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変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第三章 王都学園編 〜守るべきモノと大切なモノ〜
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第四十三話 炎の少女と光の少年




 セリウスがやられた。

 まずい、早く助けないと、

 いや、それだと奴に邪魔をされてしまう、

 けど、早くしなければ間に合わなくなる、

 今だったらまだ可能性が、

 しかし、それだと治癒の時に邪魔されてしまう。

 このままじゃセリウスが……!

 頭の中は混乱していた。

 「リーベ!!!!」

 俺はハッとして顔を上げた。

 その視線の先では、フランメが睨みながら俺の方を見ていた。

 今は自分のやるべき事をやりなさい、と。

 口には出していないが、そう言っているように聞こえた。

 俺は俺のすべき事をやる、そう決心した。

 

 フランメは奥歯を噛み締め叫んだ。

 「うぁぁぁぁぁ!!!!」

 そして地面を蹴って駆け出し、アシュメダイに接近した。

 炎拳を纏った両拳で攻撃を繰り出し、何度も拳を振るった。

 「随分とやる気だね、そんなにお仲間が殺されたことがショックだった?」

 「うるさい!!」

 「でも、さっきに比べれば良い顔になったよ」

 パシッと振るった拳が受け止められた。

 受け止めた部分が音を立て焦げる。

 「ッッ!?」

 「けど、もうそれは飽きた」

 グシャッと受け止めた拳を握りつぶした。

 「これで二人目」


 ザシュッという振動が耳に届く。

 目の前で鮮血が飛び散った。

 「チッ、上手くかわしたね」

 だが貫かれたかのように見えた手は、僅かに彼女の身体の端を抉り取っただけだった。

 (あの一瞬でこの反応、やっぱりこいつ、動きを見切り始めてる?)

 アシュメダイは目の前の少女に最大限の警戒をした。

 (こいつは今ここで仕留めないと、後々厄介な存在になりそうだ)

 ボロボロになりながらも、まだその目には闘志が宿っている。

 本能的に危険と判断した彼女は、素早くトドメを刺そうと動いた。

 しかし、その直後に感じた寒気が彼女を引き止めた。

 その方へと目をやると、一人の少年がマナを溜め、そのマナによって光り輝いているのが見えた。

 この光は覚えている。

 かつて、あたしを封印に追いやったあの存在を。

 それと同時に燃えたぎる怒りが彼女を支配した。

 「お前ェェ、どうしてその力を持っている!!」

 怒り叫んだ声が広間に響き渡った。

 「————……」

 そして、その少年が発した言葉に怒りが頂点に達した。

 「……!! またしてもあたしの邪魔をするのか、ラミエフィール!!」

 そしてその少年めがけ、地を踏み砕いた。

 


 マナは十分集まった。

 セリウスが用意した「偽装魔法(デコイ)」の魔法陣のおかげで、ここまで気付かれずに済んだ。

 あの二人が身を賭して、あの悪魔の注意を引いてくれたおかげでもある。

 託された期待に俺は応えなければならない。

 そう思った矢先にフランメがやられた。

 急所は外しているようだが、それでもあの傷ではまともに動けない。

 (ふぅー、落ち着け)

 心臓が早鐘を打つ。

 この一撃は失敗できない。

 緊張で吐きそうだ。

 そう思っていると怒声が鳴り響いた。

 どうやら奴に気付かれたようだ。

 あの悪魔はこの光を知っていた。

 当然、すぐにでも俺を倒そうとするはずだ。

 だから俺は覚悟を決めた。

 そして奴が怒り狂って攻撃してくるだろう言葉を発した。

 「俺の師匠は世界を均す者(シャイデマン)だ、お前のような悪魔を倒すためにこの力を譲り受けた!」

 激しい怒りと共に奴は俺の所へ迫ろうとした。

 だが、ガシッと何かがアシュメダイの動きを止めた。



 「あんたの相手は、私よ!!」

 フランメが片方の腕で必死に抑えていた。

 「邪魔するな! 鬱陶しい羽虫が!!」

 掴んでいる彼女を引き剥がそうと、必死に抵抗する。

 「くっ、その羽虫すら倒せなかったのはあんたよ!」

 薄ら笑みをフランメは浮かべた。

 「良い加減にしろ!!」

 大量のマナが放出され、抑えていたフランメに襲いかかる。

 マナの風圧で身体が切り刻まれ、無数の傷を負うがその腕は離さなかった。

 「この腕は、離さない!!」

 そう言って、アシュメダイを必死に抑えていた。

 このフランメの必死の頑張りをムダにできない。

 魔力は十分溜まった。

 だが、万が一外してしまったら……。

 不安がよぎった。

 一秒もムダにできないこの場面で、俺は心のどこかでビビっていた。

 その判断が命取りだとしても。

 肝心な時に、覚悟が足りていなかった。

 

 (何を心配しているんだい? 君なら大丈夫だよ。特訓したあの時を思い出して)

 柔らかく、温かなものを感じた。

 懐かしい感覚が蘇った。

 かつて一緒に過ごしたあの存在を。

 「……ありがとうございます、師匠」

 俺は前を向き、感謝を小さく独り言ちた。

 そして、たまったマナを魔力に変換し、その魔力によって指先に光の粒が集まる。

 それを頭上で小さく円を描く。

 そして、作り上がった光の輪を握り潰し、全ての魔力を込めた。


 「裁きの(キニートシャ・)光杖(シュラグ)!」


 振り下ろした腕から魔力が解き放たれ、アシュメダイとフランメの頭上に円柱状の光が降り注いだ。

 「ぎゃあああぁぁぁぁ!」

 光を浴びたアシュメダイは張り裂けるような声で叫んだ。

 「……傷が!?」

 それに対し、フランメの身体の傷が癒えていく。

 「おのれ、人間の分際が!!」

 光に打たれながらも、なお抵抗しようとする。

 「ムダだ、この光はお前を絶対に許さない。消えるまで焼かれ続けるんだな」

 初めは必死にもがいていた敵も、やがて動きが鈍くなってくる。

 「くそ、こんな奴らに——覚えておけ! 絶対にお前たちも、あの天使も、許さないからな!!!!」

 「ふん、そんなチャンス、訪れさせはしない」

 俺はキッと睨んだ。

 そしてさらに魔力を込める。

 「いいや、いずれ分かるはずだ。その時になったら覚悟するんだな!」


 しばらくして光は止んだ。

 アシュメダイが憑依していたサディクは、今は安らかに目を閉じていた。

 (呼吸はあるな) 

 これで無事に一つの任務が終わった。

 が、そんな悠長な事をしている場合ではない。

 すぐにセリウスの治療をしなくては。

 急いで駆け寄り、心音を確認する。

 (僅かに心臓を避けている。即死は免れているようだ)

 どうやら、攻撃を食らう寸前で避けていたのか。

 ひとまずホッとした。

 先程の技のマナの残滓が、セリウスの傷を癒してくれていた。

 それでもこの傷は一刻を争う。

 さっきのでほとんどのマナを消費してしまった。

 魔力回復用のポーションも既に無くなっている。

 俺はもう一度、周囲からマナをかき集めた。

 幸い、さっきの魔法の残滓が残っているおかげで、すぐに集まった。

 (イメージしろ、身体がまだ傷ついていない状態を)

 セリウスに手を当て、魔法を願った。

 「時間魔法 時間遡行(レディトゥス)!」

 傷ついた身体の時間を戻し、何もない状態の身体に戻した。

 腹の空いた穴は塞がり、多少のすり傷は残ったが、大きい怪我は跡形も無く治った。

 「これでよし、まだまだ改善の余地はあるが、一先ず何とかなったって所だな」

 

 次にフランメの様子を見に行く。

 「やった、のね」

 脇腹は血で赤く染まり、全身が傷だらけのフランメにも同じように時間魔法で、身体を元通りに近い状態にした。

 「ありがと、リーベ」

 少し疲れたような表情だった。

 「感謝するのはこっちの方さ、フランメには負担をかけまくったから。最後もあいつを離さずいてくれて助かった」

 「ふん、これは貸しにしておくわ」

 「それは何というか、大きい貸しを作っちまったか」 

 俺は小さく苦笑いした。

 

 「セリウスは大丈夫なの?」

 「傷は塞いだし、一応呼吸もある。ただ、流した血の量が多いからしばらくは目を覚まさないだろう」

 「そっか、何とかアイツに勝ったのね」

 「どうだかな、正直あいつは遊んでいるように思えた。殺すつもりなら、作戦会議なんてする間もなかっただろうし。最後の迫力が本来の姿なんだろう」

 それに、最後の言葉がどうも引っかかる。

 前みたいに倒したという手応えが薄いような…

 「確かにそれもそうね。しかもあいつは多分、まだ本気を出してないと思うわ」

 「それってつまり、封印明けも影響してたかもしれないって事か。相変わらずとんでもない化け物たちだな、魔王軍の幹部達は」

 俺は立ち上がり、倒れているサディクの所に向かった。

 「そいつは無事なの?」

 「一応な。ただ眠っているだけじゃないかな」

 「それで、どうするつもり?」

 俺の方をジッと見つめた。

 「色々聞きたいこともあるし、それに、こいつだって辛い過去を経験している。出会う人達が違っていれば、こんなことにならずに済んだかもしれないんだ」

 「敵の一味なのに、優しいんだね」

 呆れるように言った。

 「でも、そういうとこ、リーベらしいなって思うよ……」

 少し照れ臭そうにし、俺から顔を逸らした。

 「ありがとうフランメ」

 微笑ましい気持ちに俺はなった。


 「そういえばエクレレたちは?」

 「この先に行ってるわ。シュヴァリエと二人だし、ちょっと心配ね」

 「そうだったのか、あの人が間に合っていれば良いんだけどな」

 ボソッと小さな声で口に出ていたみたいで、

 「あの人?」

 「ああ、いや、何でもない。とりあえず二人の元へ向かおう」

 「あ、待って、この二人はどうするの? ここに置いていくわけにもいかないんでしょう?」

 「そうだな、抱えていけそうか?」

 「身体は何ともないし大丈夫よ」

 「じゃあ、急ごう」


 そして俺たちは二人を背負って、エクレレの元へ向かった。

 ただ、どこへ行ったのか分からなかったので、手当たり次第に探すしかない。

 「問題はどこにいるかだな」

 俺は悩んだ。

 魔力もほぼ使い切ったし、自分の残り魔力では普通の魔法しか使えない。

 それに、さっきから周囲のマナを集めようとしても上手くいかなくなっている。

 そういえば以前、色々なマナが混ざり、グチャグチャになっていると言われた事がある。

 普段、時間魔法を大量に使うときは、そんな事はないのだが……

 あの時と同じで、師匠の技を使うのは相当な負担がかかるかもしれない。

 「待って、何か音が聞こえる」

 そう言われ、俺も耳をすましてみるがよく分からない。

 「何が聞こえるんだ?」

 「何かを切る音。下から」

 もはや野生動物のようだ。

 なら、ここはその勘に期待しよう。

 「下っつっても降りる階段はどこだ?」

 何せ初めての王城だから、内部構造がどうなっているのかなんて分からない。

 エクレレにもっと、隅々まで詳しく聞いておくべきだったと後悔した。

 「あそこ、何か変じゃない?」

 そう言ってフランメが指を差した。

 確かによく見てみると、マナの流れが他と違う気がする。

 近寄って確認してみると、床の下に階段があった。

 「隠し階段か」

 「ここを行けばいるって事ね」

 「可能性は高いな」

 そうして俺たちはこの階段を下へと降りていった。

 だが、嫌な予感がする。

 王城にある隠し通路。

 それもこんな分かりにくい場所。

 そこに向かった魔族とエクレレ。

 事前に準備をしているのなら、この先がどんな場所か分かってたって事。

 そして、さっきの戦いでアシュメダイが言っていた封印の話。

 良からぬ事が起きていてもおかしくはないと思った。


 「それで、リーベはあのロリババア、だっけ? あいつに何されてたの?」

 俺の後ろをついてきていたフランメは、質問してきた。 

 「別に、ただの昔話だよ。あの悪魔が何であの学園にいるかとかな」

 「そんなの、私たちを邪魔するために決まってるでしょ」

 「それもあるけど、よく分からないが、複雑な立場で苦労しているみたいだぜ?」

 「何よそれ、意味分かんないんだけど」

 「今度本人に聞いてみれば良いじゃないか」

 冗談っぽく言ってみた。

 「そんなの絶対嫌よ! あいつは私達の、敵よ」

 口では否定したが、ほんの少しだけ歯切れが悪かった。

 フランメも心のどこかでは、完全な敵と認めていない部分もあるのかもしれない。

 「それより、身体は平気なの? 以前、ミーレ師匠の技使って魔法使うの、しばらく禁止になったでしょ」

 「身体は平気、だと思う。だけど、周囲からのマナが得られなくなった。マナの流れとかは見えているんだが、うまく集められないって言うか」

 今も走りながら試しているが、普段通りには行かない。

 「残りの俺の魔力量も少ないし、使える魔法は限られてくるな」

 「それほどすごい魔法なんだね。それを平気に使ってるミーレ師匠はすごいんだね」

 フランメはどこか寂しそうな声だった。

 「今回、魔法を放つ時俺は、内心は外したらどうしようって少し不安だった。せっかく命を賭けて戦ってくれた、フランメとセリウスの頑張りを無駄にしたらどうしようって思って。気の焦りみたいなものがあったんだ。けど、その時に師匠が大丈夫って支えてくれた気がした」

 俺は上を眺めながら呟いた。

 「だから、いずれあの人に会う時は、お互い胸張って会えるようにならなきゃな」

 そう言って後ろを振り返った。

 「ええ、そうね。そのためにも、この戦いは勝たないとね!」

 

 階段を降り、廊下を歩いていると、先の方から風圧が飛んできた。

 戦いの場はもうすぐそこだ。

 「近いわね」

 「ああ、急ごう」

 走って廊下を進むと、やがて少し広い空間にでた。

 辿り着いたその場所で俺が目にした光景は、全く予想外のものだった。

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