表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第三章 王都学園編 〜守るべきモノと大切なモノ〜
51/64

第四十五話 最後の戦い

  



 魔物になる薬を飲み、変形した。

 体長は約4メートルで、頭にツノが生えており、まるで悪魔に姿を変えたようだった。

 「君にどんな過去があったのかは、知る事ができなかった。きっと、辛い過去を経験してきたのだろう。そして、この世界を恨み、今回の行動を起こした。だが、それはこの世界の全てを知ってからでも遅くなかったはずなのに……」

 口惜しそうに言葉を紡いだサクレは、剣を構えた。

 「だが、俺の、この国の相手になるのなら容赦しない。恨みは、無しだ」

 ジリっと牽制しながら気を伺う。

 「では、行くぞ!」


 身体能力向上魔法を使い、素早く接近する。

 そして、真正面から最速の一太刀を繰り出す。

 「聖剣流奥義 光速一閃(クラウ・ソラス)……!?」

 気がつくと目の前に拳が飛んできていた。

 慌てて剣でガードする。

 ガキンッと音がし、サクレは吹き飛ばされる。

 「兄様!」

 ハッと気づき視線を戻すと、目の前にそいつは立っていた。

 「シネ!!」

 拳が振り下ろされる。

 「……!」

 逃げる事が出来ず、目を瞑った。

 「聖剣流奥義 光速一閃(クラウ・ソラス)

 土煙の中から、光速の一太刀が一閃し、衝突の甲高い音がこだまする。

 「フン」

 そして、斬撃は後ろに逸らされ、壁に激突した。

 「神聖魔法で放った一太刀が受け流された?」

 「おっと、私がいる事も忘れてはいけませんよ?」

 背後から魔族が迫り、影で作った剣を振り抜いた。

 「防御魔法(ブルク)!」

 エクレレが、サクレを覆う防御の膜を張った。

 剣が膜にぶつかり、すぐにヒビが入る。

 (やっぱり、全然魔力が足りてない)

 「いや、十分だ。多少の時間稼ぎにはね」

 バリンと割れるが、サクレは瞬時にこれを回避した。

 「やはり、簡単にはいきませんね」

 そして、また影の中に潜った。

 「ドコヲミテイル!」

 「くっ!」

 凄まじい衝撃がサクレの両腕を襲った。

 (なんてパワーだ!)

 地面に足がめり込んでいく。

 「だが、俺にだって譲れないものがある!!」

 サクレは精一杯の力を込めた。

 「おおおおぉぉぉぉ!!」

 光が今までよりも輝き、ルシアーノの拳を押し返した。

 「守ってやるって妹に言ったのに、情けないな」

 守るつもりが守られてしまった事に、サクレは自分を戒めた。

 情けないと、そう思った。


 「どうですか? 彼の力は? 今までのサンプルたちからデータを集め、改良に改良を重ね生まれた新たな魔人へ昇華するこの道具は、今ここで完成されたのです」

 「そのためだけに、この国の国民を犠牲にしたというんですか!」

 「それは仕方ありませんよ、エクレレ王女。これがどう言った物かを大して調べもせず、ただ他の人の噂を真に受けた情弱達が悪いのですよ?」

 「それは……!」

 「残念ですが、そうなる事を選んだのはあなた達人間です。今までも、騙し討ちや奇襲作戦は行われてきたはずですよ? 情報という戦争に負けただけではありませんか」

 何の悪びれもなく魔族は言った。

 確かに、綺麗事を並べるだけでは、世の中はうまく生きていけないのかもしれない。

 それでも、人の良心を弄んだ奴を許す事はない。

 「それでもあなたはわたくし達の敵である事に変わりはありませんから、ここで倒させてもらいます」

 「出来ますかね? あなた達如きに」


 

 フランメと俺はようやくエクレレ達が戦っている広間に到着した。

 そこで見たもの、想像もしていなかったものだった。

 「何だ、あの黒い異形なものは?」

 「あれは、やばそうね。ここからでもオーラが伝わってくる」

 俺は周囲を見渡し、状況を把握する。

 黒い怪物と戦っているのはサクレで、神贈の恵与(ギフト)の神聖魔法を剣に纏っている。

 そして、エクレレと黒いローブの魔族がいる。 

 エクレレの側にはシュヴァインが倒れている。

 この二人に手負いの俺たち五人で戦うということか。

 少し厳しい戦いだな。

 それに俺は今、神贈の恵与の時間魔法を使えない。

 つまり戦局が読めない。

 それがないだけで、こんなに不安になるなんてな。 

 もう少し勝負感とやらを鍛える必要がある。

 

 「隙を見て少ない魔力だが、魔法を放つ。その隙にフランメはエクレレの援護に行ってくれ」

 「リーベ大丈夫? 時間魔法使えないから逆の方がいいんじゃない?」

 「影からの攻撃をしてくる奴だからな。フランメの野生の勘ならわかるんじゃないかって」

 「何よそれ。まあ良いけど」

 そして俺は魔力を込めた。

 「ピンチになれば助けに行くから」

 「ああ、頼んだ」

 魔力は溜まった。

 あとは魔法を放つだけだ。

 「終わらせよう。この戦いを」

 俺は魔法を唱えた。

 「風魔法 風の息吹(ウインド・プレス)!」

 

 (風魔法!? だがこれは、目眩しか)

 風が止み、周囲を確認すると、本来ならいないはずの人物がいた。

 「あなたは、どうしてここにいるのでしょうか?」

 ショコラブラウンの髪の少女。

 アシュメダイが向かったはずの場所にいた彼女だ。

 「どうしてって、倒したからに決まっているでしょ。あのアシュなんちゃらって奴もね」

 「それは俄には信じられませんね。あの方はあなたのような人間が敵うような方ではありませんが」

 「じゃあ、どうして私はここにいるのかしらね」

 「……少し確かめる必要がありますね」

 そしてチラッと、サクレの方を確認し、さらに動揺した。

 「バカな、なぜ彼がここにいるのですか? 彼にはアゼル様がついていたはずでは? おかしい、一体どうなっていると言うのです?」

 「考えるだけ無駄よ。これが私たちの力だから」

 「フランメ、貴女……」

 エクレレが驚いた顔でフランメを見つめた。

 「何よ、その顔。勝手に殺さないでくれる?」

 少し不機嫌そうにした。

 心外なんだけど、と言っているようだった。

 「いえ、その、助けに来てくれてありがとう」

 「言ったでしょ、後で追いつくって。あんた達も約束守ったじゃない」

 「ええ、何とか()()()()()()済みましたよ」

 いつも通りの軽い冗談を飛ばした。

 それにフランメも笑い、

 「そんな冗談言えるんなら大丈夫ね、じゃあ、奴を倒すわよ」

 「そうはさせませんよ、あなた達がここに来たのなら悠長にしている暇はありません。すぐに終わらせるとしましょう」


 「サクレ王子!」

 俺は急いでサクレ王子の元へやってきた。

 「リーベスト、無事ここまで来れたんだね!」

 「何とか、ですが。予期せぬ敵のせいで、駆けつけるのが遅くなりました。それで、この怪物はもしかして?」

 「ああ、敵のリーダーと呼ばれていた男が、例の薬を取り込んだ姿だ」

 「そうですか。それで、強さはどんな感じなんですか?」

 「あの巨体からは想像つかない素早さだ。それにパワーもある。だが、一撃一撃に隙がある。そこを突いていくしかないが、奴の身体は俺の剣ですら弾き返す力がある。少し責めあぐねている状況だ」

 「なるほど、わかりました。とりあえず俺が動いて奴の隙を作ります。その間にサクレ王子が攻撃する形で良いですか?」

 「分かった、それで行こう」

 「ただ、俺は魔法がもうほとんど使えません。この先どうなるかは分からないので、やってみるしかないですね」

 「それは少し苦労しそうだな。しかし、魔法が使えなくても大丈夫なのかい?」

 サクレは心配そうに俺を見た。

 しかし、やると決めたからには引くわけにもいくまい。

 「一応あなたの弟弟子ですから、ここで俺だけがやられたらリヒャルトの顔が立ちませんよ」

 俺はそう言って剣を構えた。

 ここにくる途中で、倒れていた兵士から借りてきたやつだ。

 「そうだね、では頼んだよ」

 サクレはフッと笑い、同じく剣を構えた。


 強がっては見たものの、実際やれる事は少ないだろう。

 自分の魔力も残り僅か、時間魔法も使えない。

 そんな俺に出来ることは剣術しかない。

 実力は中の下くらいかもしれないが、こうなった時を見据え、あの後ずっと練習してきた。

 それに、少し試したいこともある。

 上手くできるかはやってみなければ分からないが……

 「オマエハ、タシカサディクトタタカッタヤツカ?」

 「その姿に変わり果てても、俺のことを覚えていたなんてな。悪いが、あんたの願いはここで終わりにさせてもらおう」

 「フザケルナ、オレハコンナトコロデ、オワルワケニハイカナイ!!」

 拳が飛んでくる。

 確かにとてつもない早さだ。

 「柔剣流 流杖取」

 力の流れに逆らわないよう、流れる水のように。

 すると、激しい衝撃が全身に伝わった。

 (くそ、化け物め!)

 後ろに逸らすのがやっとだった。

 手は痺れており、感覚が吹き飛んだ。

 だが、攻撃は逸らせた。

 攻撃な単調な分、まだ捌ける。

 「よくやった、リーベスト」

 サクレ王子がその隙に剣を振るった。

 「聖剣流奥義 長久の斬撃(デュランダル)!」

 ガキンッと音と同時に、火花が散った。

 だが、斬撃は貫通しておらず、身体の手前で止まっている。

 「コンナモノ、キクカ!」

 そうして上へ弾き飛ばした。

 (……!? あの身体、もしかして?)

 俺は急いでサクレ王子の元へとやってきた。

 「サクレ王子、少し相談が……」


 そして自分の意見を簡潔に話した。

 「…………というわけで、少しやりたい事があるのです。サポートを頼めますか?」

 「なるほど、それは一か八かだが、上手くいきそうかい?」

 「正直確率は低いです。何せ初めてなので。ですが、今まで見てきたので、やれなくはないはずです」

 サクレ王子は少しだけ悩んだが、

 「分かった、君のやり方を試してみよう」


 もう一度サクレ王子が剣を振るった。

 「光速一閃!」

 剣撃がルシアーノに迫る。

 「キカナイト、イッテイルダロウ」

 やはり弾き飛ばされる。

 「いや、これでいい」

 「??」

 一瞬の攻防の隙で、俺は奴の左腕に近づいた。

 そして、その腕に触れた。

 さっきこいつがサクレ王子の技を弾いた時に、奴の身体にマナの変化を見た。

 攻撃を受ける時にマナを集中させ、固い装甲のような膜を作っていた。

 マナを操っているんだとしたら、アゼルの反魔法が有効だと思った。

 あの時のあいつみたいに、この身体を覆っている高濃度のマナを乱れさせる。

 「魔法掻乱(シュトゥーレン)

 すると、マナの鎧が霧散していく。

 (よし、成功だ!)

 上手くいったことを確認し、合図を送る。

 「サクレ王子今です!」

 既に上段に構えていたサクレは、

 「すぐにそこを離れてくれ!」

 そのまま剣を振るった。

 「長久の剣撃!!」 

 振るった剣撃が俺の掴んでいた場所へと、正確に打ち込まれる。

 「ナンドヤッテモオナジコトダ!」

 それを弾こうとした左腕は、切り落とされた。

 「グアアアアアア!!?」

 「よし!」

 俺は、自分の考えていた事があっていたことにガッツポーズした。

 「この剣で斬られた箇所は再生しない。ようやくダメージを与えられたか」

 「ヨクモ」

 「さすがは危険とされている人物ですね。本当に油断なりません」

 「!?」

 もう一人の魔族がすぐ後ろに現れた。

 油断した。

 俺は完全に不意を突かれた。

 防御できない!


 「守れ、回答者(フラガラッハ)!!」 

 攻撃を受けるすんでのところで、サクレ王子の剣が防いでくれた。

 間一髪だった。

 「すみませんサクレ王子……!」

 しかし、サクレ王子は膝を突いていた。

 「サクレ王子!?」

 「大丈夫だ、力を使いすぎたようだ」

 剣の光は失われ、元の普通の剣に戻った。

 なぜ、こいつが俺たちのところに。

 慌ててフランメの方を見た。

 そこにはもう一人の魔族の姿があった。

 「どういうことだ? なぜ二人いる?」

 「あれは闇魔法で影を操り、もう一人の自分を象ったものです。これを使うと魔力を大きく使うので、あまり使いたくはありませんでしたがね」

 闇属性の魔法、確か光魔法と並んで特殊な魔法だったはず。

 「ですが、まさかアゼル様の魔法を使うとは、あの方は全くどういうつもりなのでしょうか」

 「これは俺があいつの魔法を見て、見よう見まねでやったものだ。あいつに教わった事はない」

 「なるほど、では、あなたの魔法の才能があるという事というわけですね。やはり、『世界を均す者(シャイデマン)』が認めただけありますね」

 魔族は傷ついたルシアーノのとこへ向かった。

 そして影を操作し、切り落としたはずの左腕を作った。

 「さあ、これで振り出しですね。どうしますか? サクレ王子は力を失い、あなたは魔法が使えない。そうでしょう?」

 やはり気付かれていたか。

 「あなたの『神贈の恵与』である、時間魔法をここまで使っていません。それに、普段は剣術などあまり使わない人ですしね。つまりアシュメダイ様との戦いで、あなたは力をほとんど使い果たしているのでしょう? 確かに反魔法を使ったことには驚きましたが、それもいつまで持ちますかね?」

 薄く笑いながら、勝ち誇ったかのように自分の見解を述べた。

 「それに、あちらの方も既に手負いの方達ばかりで、決着も時間の問題でしょう。つまり、あなた達は既に絶体絶命です。ここからどう逆転するつもりでしょうか?」

 

 息を切らしながら、懸命に戦うフランメ。

 魔力が底をつき、まともにサポートできないエクレレ。

 「神贈の恵与」が力尽き、決定打を与えられないサクレ王子。

 魔力は殆どなく、時間魔法も使えない自分。

 それに対し、相手はほぼ無傷の魔物と魔族。

 さすがに戦力差が激しい。

 どうすればこの曲面を挽回できる?

 回復薬のポーションもなければ、助けの望みもない。

 さすがに今回ばかりは気が参りそうだ。

 「では、これで終わりとしましょう!」

 影を操り、それをルシアーノに吸収させる。

 そして、ルシアーノはさらにデカくなった。

 「な、何よ、あれ」

 その時、フランメとエクレレの所にいた魔族の影も吸収された。

 戦っていた魔族の影が消えたので、フランメも俺たちに合流した。

 「これは、とんでもない魔力だ」

 サクレ王子は戦慄した。

 「ここまで、ですか」

 エクレレからは諦念を感じた。

 ただ、どうしてか、俺はすごく冷静だった。

 集中力が極限に高まり、ちょっとした事でも敏感に感じ取れるような状態だった。


 (あれは魔法だ。魔族の奴が操っているのか。ならば、あいつを仕留める事ができればあの魔物も力を失うのでは?)

 色々な情報が頭に流れ込んでくる。

 だが、打破できる手駒が足りない。

 一回でもいい、自分の力を使えたら……。

 「これであなた達や、この城も吹き飛ばしてあげましょう!」

 とてつもない魔力の塊の球体が形成される。

 「あれを食らえば俺たちは消し飛んでしまう!」

 「何か、何か策はないの!?」

 わかってる、ただ、力がもう残ってないんだ。

 

 (何だ、どこからだ? この燃えるような感覚は?)

 身体のどこかから熱い感覚を感じた。

 左胸のポケット、静かに脈打っているのを感じる。

 恐る恐る手を伸ばすと、そこに見知ったものがあった。

 (これは!?)

 師匠との別れ際に貰った魔力玉だった。

 確かに、この中には魔力がこもっている。

 だが、その魔力がどうなったのかは分からない。

 取り出そうとしてみたが、この魔導具は何の反応も示さなかった。 

 魔力を、この道具に食べられているような感じだった。

 保険のために持ってきておいたこれが、最後の望みだった。

 「それではみなさん、さようなら」

 放たれた相手の一撃。

 俺はこの魔力玉を上にかざした。

 すると、それは光り、蓄えていた力を吐き出した。

 互いの魔力が相殺され、爆風が吹き荒れた。

 

 「……!? あり得ません、一体何が?」

 「何が起こったんだ?」

 みんなが混乱していた。

 そんな中、魔力を放出してもなお、魔力玉は輝きを失わなかった。

 「それは一体、何なのですか?」

 奴は驚きで、少したじろいでいるのが分かった。

 「これか? お前の嫌いな人らから貰ったものだよ」

 そう言われ、すぐに冷静を取り戻した。

 「『世界を均す者』、ここに居なくても邪魔をしてくるのですね」

 苛立ちを見せ、ダンッと地面を蹴った。

 それにしても、まさか、ここで役に立つとは。

 あの人の言っていた通りだ、魔力を込めておいて良かった。

 先程の衝突で、魔力が散らばっている。

 それを、今度はこの魔力玉が吸収し始めた。

 その魔力を俺たちに分け与えてくれる。

 まるで、だれかの意思を伝えているかのように。

 これなら、魔法が使える。

 「たった一回の攻撃を防いだところで、あなた達のピンチには変わりありませんよ!」

 さっきよりも大きい物を作り上げようとした。

 「さらに大きいものを」

 サクレ王子は次こそ終わったと思っていた。

 「サクレ王子、これに、剣を触れてみてください」

 俺はそう言って、魔力玉を渡した。

 訝しながらも、サクレ王子は剣を魔力玉に当てた。

 すると、剣は光を取り戻した。

 「これは!?」

 「どうやら、蓄えていた力を還元してくれるみたいです」

 「それ、そんな効果があったんだ。ミーレ師匠……ありがとう」

 フランメも魔力を受けった。

 「それが何だろうが、我々が負ける事はあり得ない!」

 そう、互いに負けられない思いがあるのだ。

 「いいや、この力で俺たちは勝つ!」

 この一撃に全てを込める。


 俺は使う魔法を既に決めていた。 

 使える時間魔法は一回だけ。

 恐らくフランメも、サクレ王子も一発が限界だろう。

 あの魔物は俺たちじゃ仕留めきれない。

 だから、サクレ王子の神聖魔法を纏った剣で貫く。

 俺とフランメで、あの魔族を討ち取る。

 もちろん、相手もサクレ王子を全力で仕留めにくるだろう。

 その隙を突く。

 

 再び作り出される相手の攻撃を、魔力玉が魔力を放出し、それを阻止した。

 「フランメ、いくぞ!」

 「オッケー、いつでもいいよ!」

 二人の息を合わせ、魔法を同時に放つ。

 「風魔法 風の息吹(ウインド・プレス)!」

 「螺旋炎(フラメ・スピラ)!」

 魔法が合わさり、炎が大きくなりながら相手を襲い、激しい炎が包んだ。

 今の間に魔力を込める。

 「今更こんな魔法効きませんよ!」

 大きくなったルシアーノが簡単に吹き飛ばした。

 思ったよりも時間が稼げなかったか。

 だが、それは想定内だ。

 フランメがすぐに敵に接近した。

 「はあああぁぁぁあぁ!!」

 ルシアーノの巨体を飛び越え、魔族に目掛けて攻撃を繰り出す。

 「甘いですね!」

 影が奴を覆い、フランメの攻撃はガードされた。

 「くそっ!」

 「威力が以前ほどありませんね。その程度では、傷つけることすらできませんよ? ハァ!」

 無数の影の糸のようなものが襲ってくる。

 その攻撃を交わすが、敵との距離が遠のいた。

 「!?」

 そしてルシアーノの巨大な拳が飛んでくる。

 これをすんでのところでかわし切る。

 

 「大丈夫か?」

 「うん、ちょっと掠っただけ」

 右頬からは血が流れていた。

 肩で息を切らし、体力も限界を迎えていた 

 「でも、あいつ、さっきまで隠れていたのに隠れないね」

 「そうだな、魔物の動きも、さっきに比べると単調だ」

 恐らく、巨大化させた魔物を奴が影で操っている影響だろう。

 サクレ王子は、最後の一撃に賭け、集中している。

 彼の邪魔はさせない。

 速攻でケリをつける。

 魔力が、普段からやってきたように、身体に馴染んでいるのが分かる。

 「好きにはさせませんよ」

 ルシアーノの身体から発せられた、黒い穴のようなものから魔力弾が降り注いでくる。

 攻撃をかわしても、次から次に降ってくる魔力弾に、サクレ王子はやがて被弾する。

 俺は剣を使いながら何とかかわすが、攻撃に耐えれず、剣が壊れてしまう。

 攻撃が止んだ時には、身体から血を流すサクレ王子の姿があった。

 「剣で防ぐことも可能なのに、それをしなかったという事は、その力も一回が限界という所でしょう。果たしてそれまでにあなたの身体が持ちますかね?」

 再びルシアーノを操作し、攻撃をしてこようとした。

 「さあ、これで終わりです!!」

 

 その直後、自身の身体に剣が突き刺さっている事に理解するには、少し時間がかかった。

 「……!? これは、一体?」

 「時間魔法 時の減速(インペディオ)

 その男は手をこちらに向けていた。

 小さな身体からは光のようなマナが見えた。

 「そうか、『神贈の恵与』か……!」

 身体から血が溢れ落ちる。

 刺さっているこの剣は、炎で燃えていた。

 身体が内側から焼けるように熱い。

 それに、再生しない?

 どういうことだ?

 この炎が原因か?

 急いで剣を抜こうとしたが、剣は抜けなかった。

 違う、私の力が抜けているのだ。

 まさか、やられたというのか。

 こんな手負いの人間達に。

 「なるほど、これも運命というわけですね」

 力が抜け、倒れ込んだ。


 「ハァハァ、やった」

 最後の力を振り絞り、魔族にトドメを刺したフランメはその場に倒れ込んだ。

 「お疲れ、フランメ」

 俺は倒れ込んだ彼女に言葉をかけ、この勝負の行く末を見守った。

 魔族が倒され、闇魔法の影響が解けた魔物は、悶えていた。

 身体を操っていた力が無くなり、コントロールを失っていた。

 無理やり集められた力が散り始め、魔物の身体は、徐々に小さくなっていく。

 サクレ王子は傷だらけの身体を引きずりながら、魔物に近づいた。

 「君が、今までして来たことは、決して許される事ではない。せめて、その命を以て、償いとする」

 振りかぶり、剣を振り下ろした。

 「聖剣流奥義 慈悲の剣(カーテナ)

 振り下ろされた剣は、身体を切り裂き、やがて魔物は動かなくなった。

 こうして、王城での戦いは全て終わった。

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ