第三十四話 ビフォーディサイシブバトル
今から約600年前にこの国は作られた。
1000年前の戦いでこの地は焼け野原になり、辺りは見渡す限りの荒野だった。
その場所を憂いた勇者クヴァールは最後の力を振り絞ってこの地を草木溢れる土地にしたと伝説で残っている。
それから400年の時が経ち、人々は豊かなこの地を求め多くの人が集まった。
そして勇者の意思を継いだ者達がこの場所に国を築いたのが後のエールトヌス王国である。
そして今日はそんな王国の誕生を祝う日でもある。
そう、建国祭だ。
今日を迎えるまでに色んな人々が準備に明け暮れてきた。
そのため、王都中が着飾られており、とても華やかである。
この建国祭は、他の国にも知れ渡っており、毎年沢山の観光客で溢れている。
毎年多くの人達で賑わっているのがいつもの風景らしい。
今年も既に多くの人達がこの王都へとやってきており道は人で溢れている。
建国祭当日は学園は休みになる。
先生達も色々と仕事があるので生徒にかまっている暇はないという事だ。
そのおかげでみんな祭りに出かけており、学園内に残っているのはごく僅かだ。
俺もそのうちの一人なんだけどな。
俺とセリウスの相部屋に、セレニテを除くみんなが集まっており、少し狭苦しい。
「せっかくの祭りなのに何で行かないのよ」
フランメが行きたそうにしながら問い詰めてる。
「別にまだ始まったばかりだろ、今から行かなくてもまだまだ先は長い」
「そうだけど、せっかくなんだから色々みんなで回りたいじゃん」
ブーブー文句を垂れる。
だがこれにはちゃんと理由があるのだ。
「フランメ、今日は長い一日になるからもう少し落ち着いてからにしよう」
「ちぇー」
「とりあえず暇だからカードゲームでもして遊ぶか」
そう言って俺はカードを机に出した。
それから俺たちはトランプみたいなカードで遊んでいた。
これは俺の自作だ。
この世界にはそう言った遊びがなかったので俺はそれを作る事にした。
そして完成したのがこのトランプみたいなものだ。
それを使って前世の記憶を頼りに色々なゲームをして遊んだ。
特に大富豪やババ抜きはルールも簡単でみんな楽しく遊べた。
そして夕方前まで遊んだ頃、
「って、もうこんな時間じゃん! 早く行こうよ!」
フランメがそろそろ限界を迎えていた。
「そうだな、そろそろ行く準備をするか」
セリウスが俺にアイコンタクトを送ってくる。
「じゃあまた後で正面の門で待ち合わせるとしましょう」
その言葉を受けエクレレとシュヴァリエが先に帰っていった。
「ほらフランメも準備してきなよ」
だが彼女は俺の方をジッと見ていた。
「リーベ、ひょっとして何か企んでる?」
「別に、どうしたんだ急に?」
「やけにあいつの行動が早かったし元々決めてたんじゃないの? この時間までここに居るって事」
鋭いモードの彼女になっている。
「たまにフランメは鋭い時があるよな」
セリウスが感心しながら言った。
「あー、ほらやっぱり! 何隠してるのよ、良いから話しなさいよ!」
胸ぐらを掴まれ前後に体を揺すられる。
てか痛い、力がこもってるよ。
「隠しているわけじゃない、お前が知っているとバレる危険性があるからだ。うっかり口に出されても困るからな」
「それは、確かにそうだけど……」
あれ、食いついてこないな。
意外と今までの事反省しているのだろうか。
するとバシッと叩かれた。
良い音が鳴ったな、めっちゃ痛いんだが。
背中がジンジンと痛む。
「黙ってた事はこれでおあいこよ」
だからって俺の方が痛い思いしてるんだけどな。
「すまないなフランメ、でもこれからは話して大丈夫だよなリーベスト?」
「ああ、頼む。今背中が痛くて話す気になれないや」
そうしてセリウスは今日の夜のタイミングで敵側が仕掛けてくる事を話した。
俺がこの前頭の中に流れてきたものを話す。
話を聞き終える頃には今まで以上にテンションが高くなっていた。
「確かに私が今聞かなかったらバレてたかもしれないね。だってそんな面白そうなことがあるって分かってて黙ってられないもん」
「とにかく夜だからな、はしゃがれて体力を使うのも勿体無かったからこの時間まで伏せてたって言うわけだ」
「だからまあ俺の殴られ損だな」
皮肉を込めて俺は言った。
流石に申し訳なさそうに謝ってくれる。
「ごめん、思いっきり叩いて」
「そんなに痛むなら後で治癒魔法かけてもらったらどうだ?」
「いや、それはセレニテに悪いだろう」
「そういえばあの子はずっと居ないけど何をしてるの?」
彼女がそう言った時だった。
思い切りよく部屋の扉が開く。
「お待たせしました! とりあえず作れるだけ作っておきました!」
そう言って彼女は容器に入った液体を持ってきた。
「ありがとうセレニテ。これで準備は整ったな」
「セレすごいね、それひょっとして回復用のポーション?」
「はい! 今日のために私いっぱい頑張りました」
「これで俺たちもある程度は奴らに対抗していけるだろう」
「よし、じゃあ改めて今日の作戦の確認をするために早くエクレレ達と合流しに行こう」
そうして俺たちは学園の正面の入り口の門に向かった。
「お待たせ二人とも」
「ちゃんと間に合ったんだな」
「ええ、それに、ようやく全員が事情を知ったみたいですね」
そう言ってエクレレはフランメを一瞥した。
「あんた達もやっぱ知ってたんだね」
「ええ、どこかの誰かさんは口を滑らせる危険があるからと口止めを提言したのはわたくしですから」
バチバチと火花が散る。
またいつもの様に言い合いが始まるな。
けど今はそんな事よりも大事な事がある。
「とりあえず、今日の事の最終確認をしたいんだけど良いかな?」
俺は二人に圧力をかけた。
今はそんなことしてる場合じゃないだろうと。
エクレレはどうぞ、と促したが、フランメはまだ睨んでいた。
はぁー、とため息を一つ吐いて俺は今日の作戦を伝える。
「じゃあまず今日の作戦の一番の肝は王様とサクレ王子の暗殺の阻止だ。何とか時間までに王城に潜入する必要があるが、そこはエクレレに任せて大丈夫なんだよな?」
「ええ、もちろんですよ。わたくしの大切な家族を無くすわけにはいきません、たとえエスピシオお兄様が相手だったとしても」
どうやら覚悟は決めているみたいだな。
今回の件で第二王子が敵対する事はもう分かっている事だからな。
余計な情でみんなが危険になる可能性だってある。
そこんとこの覚悟は決めておいて欲しかったが、これなら大丈夫だろう。
「次に、王都中で例のポーションを飲んだ人達が魔物になって暴れる可能性もあるから、その対処は騎士団の人達に従ってくれ。なるべく殺さないようにするとの事だからな」
全員が頷く。
この国で何も罪のない人達だ、国としても何とかして守りたいって事だろう。
「そして、敵の魔族、さらにはそいつらに加担しているグループの連中は捕虜、もしくは討伐との事だ」
正直こいつらに殺める覚悟があるかは分からない。
下手をすれば一生付き纏う呪いにもなり得るものだから。
だがみんなの眼には力強さがある。
ここはみんなを信じるしかないだろう。
「最後に、俺は多分学園長に妨害を受ける可能性が高い。何としてでもみんなと共に戦える様善処するが、もし間に合わなかったときは頼む」
「何言ってるんです、今までずっと最前線で戦ってきたはずじゃないですか。たまにはわたくし達にも出番が有っても良いのではなくて?」
「一緒の考えっていうのは癪だけど、この女の言う通りたまには私たちに任せて欲しいんだけど」
「みんなリーベストが思っているほど弱くはない。心配なのはわかるがそろそろ俺たちにも任せて欲しい」
「それより自分の心配をしておけ。アゼルが相手なんだろ? こっちは大丈夫だから」
「私もみんなの力になりますから、任せてください!」
みんな揃いも揃って頼もしいじゃないか。
確かに俺が思っているよりこいつらは強いんだな。
「分かったよ、ちゃんと信頼しているよ」
「とか言って、すぐ何でも自分で解決するくせに」
鋭い針で刺されたような痛みが胸にあった。
「気を使っているつもりだろうが、別にそんな事望んだ記憶はないしな」
もうひと針刺さる。
「使命感が強いのは分かるが抱え込みすぎだな」
「ただ真面目なだけですよ、自分で背負い込みすぎるくらいに」
さらに追撃の二つの針。
戦う前から俺のメンタルが削られていく。
「み、皆さん、リーベスト君が可哀想ですよ!」
いや、セレニテ、その言葉が一番傷つくんだが……
もう俺の残り体力は少ないぞ。
「みんな、そこまで言わなくても良いんじゃないか?」
「「「「いや、だって本当のことじゃん」」」」
……みんな根に持っていたんだな。
全員キレイにハモったし。
「悪かったよ、その、今回はちゃんとみんなの事信じてるからさ」
俺はみんなに向かって頭を下げた。
今までの独断専行の謝罪を込めて。
その姿にみんなは微笑んでいた。
「ちゃんと言質は取りましたよ」
「これでようやくみんなで戦えるな」
「心配性の鬼だったからな」
「頑固だしね」
「皆さん容赦がない……」
「まったくだ」
だからこそ俺はもう一度拳を前に出す。
それに気付きみんなも同じように拳を出す。
「じゃあ今日はみんなでお祭りを楽しもうぜ!!」
俺はニッと笑った。
それに釣られてみんなもニッと笑った。
「「「「「おー!!!!!」」」」」
そうして街へと繰り出した。
「準備は整っているか?」
「もちろんですサタナス様。今日をもってこの国の王も王子も、邪魔する者は全員消し去って見せます」
「そうか、例の物も頼んだぞ。あれがないと俺も本気が出せないからな」
「それに関しましてはこのバエルにお任せ下さい」
リーベスト達が動くと同時に敵も動き始める。
「よし、お前ら最終確認だ」
そこには6人で輪を作っていた。
その真ん中に陣取る男がこの場を仕切る。
「まずメロンジュは街で撹乱だ、騎士団の連中を絶対に王城へ近づけないようにしてくれ。中での任務が終わり次第そのまま合流だ」
「うん、了解したから」
「サディクは王様の暗殺を頼む。王城に潜入したら単独で動いてもらう事になる、場所は把握しているな?」
「もちろん」
「一応、中であいつの仲間が誘導してくれるはずだからそれについて行けばいい」
「了解、リーダー」
ギュッと拳を握りしめる。
その瞳は穏やかだが恐ろしい何かを感じさせる。
「今度はしくじるんじゃないぞ」
「分かってる、今日はあいついないんでしょ。だったら僕は負けない」
その言葉はどこか寂しさが隠れている。
「残りのみんなでこの国の外から撹乱だ、魔獣の数でこの国の戦士達の気を外へ釘付けにしておいてくれ」
「「「了解!!!」」」
そして一通り説明を終えると深く息を吐いた。
手の汗がいつも以上に出ていた。
どうやら緊張しているみたいだ。
それもそのはず、今から起こす事は国家の転覆。
しくじれば後世まで笑い者として語り継がれてしまう。
そんな事はしたくない。
俺だって何かを成し遂げることが出来るって証明してみせる。
そのために俺は悪魔と契約した。
この不条理な世界を壊すためなら悪魔にだってなってやる。
ガチャッと扉が開いた。
「皆さん、準備はできてますか?」
黒いローブを身に纏った男が入ってくる。
「ああ、もちろんだ」
俺に続いてみんなが立ち上がった。
この仲間達と共に俺は今日歴史を変える。
時刻は夕暮れ時、俺たちは国の屋台で遊んでいた。
さすがに祭りだけあって人が多い。
歩くので精一杯だ。
人混みは苦手だが、たまにはこういうのも悪くは無いかもしれない。
「ほら、次はあそこに行こ!」
袖を引っ張られ人混みを押しのける。
「そんな急がなくたって大丈夫だから」
「だって早くしないと始まっちゃうでしょ」
他のみんなとは一度別れている。
ずっと一緒だと怪しく思われるかもしれない。
あくまで今日は普通にしている様に見せておく必要がある。
こんなに人が多いと、どこに監視の目があるか分からないからな。
目的の屋台まで辿り着くと、そこにはグレンツェがいた。
「おやおや、お二人でデートの最中ですか?」
いつも通りのからかいで煽ってくる。
挨拶にしては随分だな。
「別にそんなんじゃないってば!」
こちらも相変わらずツンは健在だ。
「グレンツェも何やっているんだ?」
「何って、せっかくの稼ぎ時を黙って過ごすなんて商人としてダメでしょ?」
そう言って屋台を指さした。
ああ、なるほどと思った。
「こんな時も勤勉だな」
「そりゃ確かに怖いけど、そんな事に怯えるようじゃこの先やって行けないからね!」
「怖いって、今日何があるか知ってるの?」
「一応ね。だからこうして店やりながら全体見て、怪しい人がいたら知らせる事になってるんだ」
こっそり俺たちだけに聞こえるように耳打ちした。
本当勤勉なことだ。
「二人とも無理だけはしないでね」
そう言って少し悲しそうな顔をした。
「分かってるわよ、今日無事に終わったらまたご飯にでも行こ」
「そうだな、次はみんなでお疲れ様会でもしたいしな」
二人とも堂々とした口ぶりだった。
その姿がどう映ったのかは分からないが、驚いたような表情をした後、ニコッと笑った。
「ゼーッタイだからね、約束だよ!」
そして俺たちは三人で指切りをし、この場を後にした。
そして辺りがだいぶ暗くなった頃、俺たちは合流地点である王城前の広場に向かっていた。
「ねえ、リーベ」
するとフランメが話しかけてくる。
「今回の戦いで何か他に言いたい事あるんじゃないの?」
俺を見つめる目は真剣だった。
「今日はやけに鋭いな」
俺が感心したように告げるといつもなら誇らしげになるのに今日は違った。
「ずっと一緒にいたから分かるのよ。それに今日はちょっと、どこか余裕がないようにも見えるからさ」
「そうなのか? 自分ではいつも通りのつもりだったけど」
「いつもだったらもっと冗談を言ってふざけるじゃない」
言われてようやく気付くレベルの事だった
なるほど、これは敵わないな。
「なるほど、本当今日は戦う前から負けてばっかだな」
俺は天を仰いだ。
空には綺麗な星達が輝いている。
「フランメ実は頼みがあるんだ——」
この後の戦いで俺が見た事を告げ、そして今日の裏の目的を話した。
「———という事なんだ。多分嫌だって言うと思うけどやってくれるか?」
「嫌だって言うの分かってて何でそんな事言うのよ。大体あいつはリーベを殺しかけたんでしょ? それなのにどうして仲間にするって発想になるのよ」
「そうしないと良くない未来が待っているから、かな?」
「だから仲間にしたいと、本当無茶苦茶な事言うよね」
彼女は呆れていた。
けれど……
「でも頼むって事は意味があるんでしょ。だったらその頼み、ちゃんと受けてあげるわ」
いつもと違う街の景色がアクセントとなって彼女を照らした。
その姿にドキッと心臓が跳ね上がった。
何なんだろうか、この感覚は。
今まで感じた事がない不思議な物だった。
「なあフランメ…………」
俺が何か言おうとした時にその人は俺の視界に現れた。
一瞬で現実に引き戻される。
「何しに来たのよ」
敵意をむき出しにして彼女は睨んだ。
「リーベスト、ちょっとわしと祭りを楽しまんか?」
いつものような軽い感じは無い。
「こいつ、やっぱり邪魔しに……!?」
俺は彼女を腕で制止する。
「良いんだ、この人は多分本気で止めにくる。それよりも君だけでもみんなと合流した方がいい。余計な体力は使うべきじゃないだろう」
「でも、それじゃリーベは!!」
「大丈夫、すぐに追いつくから」
俺は目力で彼女を威圧した。
不本意だろうがここは俺だけで十分だ。
「分かった、絶対追いついて来なさいよ」
静かに告げ、フランメは先に進んだ。
「抵抗するなら今のうちじゃが?」
「ご冗談を、俺が抵抗しない理由くらいわかっているでしょう?」
ここで戦えば周りの人達を巻き込んでしまう。
それを承知の上でここで俺に接触しに来たんだろうからな。
「話が早くて助かるの。じゃあちょっくらついて来てくれ」
歩き始めると同時に王都の夜空に花火が打ち上がった。
そしてその時はやって来る。
今後はしばらく不定期投稿になります、すいません。
なるべく早めに書けるように頑張ります。
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