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変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第三章 王都学園編 〜守るべきモノと大切なモノ〜
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第三十二話 戦うための選択




 「ちょっと落ち着けフランメ!」

 「そうですよ、相手が何処にいるのかなんて分からないでしょう!」

 セリウスとエクレレがフランメに抱きついていた。

 いや、正確には必死に抑えてるのだが。

 それを意に返さず二人を引きずるフランメ。

 その顔は怒りに満ち溢れていた。

 「ちょっとリーベストも手伝ってください!」

 必死に俺に訴えかけてくるが、

 「いや、多分そうなったら誰の話も聞かないんだよな」

 と、半ば諦め気味に俺は呟いた。

 なぜこうなったか、それは少し前の事だ。


 −−−


 「と言う事で魔族の協力者らしきグループの頭と仲間は見つけれたんだ」

 昨日起きた出来事をみんなに話した。

 また俺だけが勝手に戦ったので、文句を言われる覚悟はしていた。

 「それで奴らはどうしたんだ?」

 ただそんな事はなく、セリウスが疑問を尋ねてくる。

 「最終的に3対1だからな、流石に捕まえることは出来なかった」

 「それに獣化が出来る獣人か、かなり厄介だな」

 「反魔法の中で獣人とやり合えるのは俺くらいか」

 「身体強化はできるんでしょ? だったら私も問題ないわ」

 「いや、奴らの力は単純な身体強化では難しいだろう。奴らのタフネスさはそれほど強力だ」

 各々が思っている事を議論していく。

 建設的な話し合いは大事な事だ。

 

 「で、リーベはその獣人と戦ったんでしょ? どうだったの?」

 「正直油断していた事は否めない。反魔法でも何とかなるだろうと思っていたけど、実際の獣人の強さはそんなもんじゃなかった」

 「それは少し無謀すぎじゃないか?」

 「お前、なぜ剣術を習ってるのに護身で持っていなかったんだ?」

 「それは、俺の失態だな……」

 男組にはなぜか責められている気がした。

 「まあ昨日はお兄様との対談でしたし、あまり敵対心のある物は失礼だと考えたのでしょう。それに、まさかそんな事が起こるだなんて考えてもいなかったですし」

 「そ、それに反魔法の結界なんて魔導具はなかなか出回らない物ですから、対策するのは結構難しいと思います」

 女組は俺の事をフォローしてくれた。

 うちのグループの女性陣はさすがだな。

 「いや、それでも万が一を考えて行動できないのは甘いと言わざるを得ない。これに懲りてきちんと準備を怠らない事だな」

 何でこいつはそんなにマウンティングを取りたがるんだよ。

 まったく、面倒臭い奴だ。

 「リーベが負けた……?」

 「ああ、まあ一回死んだな。時間魔法があったから何とか生き返れたけど」

 「反魔法で魔法が使えるのか? やはりあれにはそんな特別な力でもあるのか」

 「そうみたいだな、そうだと教えてもらった事を思い出したんだ。何か変な夢をみた気分だったが」

 あの時の「神(仮)」事は言わなくても良いか。

 話がややこしくなりそうだし。

 「死んだ……? リーベが殺された……?」

 「いや、生きてるぞ、おーい、フランメさん?」

 

 下を向いていた顔がまっすぐを向いた時、

 「ちょっとそいつぶっ飛ばしてくる」

 今までにないくらい目がつり上がっていた。

 体の後ろからメラメラと燃えているオーラを感じる。

 まずい、完全にブチギレている。

 こうなるとなかなか冷めないからやばい。

 「落ち着けって、今は逃げられたから何処にいるかなんてわからないからさ」

 「そんなの探して見つけ出して、そいつの事丸焼きにしてやる」

 だめだ、完全に理性を失っている。

 「おいやめろ、そんな事したら目立ってしまうだろ」

 「セリウスの言う通りですよ、一度落ち着きなさい」

 「うるさい!! リーベをこんな目に合わしたんだから見つけてボコボコにして灰になるまで燃やしてやる!」

 「おい、フランメを何とか止めるぞ!」


 −−−


 そうして今に至ると言うわけだ。

 フランメの暴走モードはたまにある事だ。

 大抵はすぐに落ち着くのだが、ここまで激しいと落ち着かせるまでに下手すりゃ怪我人が出かねない。

 何とかして落ち着けたいんだけど。

 あっ、そういえばこの学園には、彼女を抑えるのに適した人がいるじゃないか。

 「すまんみんな、頑張って抑えててくれ!」

 「ちょ、どこ行くんですか!?」

 「すぐ戻ってくるから」

 そう言って俺は駆け出した。

 今のフランメを止められるのは学園長しかいない。



 俺が急いで連れてきた時にはもう決壊寸前の川みたいだった。

 今にも溢れ出しそうな怒りで見境なく攻撃しそうな勢いがある。

 「まったく、急に呼び出すとは何事かと思ったが、こんな下らん事の為にわしを連れてきたんか!」

 「まあまあ、そんなこと言わずお願いしますよ。止めてくれたらちゃんとお礼はしますから」

 「まったく、お主ほどわしをぞんざいに扱う奴は見た事がないの」

 「いやー、それほどでも」

 俺はテヘッと悪戯な顔をした。

 「お主がそんな顔すると気味が悪いの」

 「ちょっと、それはひどいんじゃないですか?」

 俺だってまだ12歳の可愛い少年だぞ。

 「ちょっと、早く止めてもらえません?!」

 切羽詰まった大声でエクレレに催促された。

 じゃああとはお願いします、と俺はジェスチャーで合図した。

 「はぁー、わしをこんな便利屋みたいに使いおって、覚えておれよ」

 最後はボソッと聞こえない程度に呟いた。

 まあ一応聞こえたんだがな。

 そうして重力魔法でフランメを地面に拘束した。

 ドンッと鈍い音と同時に地面が軋む。

 「くそ! はーなーせー!!!!」

 まるで血に飢えた野獣だな。

 これは当分時間がかかりそうだ。


 −−−


 ギャーギャーともがいていたフランメだったが、しばらく時間が経つと次第に大人しくなってきた。

 「わたくし達でも止めるのがやっとだったと言うのに、やはり重力魔法はすごいですね」

 エクレレは感心したようにそう呟いた。

 「しかもこれだけ長時間展開し続けれるのも相当な技術がないと無理だな」

 「私たちじゃできないですね」

 と、セリウスとセレニテが褒める。

 すると学園長の顔が緩み出した。

 「どうじゃ、わしはすごいじゃろ? これにはちゃんとコツがあるんじゃよ」

 完全に緩みきっている。

 さっきまで面倒臭がってたくせに、ちょっと褒められたくらいでコロッと態度を変えやがって。

 ちょろ過ぎだろ、このロリババア。

 

 「で、何でこいつはこんなに暴れっとたんじゃ?」

 フランメが落ち着いたのを確認し、魔法を解除したロリババアはそう尋ねてきた。

 一応視線でみんなに確認を取ってからエクレレが話を切り出した。

 「実は昨日のことなんですが……」

 彼女は昨日の夜の事を一部ぼやかしつつ伝えた。

 俺の魔法の事とかは相手サイドに伝わる可能性があるので話さずにいる、賢明な判断だ。

 ちゃんと話すべき事を抑えて話している。

 それにしても…………

 「ぶわっはっはっはっはっは、リーベストお主負けたのか、わっはっはっはっはっは!!」

 笑いすぎだろ!

 何かめっちゃムカつくんだけど、殴って良いかな。

 「はあー、面白いの、獣人相手に魔法が使えなくてそれで簡単にやられるなんての。お主の師匠がそんなこと知ったら叩き直しに飛んでくるぞい」

 うっ、それはあり得る。

 師匠の事だ、きっと半殺し程度で済むわけがない。

 「てか私とリーベの師匠の事、あんた知ってたんだ」

 落ち着きを取り戻したフランメが恨めしそうに質問した。

 「当然じゃ、初めて戦った時から気づいておったわい。お主ら二人の魔法の扱いは、今のこの世界ではレベルが違い過ぎてるでな、それにこいつのマナの使い方を見れば答えは簡単じゃ」

 「なんだ、隠そうとして損した」

 「でもそれは相手にもバレてるんじゃないのか?」

 「そうだな、誰かさんが話してるからな」

 そう言って俺はロリババアを睨んだ。

 するとテヘッと舌を出して頭を小突いた。

 さっきの俺への仕返しのつもりなのだろうか。

 何か無性にイラッとするんだよな。

 「ロリ……学園長がそんな顔をすると気持ち悪いですね」

 ならばこちらも先程のお返しと言わんばかりに俺は毒を吐いた。

 「おい、それはどう言う事じゃ! それに今お主、わしを馬鹿にした呼び名で呼ぼうとしとったじゃろ!」

 「イエソンナコトハアリマセンヨ」

 「絶対嘘じゃろ、助けてもらっといてそれはないじゃろ!」

 ギャーギャーと騒ぐ俺とロリババア。

 その姿を見てみんなポカンとしている。

 「リーベストにもこんな一面があるんだな」

 「年相応の姿が見れて良いんじゃないですか」

 「はぁー、どこぞの誰かと同じだな」

 「ねえ、それって私に言ってんの? シュヴァリエ」

 「二人ともお、おち、落ち着いてください」

 本当騒がしい奴らだ。



 「ところで、反魔法ってそんなに厄介なの?」

 騒ぎが落ち着いたところでフランメが質問をする。

 「厄介どころではない、この世界で魔法が使えないというのは手足を無くしたと言っても同然だ」

 セリウスが忌々しそうに答える。

 どこか言い方に棘を感じたのは気のせいだろうか。

 「元々魔法が使えない俺からしてみればなんて事はない、みんな魔法に甘えすぎなだけだ」

 「何だと?」

 バチバチと二人の視線が火花を散らす。

 「なんじゃ、反魔法で困っとるならお前たちの身近な存在に聞いてみれば良いじゃろ」

 「それってどう言う意味でしょうか?」

 確かに俺の身近な人で反魔法に詳しい人なんていないような気がするけどな。

 「そのまんまじゃよ、お前たちの担任のソージュに聞けば良いって事じゃ。あいつは昔「掠奪者(ピヤージェファム)と呼ばれとって有名だったんじゃぞ?」

 その言葉にみんなが驚いた。

 まさかあのソージュ先生に、そんな仰々しい二つ名が付くくらい荒々しい時があったなんて。

 「でも確かに初日、フランメが魔法力のテストの紙を燃やした時ソージュ先生が魔導具で魔法を消していたような」

 セリウスのその話を聞いて俺もあっ、と思い出した。

 「そいつは多分、あいつの得意な反魔法を魔法陣に描いて道具にくっつけたやつじゃな。あいつは魔法陣もちゃんと描けるからな。それに知っておるか? あいつ、あんな性格をして実は趣味がおかしを作る……」

 

 「私の趣味が、何ですか?」

 その言葉で場の空気が凍りついた。

 そして鋭い目つきで睨んでいるソージュ先生がそこにはいた。

 「いや、えっとじゃな、これは、その……」

 「またあなたが魔法を使っているから何事かと思えば、まさかそんなどうでもいい事を話しているとは思わなかったな」

 ダラダラダラダラ、と大量の冷や汗が流れ落ちていくのが分かる。

 これはまるで蛇に睨まれた蛙のような構図だな。

 御愁傷様、みんなも余計な事は口にしないように気を付けよう。

 「それで、お前たちはまた無茶な事でも相談しているのか?」

 呆れ気味にソージュ先生は聞いてきた。

 彼女にとって俺たちは問題児ということになっているみたいだ。

 「いえ、その、反魔法について色々とお聞きした事がありまして」

 「反魔法か、しかしそれを今聞いて何になると言うのだ? お前たち、特にリーベストは色々と問題を起こしすぎだ。本来、学生の立場で突っ込んではいけない所まで突っ込んでいるし、確かにそこの人外のせいで危険に対するハードルが下がっているのは否めないが、今みたいに危険に立ち向かおうとする奴が出てくるから、本当は生徒にそこの人外を会わせたくないのだ。そこまで命の危険を取るような行動は本来、お前たちが15歳になってから学園が許可するのであって、今のお前たちがそれをするには我々にも責任というものがある。言ってる事は理解できるよな?」

 まあ言ってる事は理解できる。

 15歳になればこの世界では成人する事になっており、学園も18歳までは受け入れているが、実際は15歳になれば仕事に就くという形で卒業できる仕組みにもなっている。

 それまでは大事な生徒だから命の危険な所へ行かれては困るというわけだろう。

 だが、俺はそんな事を顧みず魔族と戦おうとしている。

 学園側とすれば良しとしないだろう。


 「言ってる意味は理解できますが、それでも僕は今まで色々な敵を見てきました。その敵たちを目の当たりにしてきて、このまま黙って過ごすことはできないと思っています」

 「それはこの先でも良いだろう? なぜそうまでして焦る必要がある?」

 「この先って僕たちが15歳になってからですか? そんな悠長に構えられるほど今のこの国の状況は芳しくありません。今だって魔族たちがこの国を乗っ取ろうとして色々画策をたて動いているんです。それを黙って特訓して見てろだなんて僕には到底できません」

 決意は固いと見せるために俺は彼女にガンとした視線を飛ばす。

 揺るがない信念を持ちながら。

 すると彼女はため息を吐き、頭の後ろに手を回した。

 「どうやら国が秘密にしたい所までお前は知っているようだな。全く、生徒をそんな危険な目に合わせるなんて、碌でも無い奴がこの学園にはいるようだな」

 ビクッとロリババアは肩をすくめ彼女を恐る恐る見た。

 「だがこれ以上は流石に庇ってはやれないぞ。それにお前たちも一緒だからな」

 俺以外のみんなを見てソージュ先生は警告した。

 「それは別に構いません、わたくし達にも譲れない物はありますから」

 「魔族の事を知ってしまった以上、傍観するなんて事はできませんので」

 「別に死ななきゃ良いだけだもんね」

 「迷惑をかけるのはこの国を救うための必要経費だと思っていただきたい」

 「私もみんなと戦うって決めてますから」

 警告に対する答えをそれぞれ彼女に伝える。

 こいつらが仲間であることは頼もしい限りだ、そう思った。

 「安心せい、わしの権限でお前たちは退学になんてさせんからの」

 さっきまで萎縮していたのに自分がどうにか出来るとあって強気な態度で示す。

 その宣言にみんな喜び、はしゃいだ。

 ソージュ先生は頭を抱えてもう一度ため息を吐いた。

 俺もみんなに強制的に輪に加えられた。


 「それは、あなたの約束のため、ですか?」

 喧騒の中、静かに彼女は告げた。

 「まあ、そんな所じゃの」

 「本当に彼らが勇者クヴァールの予見した者達だとでも?」

 「それは今後のあいつら次第なんじゃよ。だからあいつらにはこれから先もどんどん困難に立ち向かって行ってもらわねばならんのじゃ」

 一体どういう事だ?

 1000年前の勇者が何だっていうのだ?

 声が聞き取りにくい。

 「だから今回の件もあの子達を巻き込むと?」

 「そうじゃな、お主にはまた迷惑をかける事になるじゃろう」

 「それは今に始まった事じゃないので今更、ですね」

 「それもそうじゃな、じゃから頼んだぞ」

 「本当にどうなっても知りませんよ?」

 「わーっとるわい、信頼してるから頼むんじゃ。当然の事じゃな」

 「それであなたは今回何を企んでいるのです?」

 「ちょうど要請が来とるし、リーベストの妨害じゃな。あいつはもう十分育ったから今回は他の奴らに成長してもらおうと思っとる」

 含みのある笑みをする。

 「そうですか、あの子達のことちゃんと見守っていてくださいよ」

 「任せておけ。それにしてもその口調何とかならんのか?」

 「癖みたいなものなんでしょう。じゃあ私はこれで失礼します」

 「ああ、お疲れさんじゃ」


 ソージュ先生はそのまま帰っていった。

 上手く聞き取れなかったが、何か企んでいる事は伝わってきた。

 今度は一体何をしてくるのだろうか。

 「これお前達、騒ぐんじゃったらよそでやらんか!」

 いつものノリで俺たちの輪の中に混ざってきた。

 この人外が何を考えているのかなんて俺にはさっぱり分からない。

 ただ、俺たちを育てようとしてくれているのは確かだ。

 だからもし、次戦いが起こるとすれば、今度は俺以外のみんながこの悪魔の思惑に乗せられるのかもしれないな。

 

 

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