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変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第二章 王都学園編 〜忍び寄る悪意〜
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第二十五話 新たな戦いへ



 −−−


 「う、ん? ここは?」

 目を覚ますとそこはベッドの上だった。

 外から差し込んでくる光の角度が高いのでお昼くらいかなと思った。

 傷の具合は良く、身体がだるいくらいで痛みはすっかり消えていた。

 あの日から一体どれくらいの時間が経ったのだろうか?

 

 「あら、お目覚めですか?」

 今の様子を確認していたらとある女性が入ってきた。

 雰囲気は落ち着いており、それでいて若々しさを感じる。

 よく見ると耳が長いのでエルフなんだと思い若々しさに納得した。

 それにしても本を読んでいる姿が似合いそうな佇まいだ。

 「えっと、ここは一体? それにあなたはどちら様でしょうか?」

 「これは失礼しました、私はゲリールと言います。それにここは王都にある診療所ですよ」

 「診療所といえば、ひょっとして母様が昔働いていた所ですか?」

 「そうです、あなたの母であるイーデルも昔ここで働いていましたよ。あの半人前だった頃が懐かしいですね」

 半人前、この言葉に俺は頭の中で思ってしまう。

 イーデルも今は齢40だ。

 半人前という事はそれよりも前からって事だから今は何歳なんだろうと。

 エルフが長命の種族である事は当然分かっているのだが……。

 だが地雷を踏むのは良くない、ここは黙っておこう。

 

 「僕はどれくらいここにいるのでしょうか?」

 「運ばれてきたのが一昨日の夜だったので一日と半日ぐらいでしょうか?」

 そうか、そんなに寝ていたのか。

 昨日学園をサボった事になったのだろうか。

 ふとそんな事を考えてしまった。

 「運ばれてきた時は血液を失ってましたし、体のマナも色々混ざり合ってグチャグチャになってましたし、治療をするのも大変でしたよ」

 グチャグチャって……

 「そんなに僕のマナはおかしかったですか?」

 恐る恐る俺は尋ねた。

 「ええ、あれ程のものは初めて見ました。しかし既にバラバラだったマナたちが馴染んでいるので不思議なんですよね」

 頭を捻りながら彼女はそう告げた。

 今は確かに身体の中のマナが落ち着いているように感じる。

 「ただし、様子見として今後十日間は魔法を使うのを禁止します」

 「え??」

 魔法禁止だって?

 こちらの世界に来てここ最近はずっと魔法を使って生活してきたのでなかなかしんどそうだ。

 「もし使ってしまったら、どうなるんですか?」

 「またマナが暴走する危険があるのでどうなるか分かりませんよ? 私も初めて見る症状ですから」

 ……そういうのであればここは大人しくじっとしておこう。


 夕方になると俺が起きたとの噂を聞いてみんなが訪れに来てくれた。

 セリウスとエクレレにはしっかり怒られた。

 「何で僕たちに相談しなかったんだ!」とか「抜け駆けでずるいですよ!」とか、どっちかというと自分達に内緒で魔族と戦いに行った事に対してだが。

 普通はもっと怖がるはずだが、二人ともロリババアで魔族に対する耐性がついてきているのだろうか?

 「時間がなかったんだからしょうがないでしょ!」とフランメがフォローするが、二人とも納得していないようだ。


 「そういえば、先ほどまで元気がありませんでしたがリーベストが目覚めたと分かった瞬間に元気になりましたね」

 そのフォローに対するちょっかいかは分からないがイタズラに笑いながら話題を変えるエクレレ。

 「は、はぁー?! 別に普通だったから! 何言ってんのよ、デタラメ言わないでよ!」

 顔を真っ赤にしながら反論している。

 その様子がおかしくてエクレレは笑っている。

 「何笑ってるのよ!!」

 「二人とも、ここでは静かにしないとダメじゃないか!」

 そのやり取りを見かねたセリウスが注意する。

 フランメはそれでも納得いかないって顔だったが俺も同調するように、

 「フランメ、俺病人だから静かにしてほしいな」

 というと、その言葉に不満をグッと堪えて「分かった」と言って黙り込んだ。

 その様子を見てさらにクスクスとエクレレは笑っていた。


 「それで戦ってみてどうだったんだ?」

 「正直強かった、と思う。何も対策なしで攻めるとあっさりやられる可能性が高い」

 「今回相手に勝てたのもリーベのおかげだったし、申し訳ないなって」

 「いや、俺もフランメに助けてもらわなかったらどうなっていたか。あれがなかったらやられてたのは俺の方さ」

 「とにかく、まだまだ私たちでは実力不足だという事ですね」

 「うーん、それはどうかな? 実力不足って言うよりも弱点を知らないだけなんじゃないかな?」

 「弱点ですか?」

 「そんなものがあると思うのか?」

 「魔法の攻撃は通用してたからな。それに学園長並の防御魔法でもフランメの攻撃は通ったんだし、こっちからの攻撃自体は通用するはずだ。それに再生してる時は恐らくだが魔法が使えないんじゃないか?」

 ロリババアの時も、今回も奴らの再生力は脅威だと思っていた。

 しかし誰もが再生のタイミングで反撃をしてこなかった。

 再生し終えてから攻撃をしていた。

 もしかすると同時に使えない理由があるのかもしれない。

 「なるほど、言われてみたらそうだったような気もする。それが本当だったとしたら対策を立てる事は可能だな」

 「そういう意味で言えば収穫はあったと言った所ですね」

 収穫、か。

 生きてなかったらそんな事は言えなかったけどな。

 それでもこうしてまたみんなで集まれたことは何よりだ。


 しばらく談笑し、すっかり日も暮れたのでみんなが帰っていった。

 部屋にはフランメと二人きりになった。

 「リーベ、凄かったね。何てったってミーレ師匠のあの技使っちゃうんだもん!」

 興奮気味にそう話す。

 「いや、あの時は必死だったから正直あんまり覚えていないんだ。ただ自分の中で師匠が力を貸してくれたような、そんな気がしたんだ」

 傷もしてたし、胸も破裂しそうだしで限界だった。

 それでも死にかけの時に不思議と力が湧いてきた。

 生に縋り付いたおかげで限界を超えたんじゃないかと思う。

 所謂火事場の馬鹿力ってやつだな。

 「そうだったんだ。あー、私ももっとミーレ師匠に色々教えて貰えばよかったなー」

 「今のフランメを見たら、『君はもっと頑張る必要があるね』って正直に言いそうだけどな」

 「あはは、確かに言いそうだね! 本当厳しかったからなー」

 二人で師匠の話をして盛り上がった。

 「でもまた会いたいよね、ミーレ師匠」

 「ああ、今もちゃんと見てくれてるのかな?」

 会える保証はないが、それでも毎日あの魔力玉に魔力を注ぐことは忘れていない。

 ここしばらくは無理そうだが、また俺の体が大丈夫になれば続けるつもりだ。

 「良い事があるかもしれない」その言葉を信じて。


 −−−


 フランメも帰りそろそろ寝ようとした時だった。

 窓から風を感じ視線を向けると一人の少女が立っていた。

 そのまま飛び降りて俺の前に着地し、置いてあった椅子にどっこらせと言って腰をかけた。

 「そんな見た目のくせに中身はおばあちゃんですね」

 「そうなんじゃ、もう何をするにも辛くての」

 1000年以上も昔から生きているのに今更な気もするが。

 てか年老いる事なんて有り得るんだろうか?

 「人知れずここに来るのなんて大変なんじゃぞ?」

 「だからこんな時間にきたんですね。危うく眠りにつく所でしたよ」

 話があるなら早く済ませてくれ。

 遠回しに俺はそう言った。

 「わしは睡眠なんか必要としておらんでな、だからこうして夜風に当たりながら過ごすのが……」

 「用事がないんだったら俺は寝ますね」

 「ちょっと待てーい。わーったから、ったくせっかちなやつじゃな」

 まったく、こんな夜中に来られるだけでも迷惑なのに。

 大した話もないんだったら来なくても良いじゃないか。

 「時間の価値観は違うんだから当然でしょう」

 「まあそれもそうじゃな」

 「それで何か用ですか?」

 「大した用ではないんじゃが、この前の戦いは見事じゃったなと言いにきたんじゃ」

 「……どっから見てたんですか?」

 あの時この人の気配なんか感じなかったけどな。

 俺は怪しい目で彼女を見る。

 「わしが直接見とったわけではないが見ておったぞ」

 直接見てない?

 てことは何かの魔導具でも使ったんだろうか。

 そうするとあの時視た何もしてこなかった敵はロリババアの使いだったって事か?

 まあそんな事は聞かなくていいか。

 「それで、あなたの娯楽としてどうだったんですか?」

 「正直驚いたぞい。まさか倒したこともそうじゃがエルミーレの技まで使うとはの」

 俺はその事を聞いて少し動揺した。

 「まさか、師匠のことを知ってるんですか?」

 「ああ、よーく知っておる。個人的に色々とあいつとは因縁があるもんでな」

 「例えばどんな事が?」

 「それはわしがいう事ではないからの。聞きたいならあいつに直接聞くんじゃな」

 言い方がいつもと違ってトゲがある。

 本当何があったんだろう?

 教えてくれたって良いってのに、意地悪なババアだ。

 でも、どうしてシャイデマンの話になると機嫌が悪くなるのかという理由がわかった気がする。

 それにしても師匠は下界にはあまり干渉しないって言ってたけど、魔族相手には別なのかな。

 俺の時も助けてくれたし。

 まあでも因縁は深そうな気もするが。


 「ところでいつから戻ってくるんじゃ?」

 「一応あと十日間は様子見だって言われました。なのでそれまでは学園を休む事になります」

 「うむ、ソージュにもそう伝えておくとしよう」

 「そうだ、学園長とソージュ先生ってどういう関係なんですか?」

 「そうじゃな、難しいところじゃが先生と生徒みたいなもんじゃよ」

 先生と生徒?

 つまりソージュ先生をこのロリババアが教えてたってことか?

 「それはソージュ先生があそこまで辛辣になるわけですね」

 「おいちょっと待て、それはどういう意味じゃ?!」

 「大変だなーってことですよ」

 「何じゃそれは?! お主、ゼーッタイわしのこと馬鹿にしておるじゃろ!」

 ぷりぷりと怒るロリババア。

 見た目だけなら絵面は可愛いんだが、1000歳越えのアラサザンがやってるとなると……うん、無理だわ。


 「もういい、わしゃ帰る!」

 いじられた事に対し拗ねたのかようやく帰り支度をする。

 「じゃあ気をつけて帰ってくださいね。こんな夜中にそんな()()が歩いてたら攫われるかもしれないので」

 「言い方がそう思っとらんのじゃよまったく」

 そう言って、来た窓から出て行こうとする。

 「そうじゃ、最後にもう一つ。まだまだこの国のピンチは変わっとらんでな、せいぜい油断しない事じゃ!」

 「は!? それってどういう意味——」

 「ではさらばじゃ!」

 捨て台詞だけ吐いていきやがってあのロリババア……。

 彼女が去った窓から暖かい夜風が吹き込んでくる。

 この国のピンチはまだ終わってない。

 何かのアドバイスか?

 それにしてもあの人の中身が読めない。

 俺たちにアドバイスしてくれたと思ったら、こっちの戦力情報が敵にも筒抜けだったり。

 「一体何が目的なんだ?」

 俺の独り言が誰もいない部屋に消えていった。


 −−−


 それから十日が経ち、俺は無事に学園に戻ってきた。

 早速ソージュ先生からの呼び出しを食らったが。


 「それで、学園をこれだけ休むほどの怪我とは一体何をしたんだ?」

 落ち着き払った声で尋ねてくる。

 「この国を脅かしていた魔族と戦いました。おかげさまで死に目を見ましたが」

 ソージュ先生はロリババアの事を知っているので魔族の事は知っているはずだ。

 そう思った俺は今回の事を正直に話した。

 「それはフランメから聞いている。その中で気になるのはどうやって魔族を倒したかだ。今の私たちでは基本不可能だからな、それをお前のような子供が倒したというのは俄には信じ難い」

 「そりゃそうだと思います」

 俺はあっさり肯定した。

 実際自分でもギリギリだったし、どっちが死んでもおかしくなかったからな。

 「そんなお前を育てたのがどんな人物か気になるが、その実力なら正直この学園にいる意味はあまりないと思うがな」

 ソージュ先生はそう言い、少し呆れたような顔をした。

 「いえ、それでも今の生活は嫌いではないので。それにあいつらと共にこの世界を支配しようとする魔族と戦っていく事を決めたので、この先もこの学園に居続けるつもりです。それにここには情報もありますからね」

 「そうか。ただあまり無茶はするなよ」

 ソージュ先生は俺たちのこれからやる事に対して咎めたりしなかった。

 むしろ生徒である俺たちがやろうとしてる姿にどこかもどかしさを感じている、そんな顔をしていた。

 「それと、もしお前がこれ以上の魔法を学びたければ()()学園長を頼るといい」

 それはちょっと、と俺は思った。

 「それは何というか、信用しにくいですし、敵に実力を見せる事になるんじゃないですか?」

 俺は思った事を包み隠さず打ち明けた。

 「確かに立場上、敵に情報が漏れる可能性は否めないがそれでもやる事はやる人だ。お前たちを指導するくらいはしてくれるさ」

 「それってどういう事ですか?」

 「あの人は私たちの味方でもあるという事だ」

 それだけ言って先生は踵を返し歩いて行った。

 味方でもある、その言葉の真相はこの時まだ分からなかった。

 

 

 次の日、俺はヘンドラーに呼ばれジィーベン商会を訪れていた。

 無事退院したのでお礼がしたいとの事だが、ヘンドラーもグレンツェも俺の入院中どうやら国外へ仕事に行っていたのでタイミングが合わなかった。

 あんな事件が起きたのにすぐに仕事をするあの人のバイタリティというかメンタル面に恐れ入る。


 建物の2階に行くとこの前と同じでグレンツェが既に待っていた。

 グレンツェは俺を見つけると猛ダッシュで寄ってきてそのまま俺に飛びついてきた。

 いや、正確にはタックルと言った方がいいか。

 俺はあまりの衝撃によろめいたが何とかこらえる。

 「リーベも父様も二人とも無事で本当に良かったよーー!!」

 号泣である。

 俺たちの事をよほど心配してくれてたみたいだ。

 俺は対応に困りつつも、

 「心配かけたな、グレンツェ」

 そう微笑む事しか出来なかった。

 


 「少し落ち着いたか?」

 「うん、ありがとう」

 しばらく俺の胸で泣いていたが、次第に落ち着きを取り戻したみたいで、今は泣き止んでいる。

 俺は先程の感覚を思い出す。

 まあそれはさておき、あまり待てせるのも仕方ないと思ったのでヘンドラーのところへ行くよう促した。

 その言葉に「そうだった!」と言い、俺を彼の所へ案内する。

 「それじゃこちらへどうぞ!」

 いつも通りの可愛らしい笑顔に戻った。


 「ご苦労だリーベスト、早速だがかけてくれ」

 着席を促されたので俺は部屋のソファに腰掛ける。

 「まずは先日の件で世話になったな、その事に感謝を」

 そう言って深々と頭を下げられた。

 「そんな、顔を上げてください。親族として当然の事をしたまでですよ。それに父様も必ずそうしたはずですから」

 「それもそうだな。だがお前達がいなければ私は助かっていなかった。本当に助かったよ」

 そう言ってもう一度頭を下げる。

 俺はどうして良いか分からず戸惑った。

 彼らはすぐに仕事で外へ出て行っており、挨拶が出来なかったということで今日商会に来るように言われた。

 まさかここまで謝罪されると何かこっちが申し訳なくなってくる。


 「怪我は大丈夫なんだな?」

 「はい、おかげさまで。そう言えば伯父様も足を怪我していたはずじゃ……」

 「あの時の傷は君が魔族を倒した魔法を使ったあと、光の粒に触れた瞬間に治ったんだ。だから今は大丈夫だ。それにしても一体どんな魔法を使ったというんだね?」

 「あの魔法は僕の師匠が教えてくれた魔法だったのですが、まさかそんな効果があったとは知りませんでした」

 フランメの毒の事といい治癒の効果もあるのだろうか?

 そんな事師匠教えてくれなかったけどな。

 「そうだったのか。それにしても本当にベルンハルトが言った通り、君は魔法の天才だな」

 それ以上あの魔法については深く聞いてこなかった。

 むしろどこか誇らしげに俺を見ている。

 この人に褒められるとちょっと嬉しい気がする。

 

 「それと今日来てもらったのはもう一つ理由がある」

 先程とは違い顔が険しくなる。

 これから話す事は重要だと思えるほど。

 「その理由を聞かせてもらっても良いですか?」

 「実はお前達が助けに来る前にあの魔族の言っていた事だが、あのポーションを使って奴らはこの王都を魔物だらけにしてクーデターを起こそうとしていた」

 「クーデター!?」

 俺は驚いたが、その時ふとあの言葉を思い出した。

 この国のピンチは変わってないと。

 「奴らはその混乱に乗じ第一王子のサクレ王子とエールトヌス王を殺害しようと計画していた。そしてこの国を乗っ取って世界を支配しようとしている。まあ、あの魔族の野望は消えたがまだ油断はできないだろう」

 「そうですね。実は今更言うのもなんですが、僕が通っている学園も魔族によって支配されています。この事を今証明する事は出来ないので信じて頂くしかありませんが、その魔族もまだこの国のピンチは変わってないと言っていました」

 「何? 学園にも魔族がいるだと?」

 「ええ、しかもお伽噺に出てきた魔王軍三大幹部のうちの一人であるアゼルです」

 「え? アゼルってあの勇者達と戦ったって言う?」

 アゼルという単語にグレンツェは驚いた。

 俺はグレンツェの言葉に頷く。

 「そんな魔族が学園を裏で支配しているのか。普通なら信じられないが今この国に起きている出来事やあの魔族が言ってたことを考えるとその考えを改めねばならんな」

 ここ最近の魔族の動きは活発になっている。

 水面下で密かに進んでいた計画が着々と進んでいるのだろう。

 何としなくても止めなければこの国は魔族によって支配されてしまう。

 その為には今までの考えを脱ぎ捨て、新たな考えをする必要があるとヘンドラーは感じている。


 「とりあえずこれからは私が信用できる者達にこの事を伝えて行こうと思う」

 「うまく連携を取らないと情報が漏れる危険性もあります。どこに奴らが潜んでいるかはまだはっきりしていませんから」

 「そうだな、これからはなるべく定期的にこうして話す機会を設ける必要がありそうだ。その時はまたよろしく頼んだぞ」

 「分かりました、くれぐれもお互い気を付けましょう。 相手はどんな手を使ってくるか分からないので」

 「ああ、リーベストも気を付けるんだぞ」

 

 「それでは失礼します」

 今回のヘンドラーの話で魔族の目的がはっきりしたのは収穫だな。

 ポーションを使ってのクーデターなんてそんな知能が高い事を魔族だけでするとは思えない。

 何かこの1000年で変わる何かが起きたんだろうか。

 どうもそう思えて仕方ない。

 ただ奴らを止めるだけでは根本的な解決になるのかという疑問が生まれる。

 この世界はかなり複雑に思惑が絡み合っているみたいだ。


 「リーベどうしたの?」

 声の方へ向くと、出口まで案内してくれているグレンツェが俺の事をジッと見つめていた。

 「あ、ああ、何でもない、ただ考え事をしてただけだ」

 それでもこちらをジッと見てくる。

 その視線は何か脅しのようなものだった。

 「はぁー、今後の事についてだよ。色々厄介だなって」

 俺はその脅しに負け、ため息を吐いて話した。

 「そうだね。何も知らないって幸せなんだなって思ったよ」

 「世の中は知らないほうがいい事もある。知ってしまえばそれがまとわりついてずっと苦しめられるからな。それでも立ち向かう強さがある人間はそうそういるもんじゃない」

 「確かに怖くなっちゃうもんね。今までの当たり前が実は間違ってたなんて認めたくもないだろうし。本当どうしてみんなもっと素直に生きれないんだろうね。お互いの事邪険に捉えちゃってさ、自分達の勝手な考えに世界を巻き込んで」

 「強さを手に入れた事で次なる価値を求めているんじゃないか? 満たされずにただ退屈が怖いだけで」

 俺はその者たちが求める価値のために巻き込まれたうちの一人。

 ならば精一杯抗ってみたい。

 何でもうまく行くと思っている奴らに氷水をかぶせて考えを改めさせるように、魔族共に思い知らせたい。

 俺たちには戦える力があるって事を。

 ならばとことんやってやる、そう決意した。


 出口を過ぎ、建物の外に出る。

 もう辺りはすっかり夜だった。

 「じゃあまた今度な。

 俺は外まで見送ってくれたグレンツェに礼をした。

 「うん、リーベもこれから大変だと思うけど頑張ってね!」

 俺は学園の寮に帰ろうとした。

 その時、グレンツェに呼び止められた。

 「あ、待って! リーベにお礼をまだしてなかったや」

 別にそんな事気にしなくて良いのに、と俺は思った。

 「お礼って、別に良いんだけどな」

 俺はグレンツェの方に向き直り、何だろう? と思っていた。

 すると俺の方に近寄ってきて袖を掴まれる。

 そのまま引っ張られると、柔らかい感触が頬を刺激する。

 

 「?!?」

 「じゃあね、おやすみなさい!」

 そう言って急いで中に帰っていった。

 「……マジかよ……」

 俺は何が起きたか理解できずその場に佇んでいた。

 すると、夏の暖かい風が頬を撫でていった。 

 

 

ここまで読んで頂き有難うございました!

これで第二章の物語は終わりです。

次の三章ではリーベスト達と、ある勢力の戦いがメインとなる予定です。

次の三章の最初は登場人物をまとめたいと思います。

時間が欲しいので少し期間が空きますが10日までお休みします。申し訳ありません!

是非また読んで頂けると嬉しいです!

それではまた!


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