赤らめた。
「とりあえずここは目立つから、学園に戻ろっか」
「うん」
学園への帰り道は二人とも黙ったままだった。
あれだけ急いでいたから何か話があるのかと思っていたが、ずっと黙っている。
いや、ここは俺から話を切り出さないと意味がないじゃないか。
「よく俺の居場所が分かったな」
「王女にあの辺の定食屋でご飯を食べているはずだからって聞いたから。あとは匂いを辿って見つけたんだ」
「そうか」
「うん」
そして、またすぐに沈黙が訪れる。
えーっと、何から話そうか。
こういう時ってどう話を切り出せば良いか色々考えてしまうんだよな。
「「あのさ」」
二人の声が重なった。
「……っ!?」
「……ごめん、先に良いよ」
「え? あ、ああ、えっと……」
サディクも少しテンパっているように見える。
そう言えば、エクレレに俺の居場所を聞いたって言ってたよな。
という事は、サディクはさっきエクレレと会ってたって事か。
「さっき、エクレレに俺の居場所を教えてもらったって言ってたけど、他にエクレレとは何を話してたんだ?」
なかなか話してこようとしないので、俺から話題を振る事にした。
「えっと、その、リーベストは僕の事どう思っているんだろうって——あ、いや、これは別にそういうのじゃなくて、その…………」
意味深な言い方だったと気づき、慌てて言葉を正そうとしたが言葉が出てこないようだ。
「言い方がな、俺はそういうのに興味は無いぞ」
「だから違うって!!」
俺は少しからかうのだった。
すると、顔を赤く染めながら大きな声で反論した。
その姿が、ちゃんと年相応の少年そのものだった。
いつもの子供離れした落ち着きからは乖離していたので、思わず笑ってしまった。
「ははは、そんな事分かってるよ。少しからかっただけさ」
「……こっちは真面目に話してるんだけど」
ムスッと顰めっ面をした。
「悪い悪い、それで、何でそのような話になったんだ?」
「何でって、リーベストが何も言ってくれないからだろ。いきなり学園に通えって言ってさ、学園に入ったら今度は何も言わずにただ黙って何もしてこないしさ、君は僕に何をしてほしいのか分からないから困ってるんだよ」
不満がその表情から滲み出ていた。
やっぱりグレンツェが言った通り、俺がちゃんと面倒を見てこなかったから、サディクがこんな気持ちになっていたんだな。
少し離れた所から見守るつもりだったけど、これじゃ本末転倒だ。
一人で歩けるようになるまで、俺がしっかり支えてやらないとダメだ。
「それについて話す前に一つだけいいか?」
「なに?」
「ごめん、サディク」
俺は正直に頭を下げた。
「え、何?? 急にどうしたの?」
「俺の言葉が足らないばっかりに、お前を不安な気持ちにさせてしまって。俺は、お前が自立できるように、あえて何も言わないでいた。自分でやりたい事を見つけ、何が正しくて何が間違いかを、少しずつでも良いから分かってほしいって思ってたんだ。でもそれは、俺の単なる自己中心的な思いやりだった事にさっき気付かされたんだ。誰もが俺のような考えで生きてるわけじゃないし、人それぞれの考えがあって生きている。それを俺は自分の基準でお前に押し付け、お前なら大丈夫だろうって、自分で見つけてくれるだろうって勝手に勘違いしてたんだ。そんな事、俺が決める事じゃなくて、サディク自身が決める事なのに。お前はずっとサインを出していたのに、それを俺は他人に頼ってしまう甘えになると思って何も言わなかった。本当なら殴られててもおかしくないくらいだ、本当にごめんな」
今までの懺悔の気持ちを込めて。
その姿にサディクは驚いていた。
「そ、そんなに頭を下げなくてもいいって!」
慌てて俺の下げた頭を元に戻そうとした。
けど、こうでもしないと申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「これが俺なりの誠意なんだ」
そう言うと、サディクは動きを止めた。
その後、しばらく俺は頭を下げ続けた。
「もう良いよ、良いから頭を上げて」
そう言われ、俺は頭を上げた。
「リーベストが何も言ってくれなかった事は、確かに不安だったし、少し寂しかった。闇を生きてきた僕には、今のこの生活は眩しすぎるから。だからどうしたら良いか分からなかったんだ、今まで見てきた世界と違う景色の今をどう生きていけば良いのか。だから、さっき同じクラスのやつに呼び出された時に、思わず手が出そうになった。不安をぶつけるために、今までの忠告を無視して」
「そんな事があったのか、どうりで見つからなかったわけだ」
「そうなんだ。その時、あの王女と付き添いの男の奴が現れてくれなきゃ、手が出てしまっただろうね。そうなれば、君との言いつけを破る事になった、だから僕の方こそ謝らなきゃいけないよ」
そう言うと、サディクは照れ臭そうに首を下に向けた。
「その、ごめん」
「別に気にするなよ、エクレレが止めてくれて手を出さなかったんだし、それを踏まえた今なんだろ」
「うん、そうだね」
しばらくの沈黙が流れる。
その空間を初夏の暖かい風が吹き抜けていく。
「それで、僕はどうしたら良いのかな?」
上を見ながらサディクはつぶやいた。
天にいるかは分からない、ある男を思って。
「それは俺が決める事じゃない」
そう、サディクの生き方はサディクにしか決めれない。
俺が口を出す事じゃない。
でも、それが見つけられるよう俺が支えてやれば良いんだ。
「でも、俺はあの男が言っていたように過ごしてほしいと思っている。お前を思ってくれる奴らと共に笑って楽しく生きてほしいって。それが俺らだったら、嬉しいなってそう思ってるよ」
「…………っ」
サディクは呆気にとられていた。
「まあ、あくまで俺の理想だけどさ」
俺はそう言って笑った。
あくまでこれは俺の理想みたいなものだから。
一緒にバカやって過ごして、毎日がそれなりに楽しく過ごせればいい。
どんな過去があったとしても、生きているのは今だから。
前を向いて今を歩いて行こう、そう励ましたかった。
「……正直、リーダーがいなくなって落ち込んでいた時、リーベストやあいつらが僕に優しくしてくれた事がちょっと嬉しかった。今までこうやって普通の生活をした事がなかったし、すごく新鮮だった。フランメとセリウス、はちょっとうるさいけど、でも、案外この生活も悪くないんじゃないかって思うんだ」
「そっか」
「今までの生活も別に楽しくなかったわけじゃないけど、でも今の楽しさとは少し違うんだ。今の方が温かいっていうか、ほっとするような、少し懐かしい気分になれるんだ」
「それは小さい頃、獣人の村に住んでいた時の事か?」
「うん、そう。あの時の家族の温もりに少し似ている気がした。だから、今の生活は嫌いじゃないよ」
そう言い、サディクはニッと笑った。
良かった、ちゃんと立ち直ってくれたみたいだ。
『リーベの思ってる事を話せば、多分大丈夫だよ』
本当にグレンツェの言った通りだった。
今度お礼に何か持っていかないといけないな。
「よし、じゃあそろそろ部屋に戻って寝るか。明日も朝早いし」
「朝早いって、いつも何時に起きてるのさ?」
「いつも5時には起きてるぞ」
「え、早っ!?」
「毎朝トレーニングしてるんだよ、剣術はまだまだ未熟だし、その為の体力作りでランニングもしてるし」
「だからって毎朝そんなに早く起きてるの?」
「そうだよ、で、その後は魔法の特訓かな」
「それ以上強くなってどうするのさ!」
「これでもまだまだ届かないんだよ、あいつら魔族、特に実力を持った幹部達には」
その言葉にサディクはハッとした。
僕も、その身を以って魔族の強さを実感している。
自分で動くよりも圧倒的な力をあいつは引き出していた。
その悔しさに、思わず拳をギュッと握った。
「だから、これだけじゃまだ足りないんだ。もっと強くならないと、本当に守りたい時に守れない事が一番辛いからな」
「……っ!」
リーベストは既に奴らと渡り合える強さがあるにも関わらず、未だに自分を鍛え続けている。
もしこのまま、リーベスト達と共に行動をし、一緒に奴らと戦うとなった時に自分は役に立てるのだろうか。
僕はそう思った。
「これはあくまで自己満足かもしれないが、それでも俺は奴らとの戦いに備えて準備するだけだ」
その姿は、年相応の少年の面影が無かった。
幾度となく挫折を味わってきた、そんな風格が漂っている。
(この気の強さがリーベストの強さの原動力なんだ)
以前は、ただ運に恵まれただけの奴だと思っていたが、実際敵として戦い、その底力を目の当たりにしてその強さを実感したつもりだったが、今改めて分かった気がした。
彼は自分の実力に自惚れる事なくひたすらに、ただ黙々と努力する人間なんだと。
「リーベストが何であいつら魔族に勝てたか分かった気がするよ。僕も君のようになれるかな?」
守りたい時に守れない、その言葉は痛いくらい自分に刺さった。
あの時、自分の実力が無かったせいで大事な人を亡くしてしまった。
あの時、自分に実力が無かったから大事な故郷を失ってしまった。
今まで自分が弱いせいで、色々失ってしまったんだ。
悔しさが込み上げてくる。
「だから言っただろう? それを決めるのは俺じゃないって。強くなりたいなら、そうすればいい」
彼はまっすぐな目を向けていた。
(そうだ、僕は強くなりたい! もう誰も失わないで済むくらいに!)
サディクはそう決意した。
「リーベスト、僕、やりたい事が分かったよ」
サディクは決意に満ちた目をしていた。
「ようやく決めたんだな」
「うん、僕は強くなる。もう誰も自分の大切な人を失わないで済むように、大切な人を守れるようになりたい!」
彼は完全に立ち直っていた。
それに、やりたい事をしっかり見つけれたようだ。
「その為にはしっかりと学園生活を送るんだぞ」
「う、それは、多分大丈夫」
自信がなさそうに肩を落とした。
さっきの勢いは何だったのだろうか。
「まあ、強くなりたいんだったら、毎朝俺達みんなで特訓してるから一緒にやろうぜ」
「ああ!」
とりあえずこれにて一件落着といった所か。
一時はどうなるかと思ったが、無事何とかなりそうだ。
けど、クロミア先輩には武術祭に出ると言ったしな。
それに、どうせ今更断ったとしても、何かしらの理由をつけて参加させたがるだろうな。
(明日ソージュ先生に伝えるか)
こうして長い一日が終わったのだった。
次の日の朝。
いつも通り実技棟へ向かうと、そこには既にエクレレとシュヴァリエがいた。
二人とも今日は珍しく早い。
「おはよう、今日は二人とも早いんだな」
「おはようございます、リーベスト」
「ああ、おはよう」
何か言いたそうな顔をしているシュヴァリエ。
すると、エクレレが俺の方に歩いてきた。
「リーベスト、ちょっとよろしいですか?」
「ああ、別に構わないが」
俺がそう言うと、彼女は凄んだ顔になった。
「貴方、サディクに対して冷たくしすぎじゃないですか?」
「え?」
「え? じゃありません! 昨日わたくしが止めたから良かったものの、彼は危うくクラスの人に暴力を振るう所でしたのよ! 貴方がきちんと彼と話をしないから、彼の不満も限界なんですよ!」
「その事についてだけど、ちょっと俺にも言いたい事があってだな——」
「どうせ、自分がとやかく言う事じゃないから彼のやりたいように任せてたとか、そう言う事でしょう? この際だからハッキリ言いますが、貴方はもう少し人と会話をきちんとするべきです!」
「はい、すみませんでした」
「おはよう、って何してるんだ?」
「見れば分かるだろう、説教だ」
「ああ、なるほど」
「おはよう、あんたら早いわね。で、あれは何なの?」
「「説教だ」」
「あー、良い事ね」
みんなすぐに納得し、そのやり取りを見ていた。
それからしばらく俺は、エクレレに説教され、ただ頷く事しかできなかった。
サディクは言われた通り、朝実技棟へとやってきた。
そこには、正座で座っている一人の少年と、それを取り囲む四人がいた。
もう一人は何が起きているのか分かっておらず、ポカンとしている。
すると、少年を取り囲んでいる四人のうちの一人がサディクに気付いた。
「あ、サディク、大丈夫なのか?」
セリウスが彼に気づき、その言葉に他の者達が気づき、みんなしてサディクの方に駆け寄って行った。
「もう大丈夫ですよ、彼にきつく説教しておいたので安心してください」
エクレレはスッキリとした表情だった。
「えーっと」
「そうよ、もしまだ悩んでるなら解決してあげるわよ、こいつが」
そう言ってフランメはエクレレを指さした。
「貴女も少しは役に立ったらどうです?」
「私はそういうの得意じゃないから」
「はぁ、まったく貴女という方は」
「何よ、文句ある?」
「二人とも、今はそんな事してる場合じゃないだろ」
サディクは何が起こっているのか、まだ理解できていなかった。
「その、みんな、何をしてるの?」
「見て分かるだろう、この口下手な男の説教だ。ほら、不満をぶつけるなら今のうちだぞ」
みんなサディクの事を心配していた。
その事が次第に分かり、何だか嬉しい気持ちになった。
やっぱり今の自分は、この場所が気に入ってるみたいだ。
「いや、リーベストとは昨日ちゃんと話したからもう大丈夫だよ」
「ほら、だから言っただろう、昨日二人でちゃんと話したって」
俺はみんなに話を聞いてもらえず、俺に対する日頃の不満をぶつけられていた。
「本当に大丈夫でしたか? 上手いこと騙されてないですか?」
「騙される? うん、それは大丈夫だけど、なんて言うかリーベストってこんなに信用されてないんだね」
「リーベは私たちの事も平気で騙すから、疑って当然よ」
みんな訝しがる顔で俺の事を見ていた。
本当、辛いことだ。
けど、昨日の事はみんなにも話さないといけないからな。
俺はそう言って彼をポンとみんなの前に押し出した。
「まあ、ちゃんと二人で話したから、みんなにもサディクの今後について聞いてあげてほしい」
「え、ちょっ」
「いいからいいから」
所謂決意表明というやつだな。
みんなの前で口に出す事により、自分自身も身が引き締まるからこれは大事なことである。
「うー、えっと——今まで僕の事を気にかけてくれてありがとう。まだまだ慣れない事があるし、迷惑をかけるかもしれないけど、よろしく」
みんなは温かい目でサディクを見ていた。
それが照れ臭かったのか、顔が赤くなっている。
「ほら、最後に昨日話した事をみんなに伝えてあげな」
俺はそう言って肩を優しく叩いた。
サディクは頭を縦に振り、力強く宣言する。
「僕は今まで、色々な人を失ってきた。もうあんな思いはしたくない、だからもっと強くなりたい。そのために、ここでみんなと一緒に力をつけて行けたらと思ってる。もう誰にも、僕の仲間を失わせないために」
みんなが静かにその決意を聞いていた。
あの戦いの後から今日まで、彼は変わった。
その変化に、みんなも微笑ましい気持ちになっているんじゃなかろうか。
とにかく、ようやくこれでサディクも俺達の仲間になれた気がした。
「良いこと言うじゃん」
「ああ、よろしくな、サディク」
みんな思っていた事を彼に伝えていく。
温かい雰囲気がそこにはあった。
俺もそれを黙って見ていたのだった。
「こんな所に一人で突っ立っていないで、みんなの所に行けば良いじゃないですか」
エクレレはそう言って俺の所にやってきた。
「俺はただ眺めるだけで良いのさ。それだけで十分だよ」
「随分とおじさん臭いセリフですね。それにしても、昨日の今日でサディクは随分見違えましたね、何か彼に悪い事したんじゃありませんか?」
エクレレは彼の変化に、俺の暗躍があったのではと疑っていた。
「ちゃんと思ってる事を言っただけだよ。そうしろってグレンツェにきつく言われたからな」
「なるほど、通りで今日は素直なんですね」
「今俺の心は筋肉痛だからな、何も言う気になれないよ」
「ふふ、上手い冗談ですね。それだったら最初からお互い話しておけば、面倒ごとにならずに済んだと思いますけどね。それに、顔にまだ何か言いたい事があるって書いてありますし、話してもらっても?」
そう言って悪戯っぽく笑った。
相変わらず目敏い王女様だ。
それをわざわざ聞くために俺の所に来たのだろう。
「俺は生徒会長に今度の武術祭に参加しろって言われててな、断っても聞いてくれなさそうだから参加する事にしたんだ。それを今からみんなに言うつもりだったけど、しばらくはそっとしておこうかな」
「クロミア生徒会長が貴方に参加しろと言ったのですか?」
「ああ、正直目立つのは好きじゃないけど、あの人は何か考えてるみたいだし、仕方ないからその誘いに乗る事にしたんだよ」
「でも、貴方の実力だと簡単に優勝してしまう気もしますが。せっかく上級生達のアピールの場に、彼らより目立つかもしれませんよ?」
「俺もそうだと思うんだが、ひょっとしたらそれが狙いかもしれないしな」
「それはつまり、わたくしたちの実力を学園内外に見せつける、と言う事ですか?」
「さすがに話が早くて助かるよ。今回、俺達下の学年にも武術祭の参加が認められた理由の一つに、魔族と戦う為の戦力を確かめる意味合いも含まれていると俺は考えている」
「確かに、それは一理ありそうですね」
「だからあの人は、サディクを利用してまでも俺に参加するよう迫ってきたはずだ」
「でも良いんですか? 貴方の実力がバレると色々と厄介な事になるんじゃありませんか?」
「一応『神贈の恵与』は使わない。それだけでアピールとしては十分だしな」
「何さっきからコソコソ話してるのよ、また何か企んでるの?」
「リーベストが今度開かれる武術祭に参加するって話をしてたんですよ」
「何、リーベストは参加するのか?」
「生徒会長直々の指名だからな、参加しないわけにはいかないよ」
「リーベが出るんなら私も出る!」
「あのな、武術祭は俺たちが目立つための行事じゃないんだぞ?」
「その事ならあの生徒会長に言ってくれ」
俺は仕方なく出させられるが、フランメは武術祭に出る事に興味津々だ。
セリウスはそれを止めようとしている。
「それなら、みんなで参加してみてはどうです?」
エクレレがそう提案する。
「誰が勝っても文句なしの決闘か、確かにそれは面白そうだ」
俺はエクレレの意見に賛成する。
みんなで出れば楽しそうでもあるし。
「リーベストは反則じゃないのか?」
「リーベストは『神贈の恵与』を禁止という制限をするんですよね?」
「もちろんだ、それだけはまだ披露するつもりはない」
「じゃあ、俺も参加しようかな」
セリウスも案外乗り気になった。
口では真面目に反対してても、心の中では出てみたかったんだろう。
まったく、素直じゃないんだから。
「俺は遠慮する。エクレレ様が出ないのであれば、俺はエクレレ様に付いておく必要があるからな」
「そんな事言わず、貴方も出て良いのですよ?」
「いえ、それに魔法ありの戦いなら、今の自分の実力では少し心許ないので」
「はぁ、分かりましたよ」
エクレレは少し残念そうにため息を吐いた。
「私も当然遠慮しておきます」
セレニテは戦闘が苦手なので、辞退する。
「じゃあ、これで決まりだな」
「ええ、では皆さん、頑張ってくださいね」
こうして俺とフランメ、セリウスの三人が出場する流れとなった。
エクレレとセレニテは戦闘に向いていないため参加せず、シュヴァリエもエクレレの護衛のため参加を見送った。
サディクはまだ編入してすぐなので、そもそも参加資格が無かった。
と言うことで、俺達三人は武術祭に向け、朝の特訓を開始した。
「絶対私が勝つから!」
「俺だって、君たちに負けるつもりはないぞ!」
「まあまあ、お手柔らかに頼むよ」
朝早くの実技棟に、元気な話し声が響いていたのだった。




