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変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第二章 王都学園編 〜忍び寄る悪意〜
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第二十四話 VSクランプス 後編




 さて、どう攻めるか。

 魔族だけならまだしも、今はあの魔物がいるな。

 「リーベスト、気を付けろ。あいつはさっき『魔王の血』を使えば魔物が強化されると言っていた。もしかすると今までのやつより手強い可能性がある」

 所謂強個体値ってやつか、再生力でも上がっているのか?

 試してみるか。

 「フランメ、魔族の気を引いてくれるか? 俺はあの魔物を早めに片付けて加勢する」

 「別にゆっくりでも大丈夫だよ。あいつは私が倒すからさ」

 相変わらずどこからそんな自信が出て来るんだか。

 だけどここはお前を信じさせてもらうぞ。

 「一応あの鎖は気を付けろ。何か嫌なオーラがある」

 「分かってる。あれはできれば食らいたくはないかな」

 「何をさっきからヒソヒソと、どのみちお前達は痛めつけて、美しく殺してやるから安心しろ」

 うざいくらいに美しいを連呼するな。


 そんな事を思っていると、先ほどから何もしてこなかった魔物が攻撃してきた。

 ゴーレムのような体型から繰り出されるパンチは建物が倒壊したと思うくらいの迫力があった。

 その攻撃を二人それぞれ逆の方に避ける。

 俺はそのまま敵を建物の外へと誘導する。

 建物はさっきの魔物が動いた事で天井が突き抜けている。

 「まずは私を傷つけた例をしなければな!」

 鎖が鞭のようにしなり、フランメに襲いかかった。

 それをフランメはかわしたり炎拳で弾き返す。

 そして地面に着地と同時に踏み込んで距離を詰めるにかかる。

 しかし、鎖が行く手を阻みまともに近づくことが出来なかった。


 「炎の拳に素早いスピード。お前がアゼル様に喧嘩を売った少女か」

 「それがどうしたって言うの?」

 「散々ボコられたって話じゃないか。その姿、是非とも見たいと思ってたんだがまさか今日この場所で叶うとは思わなかったな」

 「さっきから思ってたんだけどあんたってさ、めちゃくちゃ気持ち悪いよね。気持ち悪すぎて吐き気がするんだけど」

 「気持ち悪いだと? この私の美しさを分からないだと? この下等生物が、例え侮辱するやつは少女であっても許さんぞ!!」

 「別に良いよ、分かりたくもないし」

 

 

 ドゴッ! ボガン!!

 魔物は次々にパンチを繰り出してくるが、動きは大雑把でかつ単調。

 多少のスピードはあるが避け切れないほどではない。

 (風翼の矢(ウイングアロー)!)

 得意のウイングアローに時間魔法の時間加速(アケラティオ)を重ね貫く。

 ドゴン! と音がし、魔物の胸を貫通した。

 少し気を緩めたが、魔物が動き出したのですぐに態勢を作って攻撃を回避する。

 (マジか、胸貫通したんだけどな)

 その貫通した所は既に再生が始まっていた。

 (胸が弱点ではないのか)

 この生き物の仕組みを理解しないと急所をつけない。

 「思ったより厄介だな」

 これはすぐに助けに行けないかもな。

 頼むぞフランメ、何とか俺が行くまで持ち堪えていてくれよ。



 「そらそらそらそら!!」

 デタラメに振り回されたように見える鎖はちゃんとした軌道を描いてフランメに次々と襲いかかった。

 回避と炎拳で何とか攻撃を凌ぐフランメだが、ジワジワと体力が削れていく。

 「どうした? 威勢がいい割に大した事ないな」

 「鬱陶しい、ほんと近付けなくするなんてビビってんじゃないの?」

 「お前は近接戦以外大した事がないって話だから当然だ。そうしてジワジワ痛めつけた方が良い顔になるだろ?」

 「いちいち気持ち悪いなー。でも近距離以外大した事ないって情報はもうだいぶ前の話だけどね!」

 そう言って炎を拳に纏い螺旋炎を放つ。

 「むっ!?」

 飛んできた炎を鎖でガードし、すぐに反撃をしてくる。

 それを交わして、左右の拳に炎を纏って連続で撃ち放つ。

 「ふん!」

 それも上手くガードする。

 この魔族は戦い慣れているとフランメは感じた。

 「確かに聞いていた話と違うようだな。だが所詮はこの程度、まだまだ私の敵ではない!!」

 魔力を込めて鎖がさらに伸びる。

 「このままお前を美しくしてやろう」

 先程とはまた違ったオーラを放っていた。

 「ほんっと鬱陶しいね」

 口では強がっていたものの、このままではまずいと思った。

 (リーベお願い、早くして……!)



 さっきから探っているがなかなか致命傷に至る攻撃が与えられない。

 くそ、このままじゃジリ貧だな。

 早くしないとフランメがまずい。

 もしかしたら「時間遡行」で元の人の状態に戻せるかもって少し思っていたが、やる隙も無いしこれ以上は時間と体力の無駄だな。

 この人には悪いがここで死んでもらおう。

 

 「時間持続(クロノスタシス)

 

 魔物の動きが止まった。

 正確には1秒を引き伸ばしているだけだが。

 その隙に魔力を集める。

 (これじゃ足りない。もっと、もっとだ!)

 既に時間魔法を発動しており、集めた途端にそっちに奪われていく。

 「くっ」

 こんなんじゃダメだ、そう思い周囲のマナを竜巻のようなイメージで集める。

 (もっと感じるんだ。周囲のマナを、激しく俺の元に集めるように!)

 「はあああああ!」

 するとマナの流れが可視化出来るほどの光を帯びて俺の辺りを包み込んだ。



 「これは一体!?」


 「何だ、このマナの流れは!?」

 「ミーレ師匠……? いや、リーベなの?」

 二人の手が止まり全員が俺の方にあるマナの流れに視線を向けた。


 そんな事は気にせず、俺は目の前の魔物を全て集中していた。

 (この感じ、どこか懐かしいな)

 体にマナが巻き付いているようなこの姿に既視感を覚えていた。

 「そうか、あいつがアゼル様が言ってた『世界を均す者(シャイデマン)』の弟子か! その光は見るだけで忌々しい!」

 クランプスは叫んだ。

 遠いはずのやつの声も聞こえてくる。

 あのロリババアめ、こっちの情報をペラペラと話やがって。

 やはりあのロリババアは信用できないな。

 それでも自然と怒りは湧いてこなかった。

 自分でもすごく落ち着いているのが分かる。


 さて、そろそろ終わりにするか。

 俺はこのマナを全て魔力に変換し、魔法を願った。


 「消滅する時間(クロノ・アルパガス)


 捉えていた魔物の時間を奪い存在そのものを消す。

 物理的な攻撃ではないため再生も不可能だ。

 マナがある限りそれは止まることは無い。

 そのまま魔物は朽ち果てていき、塵となって消えていった。


 その様子を確認した魔族は動揺していた。

「まさか、人間如きが私の美しい魔物を消す事などあり得ない! 何だ今の魔法は!?」

 俺はそのまま二人のところにやってきた。

 その驚きと初めて見せる恐怖の感情。

 ああ、やはり見下されてきた相手が恐怖に怯える姿は気分が良い。

 「次はお前の番だ」

 俺は死神のような笑顔で近づいていった。

 「リーベ??」

 フランメは俺じゃない何かを感じ取っていた。

 「調子に乗るなよ、下等生物が!!」 

 魔力を最大に込めた鎖が襲いかかってくる。

 避ける隙間がないほどの多角的な攻撃だった。

 しかし、「時間停止」で鎖を交わし、ウイングアローを十数発打ち込んだ。 


 「ぐはっ! こんな、私が、美しい私がこんな者なんかに……!」

 「それが現実だ、このままお前を消し飛ばす」

 マナから魔力へ変換し、奴が再生しきる前に決着をつけようと思った。


 「!?」

 急に心臓が破裂するかのような激痛に襲われた。

 口からは大量の血が出てくる。

 (な、なんだ、一体?)

 「リーベ!!?」

 フランメが心配して駆け寄ってきた。

 「くくく、ははははははは、所詮やはり下等生物、大量のマナにその身体が耐えきれてないじゃないか! そのまま楽にしてやるぞ!」

 張り巡らされた鎖が鞭のように襲ってきた。

 俺は身体を何とか動かして回避を試みたが、身体に激痛が走り立ち尽くしてしまった。

 「まずい……! リーベ危ない!!」

 俺を弾いた瞬間に彼女は鎖の攻撃を受けてしまった。


 「フランメー!!」

 彼女の身体には鎖が当たった箇所から毒みたいなものが広がるようにして侵食していた。

 「はっ! 自分を犠牲にしてその男を守るとはな」

 「お前、一体フランメに何をした!?」

 「それは毒の呪いだ。直にそいつの身体は全身が毒に塗れやがて死ぬ」

 何だと? それじゃフランメがまずい!

 さっきと違って、形勢が傾いた事に奴は喜びを表している。

 「くそ、フランメ大丈夫か?」

 「ごめんリーベ、また迷惑かけちゃった」

 「何を言ってるんだ。俺を助けなきゃお前がそうならずに済んだのに……」

 「私が助けたかったんだからしょうがないじゃん。だからお願いリーベ、あいつに勝ってきて……!」

 「……任せろ」

 俺は奴の方に向き直った。


 「ああ、こうしてまた私の中で美しい物が作り上がっていく。素晴らしい、素晴らしいぞ!」

 興奮気味に話すクランプス。

 「さあ、次はお前の番だ、忌々しい天使に愛された人間。お前はどんな美しい姿を私に見せてくれるのだ?」

 「黙っていろこの世のクズが。お前は俺が絶対にこの世から消し去ってやるよ」

 そして最終ラウンドのゴングが鳴る。


 「そこの奴と同じようにお前も毒に侵されるが良い!」

 部屋を埋め尽くすかのように鎖が四方八方から襲いかかってくる。

 あまりマナを集め過ぎると今度は何が起こるか分からない。

 自分が元から持っているマナで一気に仕掛けないと。

 俺は「未来視」を駆使しながら相手の攻撃を避ける。

 これだけの長さを正確に操っているってことはこの鎖を魔力かなにかで操作しているはず。

 つまり俺の動きを読んで攻撃してるって事だ。

 「どうした? さっきから避けてばかりじゃないか。そんな事で私に勝とうなど1000年早いぞ!」

 さらに攻撃と攻撃のインターバルが短くなる。

 このままじゃ相手のペースだ。

 何とか回避をしたが、着地の瞬間に胸に激痛が走りバランスを崩してしまう。

  

 (しまった……!)

 クランプスはその瞬間を待っていたと言わんばかりに口角を釣り上げた。

 「隙がありすぎだぞ!」

 襲ってくる鎖をウインドルーフェンを使って弾き返すが、押し返せずに再び迫り来る。

 チッ! と左袖をかすった。

 するとその箇所から毒が侵食してくる。

 「ちっ、しまった」

 舌打ちをし、服を脱ぎ捨てる。

 すると傷を受けた箇所から毒が侵食していく。


 「そんな怖い顔をしなくともお前もその服みたいになる。抵抗をやめておとなしくすれば私のコレクションとして可愛がってやる」

 「それはとんだ罰ゲームだな。それなら死んだほうがマシに思えるぜ」

 俺は嘲笑を飛ばした。

 その言葉にクランプスはカチンときたのか、

 「そうか、だったらさっさと死ね!!」

 と叫び再び全方位の攻撃をしてくる。

 交わしてもキリが無いなら捌いていくしかない。

 「風の剣(ウインドソード)

 風の剣を形成し構える。

 こんな物、リヒャルトの剣術に比べればなんて事はない!


 「今更そんなんもの無意味だ!」

 手を緩める事なく鎖を飛ばしてくる。

 俺は「未来視」を再度発動し、攻撃が来るタイミングを予測する。

 「柔剣流奥義 流杖取(りゅうじょうしゅ)

 迫ってくる鎖を風の剣で内外に捌いていく。

 風の剣に対しては毒が侵食してくることもなかった。

 さっきフランメが魔法で弾いていたので、魔法なら大丈夫という俺の予想は当たっていたな。

 何か発動のトリガーがあるのかもしれない。

 だが今はそんな事考えている暇はない。

 カンッ、カンッ! と攻撃を捌きながらひたすら突き進んでいく。

 徐々に詰まる距離に先ほどまでの余裕がなくなってきたのか、攻撃の勢いが増す。


 「くそ、どうなっている!?」

 確かに剣術だけならこの猛攻は防げないだろう。

 しかし俺には未来を視る事ができる。

 攻撃のタイミングさえわかれば捌く事は容易だ。

 ただひたすら鎖を弾く音が鳴り響く。

 「お前は魔法の発動が遅いだけの奴のはずだ!」

 「それもあのロリババアに聞いたのか? 残念だがそれは勘違いだ」

 鎖の速さもベルンハルトの剣速に比べれば遅い。

 今まで積んできた経験が身を結んでいる事を実感できていた。

 そして奴の懐に潜り込み、剣を打ち込む。

 風の剣によってクランプスの身体を一閃した。

 しかし傷は浅い。

 そのまま追撃をするが剣が弾き飛ばされていた。


 「調子に乗るなよ! そんな攻撃私にはきかない!」

 そう言って鎖を捨て、鞭の様な物を握っていた。

 俺はもう一度風の剣を形成し構える。

 「ここからは手加減などしない、全員もろとも死んでしまえ!」


 すると、奴が持っていた鞭が伸び部屋中を無差別に攻撃し出した。

 先ほどよりも早く攻撃が絶えず続けられる。

 「フフフフフフ、ハハハハハハハハ!!」

 無数の連打に壊れかかっていた建物が全て崩れる。

 俺は急いでフランメとヘンドラーを抱えて外へと退避する。

 

 「くっ、ガハッ!」

 フランメは血を吐き苦しそうな表情をしている。

 「!? ヘンドラー伯父様、大丈夫ですか?!」

 「ああ、気にするな、助かったよ」

 そういうが足が変な方に曲がっている。

 さっきの倒壊で瓦礫が当たったのか。

 でも今はその事を悔やんでいる場合ではない。

 今やるべきことはあの魔族を倒す事だ。


 「本当にしぶとい奴らだ」

 低く怒りに満ちた声だった。

 「これだけ私の手を煩わせた奴は久しぶりだ。美しさのかけらが無い、そんな奴が私の前に立っているなど不愉快だ!」

 しなる鞭で瓦礫を叩き壊す。

 「俺もお前たちのしぶとさに辟易しているさ」

 俺はため息混じりに呟いた。

 「だったらこれで終わりにしてやる!」

 鞭の長さが伸びていき、やがて攻撃をしてくる。

 鞭は意識を伴っているかのように動きにムダがない。

 捌いても捌ききれない手数の多さ。

 さっきの鎖よりも明確に威力が上がっている。

 次第に捌ききれなくなっていき攻撃を受ける回数が増える。

 「ぐぅ……この!」

 身体強化を限界まで高め、無理やり押し返していく。

 「さっきまでの動きはどこへ行った? 精彩を欠いているぞ!」

 最初のうちは拮抗していたが徐々に体力の限界が近づく。

 捌ききれていた攻撃も捌ききれなくなりとうとう一発デカいのをもらってしまう。

 

 ブシュッ、と血飛沫が音を立てて身体から吹き出す。

 追撃の攻撃を受け止めようとしたが力が入らずに弾き飛ばされ、そのまま地面に背中から落ち呼吸が出来なくなる。

 背中も胸にも鈍痛が走り、右の脇腹は焼けるように痛い。

 なぜここまで痛い思いをしなければいけないのかと挫けそうになる。

 「ここまでよく頑張ったな。今の人間にしてはだが」

 止めを刺すべく大きく振りかぶった。

 (ちくしょう!こんな所で俺は……!)

 その時、死を感じた俺は走馬灯が視界に流れてくる。

 今までの景色が次々と映画のエンドロールみたいに。

 その時、あの日魔族との戦いで師匠が使った魔法を思い出した。

 なぜそれを使おうとしたのかは分からない。

 今まで成功した事は無かったにも関わらず。

 ただ、身体の中にある師匠のマナが光り輝いているように感じた。

 

 持てる力を振り絞り、脳内の麻薬成分を分泌させて痛みを紛らわす。

 「死ね!!」

 振り下ろされた鞭を横っ飛びで回避し、そのまま立ち上がった。

 「しぶとい奴だ、だがもう限界……」

 立ち上がった俺の姿を見てクランプスは言葉に詰まった。

 その異様な雰囲気を感じ取ったのだろう。

 俺の中のマナと師匠のマナが混ざっていくのを感じる。

 その時に俺を包み込む風が発生した。

 「お前、一体何をするつもりだ!?」

 慌てて止めを刺そうとするがその風に阻まれて弾かれる。

 その風に連れられマナも集まってきている。

 恐らく()()を撃てば魔力切れで俺は倒れるだろう。

 何となくの感覚だったがそんな気がした。

 魔力を集めると指先が光りだす。

 それを頭上で円を描き、描いた円を握りつぶした。

 拳が潰れた光で溢れる。

 そして体の中にあった師匠のマナから力を借りて魔法を発動させる。


 「裁きの光杖キニートシャーシュラグ!!」


 手を振り下ろすと同時に光の柱が相手に降り注いだ。

 「ぐああああああ!! この技はあいつの!? なぜ、なぜお前が、この技を使える?!」

 「なぜと言われても俺にもよく分かってない。ただ今だったら撃てる、そう思っただけだ」

 「ふざけるな、そんな簡単なものでは……! この、下等生物の分際がー!!!!」

 「叫んだ所でお前は消える。この技はそういう技だ」

 相手を悪だと感じる者がいないと成立しないが、ここにはそう思っている者がいる。

 その悪の対象は他でもない、クランプス自身だ。

 その悪の根源を焼き切る魔法だからこのまま奴は滅びるだろう。

 「そんな、バカな……私は、こんな所で、人間なん、か、に……」

 消滅していくクランプス。

 ようやくこの戦いが終わる。

 「じゃあな。お前のその姿、美しいと思うぜ」

 光の粒が夜空に舞い上がりキラキラと輝いていた。


  

 「あーあー、あいつ負けちゃったじゃん」

 「まさか、学園の生徒に魔族を倒せるあんな奴がいたとはな」

 「確かにあの実力は想定外でしたが計画に狂いはないでしょう。それに良いサンプルも見れた所ですし」

 「けどせっかくあのおじさん攫ったのに、これじゃ無駄足ってやつじゃんか」

 三人の男達は戦いの場所から遠くの場所で見ていた。

 そしてクランプスが倒された事に全く悲しむ様子を見せずに一人の男は告げた。

 「ええそうですね。ですが彼を責めないであげてください。我々のための礎になってくれたのですから」

 「まあ、僕たちの計画に邪魔が入らないんだったらそれで良いけどさ」

 一人の少年は頭の後ろで手を組み少し気怠そうに呟く。

 「大丈夫だろ。あとはその日が来るのを待つだけだからな」

 最後の一人が少年を窘めるように諭した。

 「では、参りましょうか」

 そう言って男たちは闇に消えていくのだった。

 そんな中少年は魔族を倒した一人の少年を見つめていた。

 「リーベスト・ドミニアン、君とはまたそのうち会う気がするよ」

 そう独り言ち闇に消えていくのだった。

 逃れられない運命、そのようなものを感じていた。


 −−−

 

 戦いが終わり、俺は地面に倒れ込んだ。

 やばい、視界が覚束ない。

 魔力切れを起こし、気分も悪い。

 いや、痛みも相まってもう何が何だか分からなかった。

 (二人は? そうだ、早くフランメの毒をなんとかしないと……あれ?)

 そのまま意識が飛びそうになる。

 「……!! ーべ!! リーベ!!!」

 薄らと彼女の顔が見える。

 「リーベ、しっかりして!!」

 「フランメ?? 毒で寝てたんじゃ?」

 「さっきの光浴びたら毒なんて無くなったわ! そんなことよりもリーベが……!」

 「多分大丈夫だ。それより、魔力切れでもう限界だ」

 「フランメ、とにかく急いで王都へ運ぼう。出血もかなりしているから早く診療所で診てもらった方が良い」

 「う……じゃなくて、分かりました!」

 やばい、本格的に意識がなくなってきた。

 二人が何か会話をしているが何を話しているかが分からない。

 (ああ、月が綺麗だ)

 湖の上で満月が明るく照らしていた。

 そしてフランメに背負われ王都へと向かった。

 その背中で俺は眠るようにして意識が飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


 

 

 

 

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