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変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第二章 王都学園編 〜忍び寄る悪意〜
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第十九話 情報収集




 「じゃあ、魔法の使い方からまずはおさらいしていこう」

 次の日、俺はこの学校での魔法の使い方と、師匠が教えてくれた魔法の使い方の違いをわかってもらうため、みんなで魔法の練習をしていた。


 魔法の詠唱はつまり安全装置だとセリウスは言っていた。

 その安全装置に何らかの仕掛けがあるのではないかと思っているのだが、まずはそれを確かめたい。

 「セリウスとか、エクレレはどうやって使っているんだ?」

 「僕のイメージは広く大きくって感じだ。そうやって今まで教わってきたからな」

 「わたくしもそう教えられてきました。そうしないと失敗すると」

 ふむ、俺が師匠に聞いた話とは逆だな。

 ちなみに俺はハナにイメージが大事としか教わっていなかった。

 広く大きくというのは初めて聞いた気がするな。

 「私たちは細く絞る感じだったよね?」

 「うん、やっぱり逆なんだな。でも確かに俺たちのやり方のほうが魔力コントロールは難しいかもしれない。まあ、その代わり魔力は少なくても強い威力が発揮できるって事なんだろうけど」

 「フランメの魔法のあの威力はそう何発も使えるとは思わないしな」

 「私は元々の魔力量も多いからね」

 誇らしげに鼻を鳴らした。

 「それもそうですが、リーベストの魔法も普通じゃありませんわね」

 「そうだな。俺はちょっと特殊な魔法だし、魔力の使い方もみんなと違うからな」

 「特殊な魔法?」

 「ああ、実は『神贈の恵与(ギフト)』と呼ばれる力の魔法なんだ。あまりバレたくなかったからみんなには黙ってた、すまない」

 俺はその時間魔法についてみんなに詳しく話した。


 「なるほど、それならあの時の現象が理解できますね」

 「僕も納得だ。だがそうなるとますますリーベストが同い年に思えなくなるな」

 「心配しなくてもちゃんと12歳だよ。それにしても、みんな案外驚かないんだな」

 「わたくしは、サクレお兄様が『神贈の恵与』の力を持っていますから、割と身近な存在ですの」

 「確かに初めて使ってる人を見たからもちろん驚いているが、この世界では誰かが持っているわけだしな」

 二人とも受け入れてくれてるみたいで安心した。

 だが、先ほどからなかなかシュヴァリエが会話に混ざってこない。

 「君はさっきから会話に混ざらないが、何かあるのか?」

 セリウス、ナイスだ。

 俺に対してなぜかシュヴァインの風当たりが強い気がする。

 「別に何もない。ただ俺は魔法の扱いが苦手で話すこともないだけだ。剣術なら話は別だが」

 ジロッと俺の方を見てくる。

 やっぱ何かしたかな?

 全く記憶に無いのだが。

 「とにかく、リーベストとフランメの魔法の使い方を実践してみましょう」

 

 みんな魔法を細く絞る練習をする。

 一応暴発すると危険だから、魔法をレジストする魔導具を持ってきた。

 過去にこの実技棟で事故が起きたみたいで、その対策で学校側に要請すれば貰える事になっている。

 それにしても師匠がいればそんな心配が必要なかったから、ちょっと大変だな。

 

 「それにしても、セリウスって魔法扱うの上手いよね」

 フランメはセリウスに関心していた。

 それもそのはずで、彼は今日のたった数時間で大体マスターしていた。

 「そうだな、繊細なコントロールが得意なんだと思う。フランメとは大違いだ」

 俺は感心して彼を褒めたが、後半が気に食わなかったのか彼女は俺の横腹を殴ってきた。

 痛がる俺にフンッて言いながらそっぽを向いた。

 だって本当のことじゃん。

 対するエクレレは何というか、魔法を使うこと自体ぎこちない気がする。

 「エクレレ、どうかしたか? 何かぎこちないように見えるけど」

 「あら、やはり分かりますか? 恥ずかしながら実はわたくし、四大属性の魔法を使うのは苦手なんです。治癒魔法とか付与魔法といったサポート系の魔法なら大丈夫なんですが」

 なるほど、それは大変だな。

 とりあえず付与魔法を試してもらったら、発動速度とか、魔力変換とかはスムーズにできていた。

 例えるなら、付与魔法は普通に歩ける感じで、四大属性の魔法を使う時は怪我をした人みたいに歩様がぎこちない感じだ。

 とりあえず今日の所はこのくらいで、また明日もお互いの情報を共有していくとしよう。


 「じゃあ遅くなったし、帰ろうか」

 「ああ、みんなお疲れ」

 「それじゃあまた明日ですね」

 それぞれが帰路につく中、フランメは俺の所に残った。

 

 「リーベ、明日から私の特訓に付き合って」

 熱い眼差しだ。

 「わかった、何をしたいんだ?」

 「遠くの敵をやっつける方法を見つけたい」

 なるほど、昨日の戦いがよっぽど悔しいんだな。

 「何か良い方法でもあるのか?」

 「わかんない、でも今のままじゃダメだから」

 「そうだな、とりあえず明日の朝とかでも付き合うよ。午後はみんなと特訓があるし」

 「わかった」

 

 それにしても随分と落ち着いてる。

 今までならもっと騒いでたはずだが。

 現実を知ってどう思ったかはわからないが、これが果たしてどっちに転ぶかだな。

 

 「リーベは帰らないの?」

 「ごめんだけど、先に帰ってもらえるか? まだやりたい事があるから」

 「そう、気を付けてね」

 それ以上深追いはしてこなかった。

 何かあると気付いているはずだが…。

 彼女のそういった優しさに感謝だな。

 (さてと、じゃあ行くか)

 フランメを見送って、俺はとある場所へ向かった。


 学園のとある場所に来た俺は、その端にある長い階段を登り終え、一つの部屋の前に来た。

 扉をノックすると、中から声が聞こえる。

 「入ってええぞ」

 促され、俺は室内へと入っていった。


 「こんな時間にわしに何か用か?」

 まるで来る事が分かってたって顔をしている。

 妙に苛立ちを覚える。

 「別に、寂しそうだからお茶を飲みに来てあげただけですよ」

 素気ない返事で軽口を叩いた。

 「全く素直じゃないのー。わしに話があって来たんじゃないのかえ?」

 そういって二人分のお茶を入れる。

 「気にならない、と言えば嘘になりますが、どうして俺達を試すようなことをしたのかと思って」

 「そんな事か、まあ特に意味はなかったんじゃがの。お主らの実力が知りたかっただけじゃ」

 俺はソファに着席を促されたのでそのまま腰かけた。

 わざわざ丁寧にお菓子まで用意してくれてる。

 そして彼女も俺の前に腰掛けた。

 念のため、食べた後の未来を確認してると、

 「毒なんて入っとらんから、気にするでないぞ」

 と、自分が入れたお茶を啜りながら教えてくれた。

 俺が魔法を使ってることなどお見通しのようだ。

 ふざけてるように見えて結構鋭い。

 「一応の確認ですよ、学園長の事はまだ信用してないので」

 「信用してない割にはあっさり訪ねて来よったくせにの。それで、本当は何を聞きに来たんじゃ?」

 「じゃあ聞きますが、学園長はどうして俺達生徒に危害を加えない約束なんてしてるんですか?」

 「その話か。別に生徒だけではない、この学園の者に危害を加えない約束なんじゃ。元々この学園はわしが作ったのではなく、人間たちの作ったものでそれをわしら魔族が乗っ取り、今の体制を作ったというわけじゃ。もちろん人間共も反抗はしたが、わしらの実力でひれ伏させた。その時に奴らを手下にしたんじゃが、わしはこの人間たちに手を出せないようにされたんじゃ。それが今も残っとるからじゃよ」

 そう簡単に説明してくれた。

 だが、この話もまだ何か伝えてない部分が隠されていそうな気がした。

 けど今は深く聞いている暇もないし、興味もない。

 「でも、それこそ実力でどうにかできるんじゃないのですか?」

 「案外これが厄介での、人間はたまにわしらの想像を超えたものを作り出すからわしに解除できんのじゃよ」

 「なるほど、500年前だとまだ魔法力は衰えていないはずですもんね」

 「そういう事じゃな。それにしても、お主はその当時と比べても遜色のない魔法を使っておったの」

 「そう教え込まれましたから」

 俺は入れてもらったお茶を口にした。

 うん、美味い。

 

 「それは『世界を均す者(シャイデマン)』にか?」

 彼女は身を前に乗り出してジッと見てきた。

 俺はカップを置いてアゼルを見た。

 その言葉を言う時の目はやはりいつもと違う。

 それに、さっきまでと違い空気が少し張り詰める。

 「そう思いますか? もしそうだとしたらどうするつもりですか?」

 俺は逆に聞き返した。

 するとため息をついて後ろに寄りかかった。

 「そもそも自然のマナを利用出来るやつなどそうおらんからの。それに加えてあの魔法、どうせ『神贈の恵与』の力じゃろ? それだけでお前が奴らに選ばれたと言うのが分かる。かつて1000年前の勇者がそうであったようにの」

 「そんな昔に生きてたんですね」

 アラハンどころかアラサザンじゃないか。

 ババアの域を越えているな。

 もう一度お茶を口にした。

 うん、やっぱり美味しい。

 「お主、今しょうもない事考えとるな? まあ、そう言うわけじゃからお主には手を出したくとも手を出せんのじゃ。学園の約束もそうじゃが、奴らがどうせ邪魔しに来るからの」 

 「随分と因縁がありそうですね」

 「そりゃもうずっと昔からの。あれは——————…」


 とりあえずここからの話は老人によくある武勇伝語りに突入したので軽く聞き流しておく。

 「…———と、言うわけなんじゃよ。」

 「へぇー、そんな過去があったんですね」

 俺は軽く流してこの話を完結させた。

 それが気に食わなかったのか、

 「お主、ちゃんと聞いておったか?」

 と、ジト目でこっちを見て来たので、

 「大丈夫ですよ、ちゃんと聞いてましたから」

 と、営業スマイルで乗り切るのだった。

 

 「それで、今後俺達の事はどうするんですか?」

 これから俺たちは魔族と戦っていくかもしれない。

 その時にこの人は必ず障害として俺たちの邪魔をしてくるかもしれない。

 「わしがお主らの邪魔をするかも、と言う意味で捉えても構わんのじゃな?」

 俺は頷いた。

 「基本わしは傍観のつもりじゃよ。前にも言ったがお主らがどこまでやれるか楽しみじゃからな」

 基本傍観、ね。

 「たとえ魔族の仲間を減らす事になっても、ですか?」

 「別に下っ端が減ったところでどうとにでもなる。むしろそれくらいしてもらわんとわしらが楽しくならんでな。せいぜい頑張る事じゃな」

 余裕、態度からはそう読み取れる。

 そもそもお前たちにやれるのかと訴えているようにも感じる。

 実際奴らの戦闘力は結構高いからな。

 今のままでは大変だろうし、やはりそれぞれが強くなる必要があるな。

 それに、傍観だと言ったが全く信用する気もない。

 ただ、信用はしないが利用はさせてもらう。


 「分かりました、では今日はこれで」

 「あー、ちょっと待つんじゃ」

 部屋から出ようとすると呼び止められた。

 その顔からは何か企んでいますと伝えているようだった。

 「お主、最近の王都での事件について知りたがっていたじゃろ?」

 「ええ、でもそれは商業について調べてみろとかって話でしたよね?」

 「おー、そういえばそうじゃった、そんな事も言っとったな」

 そんな事って、忘れてたのかよ。

 掴みようのない人だ。

 「その事じゃが、この王都で有名な所を調べるとええかもしれんな。そうすれば答えが見つかるかもしれんでな。じゃがあんまりのんびりしておると取り返しがつかん事になるかもしれんぞ?」

 そう言って俺を試すかのように微笑んでいる。

 「アドバイスありがとうございます。それと、あまり急かされるのは好きじゃないんですけど、その安い挑発に乗るとしましょう」

 そうして部屋の扉を開け、

 「そうだ、お茶とお菓子ごちそうさまでした。」

 そう言って部屋を後にした。


 どうやら思ったよりも状況は芳しくなさそうだ。

 とにかく商業に関しては商人の人に聞くといいだろう。

 幸い俺にはベルンハルトのツテでコネはあるからな。

 それもこの大陸で一番有名な商会が。

 「今度ジィーベン商会に挨拶に行くから、その時にでも情報が得られれば良いんだけどな」

 ベルンハルトの兄、ヘンドラー・ドミニアンに会いに。


 

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