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変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第二章 王都学園編 〜忍び寄る悪意〜
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第十六話 渦巻く陰謀




 エクレレ・エールトヌス。

 この子がそうだったのか。

 ベルンハルトに確か王女が俺と同い年だって教えてもらった気がする。

 まさかこの学園に通っていたとはな。

 それにしても、本当に美しい顔立ちに透き通るような可愛い声だ。

 これは貴族の人たちがみんな許嫁にしたがるのもよく分かる。

 

 「何で一王女がこの学園に?」

 「あら、王女が通ってはいけない理由などないはずですよ」

 「それは確かに、そうだが……」

 「それに、わたくしだって魔法についてもっとたくさん知りたい事があります。王宮ではそんな事教えてくれる人はいませんが、世界最大級のこの学園ならそれが学べると考えています」

 セリウスの疑問を的確についた答えだった。

 その答えに納得したのか、彼は口を噤んだ。

 そして俺の方に身体を向けてくる。

 「初めましてリーベストさん、貴方のことは父上のベルンハルト様より存じ上げております」

 丁寧で精錬された動作に少し目が奪われてしまった。

 俺も慌てて挨拶をし返す。

 「こちらこそ初めまして、あなたの噂も父様を通じて伺っておりますよ」

 「今後ともよろしくお願いしますね」

 そのやり取りが面白くないフランメは、ズイッと俺のそばまで来て、

 「あんた急にリーベに何なのよ」

 俺とエクレレの間に割って入ってきたのだった。

 「あら? あなたは一体? わたくしが彼とお話してはいけませんでしたか?」

 「ダメ、ではないけど……」

 「問題などありませんよね?」

 彼女はにこやかに微笑んでいた。

 フランメはぐぬぬとか言ってる。

 今まで見た事がない顔でちょっと新鮮だな。

 「ですが、今お話したい気持ちはやまやまですが、今日は時間も遅いことですし、また今度にしませんか?」

 彼女がそう提案してきた。

 この国の王女と関わりを持てる機会が巡ってきたのなら生かさないわけにはいかない。

 「そうですね、ではまた今度ゆっくりお話致しましょう」

 そう約束して俺たちは寮に帰る事にした。


 帰り道の途中、フランメは終始不機嫌そうだった。

 セリウスは俺たちと別れて図書館へ向かった。

 こんな遅くに何かするとは、彼はとても勤勉だ。

 俺も図書館に用があったが、時間も遅くなったので今日はそのまま帰る事にした。


 次の日、いつも通り三人で昼ご飯を食べているとエクレレ王女と付き添いの男がやってきた。

 「こちらに失礼しても?」

 「ええ、どうぞお構いなく」

 腰を下ろした王女に不気味なオーラを出すフランメ。

 俺はそんな彼女の脇腹を突いた。

 「そのオーラをしまいなさい」

 「うー、だってこの女はちょっと苦手なんだもん」

 相性は、確かに良くないだろうな。

 「お二人とも仲が良いんですね」

 「5歳の頃からの知り合いですから」

 「そうなんですね。わたくしもこのシュヴァリエとは小さい頃からの付き合いですし、どことなくシンパシーというものを感じますね」

 付き添いの男はシュヴァリエというらしい。

 その肝心の彼は俺に対して厳しい眼差しをしている。

 それにセリウスも会話に上手く乗れてない気がする。

 王女相手に気まずいのだろうか?

 

 「ところでお二人はどうやって無詠唱魔法を使えるようになったのですか? それに、貴女の魔法は一体なんて魔法なのですか? わたくし、あんな魔法初めて拝見致しました」

 急にグイグイくる王女に俺達はたじろいだ。

 「えっと、それはちょっと教えにくいというか……」

 「別に、ただの火魔法をアレンジしただけだし」

 言葉に詰まる俺に対しフランメはサラッと答えた。

 あまり自分の事を話さない方がいいと思うんだが、彼女は気にしていないのだろう。

 「他にはどんな魔法をお使いになるのでしょうか?」

 王女さんはお構いなしにグイグイ聞いてくる。

 その姿に俺とセリウスは呆気に取られていた。

 それを見かねたシュヴァリエが補足してくれる。

 「エクレレ様は魔法の事になると少しはしゃいでしまう所があるんだ」

 少々申し訳なさそうだった。

 あれか、要するに魔法バカって事か。

 王女様の意外な一面を目の当たりにし、少し何だか親近感が湧いた。

 「意外、だな。まさかそんな趣味があったなんて」

 「魔法は素晴らしいものですから、自分の知識にないものに触れるとつい」

 少し冷静になったのか、恥ずかしさで顔が赤くなっていた。

 「ですので、色々とお話を聞かせて頂きたいのです」

 「まあ、俺は構わないですよ」

 「…リーベがそう言うなら、しょうがないね」

 「僕も賛成だ。色々な視点から意見を出し合うのは良い事だと思うし」

 「それじゃあ決まりですね! 今後ともよろしくお願いします」

 こうして俺たちは五人で日々気になったことや、魔法について意見を出し合う仲となった。


 −−−

 

 それから一週間が経ち、放課後、俺は学園の図書館で調べ物をしていた。

 フランメは先に帰り、セリウスも用事があるとかで先に寮に帰っていった。

 一人図書館で本を読んでいると、

 「何か調べ物ですか?」

 エクレレ王女が俺の隣にやって来た。

 幸い、今日はあまり人がいないので目線を気にする事もない。

 彼女は学園でも高い人気を誇る。

 その人が隣にいると、俺に視線が向けられる。

 それがあまり良い心地がしないのだ。

 「魔族の事についてちょっと知りたくて。でも意外と魔族について書かれてる本があまりないんですよね」

 「魔族ですか——そうですね、わたくし達とは昔から因縁の相手ですし、何かあってもおかしくはないはずですけれど」

 そう、本当に魔族が悪い事をした過去の事を書いてある本くらいしか置いてない。

 これなら屋敷の方がまだ置いてあったんだがな。

 これだけ広いから見落としている可能性もなくは無いが。

 「エクレレ王女も何かお探しのものですか?」

 「エクレレ、そう呼んでもらっても構いませんよ。わたくしたちは同じ学生同士ですから。それにそうですね、わたくしもちょっと調べたい事がありまして。」

 「一体何かお聞きしても?」

 「勿論です。わたくしも実は魔族の事について詳しく知りたいと思っていまして」

 「それは奇遇ですね。何か気になる事でもありましたか?」

 「ええ、実は王宮の執政官の存在が気になりまして」

 執政官って言うと政治をとる人だよな。

 割と重要人物だな。

 「その方がどうかしたのですか?」

 「そうですね、普通に素晴らしい方なのですが、どうも怪しいって言いますか……」

 根拠があるわけではないので、どこか歯切れが悪い。

 しかし、怪しいと感じるか。

 確かに彼女の気のせいもあるかもしれないが、彼女の勘が正しいかもしれない。

 そう考えると彼女も実は結構優秀な魔法士なんじゃ…?


 「二人揃って何を話しとるんじゃ?」

 急に後ろから声が聞こえた。

 「うわあ、びっくりさせないで下さいよ」

 「すまんすまん。なにを話してるのか少し気になっての」

 少女はケタケタと笑っていた。

 全く気配に気付かなかった。

 俺は少し警戒を強める。

 「実は魔族の事について調べてたんです」

 「ほう、魔族とな」

 この時、俺は若干の違和感を感じた。

 声音が少し変わったような。

 「それで、僕たちに用でもあったのですか?」

 「そうじゃな、実は君と一回話をしてみたかったんじゃ」

 「俺は別に構いませんけど」

 この時俺はエクレレに視線を送る。

 彼女も俺の方に視線を向けていた。

 「そうか、なら少し付き合っておくれ」

 

 俺は図書室を後にし、この少女の連れられるままに歩いていた。

 少女は学園で俺が知らない所を歩き、やがて大きな扉がある広い空間にやってきた。

 とても厳重に閉ざされた扉に疑問を抱いた。

 (何でこんなに隠された所にこんな物があるんだ?)

 気になった俺は、この少女に質問をした。

 「あの、この扉の先には一体何があるんですか?」

 「ん、どうしたんじゃ?」

 だが、何も答えようとしなかった。 

 明らかに聞こえてるはずなのに、聞こえてないふりをして。

 これ以上何も聞くな、と言わんばかりのプレッシャーをその顔からを感じた。

 「いえ、何でもありません」

 「そうか、ではこっちじゃ」

 やがて、広い空間の端にある階段を登っていく。

 結構長かったが、上まで登るとある一つの部屋に辿り着く。

 「さあ着いたぞい、ここでゆっくり話をしよう」

 部屋はとても広く、奥に窓が一つ、その前に机と椅子があり、部屋の真ん中にはソファと机が置いてあった。

 「お茶でも飲むかえ?」

 「いえ、お構いなく」

 知らない人に出されたものは口にしてはいけないと教わってきたからな。

 それでも付いてきてしまったことはよくない事だが。

 どうしてもこの人について知りたい事があったので、自分の知りたい欲望に勝つ事は出来なかった。


 「とりあえず立ちっぱなしもなんじゃし、そこのソファにでも座らんか」

 「分かりました、失礼します」

 警戒をしたまま俺はソファに腰掛けた。

 本当なら未来視を使いところだが、魔法が使えないくらい隙がない。

 使った瞬間に反撃される。 

 本能がそう告げていた。

 「そんなに警戒されるとわしは悲しいぞ」

 そう言って泣きそうな顔をした。

 どうやら警戒していた事はバレているみたいだ。

 悟られないよう気を付けてはいたが。

 「不快な思いをさせてすみません」

 「まあ、用心深い事は良い事なんじゃがの」

 そう言って自分が入れた紅茶を啜った。

 

 「それで、話をしたいと言ってましたけど」

 「そうじゃな、お主が学園に入学した日を覚えておるか?」

 「ええ、あの時は講堂で長いお話がありましたね」

 俺はこの少女がその話をしたいと思っていた。

 あそこにいたのがこの人だから、そしてこの人も俺が見ていた事に気づいているはずだから。

 すると話が早いと言わんばかりに満足そうに頷いた。

 「うむ。その時、お主はわしの存在に気付いておったじゃろ?」

 隠すこともなく、あの時は自分が犯人でしたと答えを言った。

 「ですが、誰かまでは分かりませんでした」

 「そりゃそうじゃ、わしの魔法を見破るやつなんて今はおらんからな。しかし、今まで違和感を感じたって奴はそれなりにおったが、わしの存在に気付いたという奴はお主が初めてじゃ」

 「一体どうしてあのような事を?」

 「それはじゃな、優秀な魔法使いを見つけるためじゃよ。あの時わしは魔法で存在を隠しておったが、ごく僅かに魔力を漏れさしてたんじゃ。優秀な魔法使いなら、その魔力に気付いて違和感を感じ取れるでな。まさか魔法を使っていた事がバレてるとは思わんだ」

 からからと少女は笑った。

 「して、どうやって気付いたのか知りとーての。人前で話せる内容でもないじゃろうし、こうして二人で話がしたかったんじゃ」

 「気付いた事はたまたまです。魔力の違和感を感じたので、そこで魔法が使われているかもって思っただけですよ。

 「ほー、たまたま、とな」

 どこか探るように俺の事をジッと眺めていた。 

 

 「ところで、生徒でないならなぜ制服なんて着ているのですか?」

 「これは、普段学園の者を観察するためじゃよ。簡単に言えばわしの娯楽じゃ。生徒達の成長を見守るのが楽しくての」

 「……あなたは一体何者なんですか?」

 「ふむ、そうじゃな。わしはこの学園の創始者とでも言っておこうかの」

 「学園の創始者、ですか。そんな古い人物が今も生きているのは驚きですね」

 この学園は約500年ほど前に作られたらしい。

 彼女は少女の見た目をしているが、中身はアラハン、つまりロリババアだ。

 「わしは長生きじゃからの。それで、他に何か聞きたいこととかはあるのかえ?」


 ここで師匠の言葉が頭によぎった。

 〈今の子達は昔に比べて魔法力が低下している〉

 もしこれが仮に誰かの仕業なら、その元凶はその魔法の基礎を広め教えているこの学園が怪しい。

 そしてその学園の創始者。

 魔法力低下の元凶を作ったかもしれない人物がここにいる。

 断言は出来ないが、どうしても聞かずにはいられなかった。


 「昔ある人が言ってました。今はなぜか昔に比べて魔法力が低下していると。それって何でだか分かりますか?」

 「ふーむ、魔法の低下なんぞ感じた事はないんじゃがの。そんな事一体誰が教えたんじゃ?」

 知らないって顔をしている。

 これはハッタリか?

 それとも本当に知らないのか?

 「誰に教わったかは話す事ができませんが、実際最初に教えてもらった人より、その人に教えてもらった時の方が強い魔法を撃つ事が出来たんですよね。それに、魔法はこの学園の教えを基礎にしているので少し気になっていました」

 一歩踏み込んだ発言をしてみる。

 さあ、どうだ。


 「その魔法力が低下した原因がこの学園のせいだと言いたいのかえ?」

 「無礼を承知で言わせてもらうなら、その確率が高いかと。この学園の創始者と仰るあなたのせいだと」

 俺は身構えた。

 相当失礼な事を言っている自覚がある。

 生徒が校長に、「この学校の教えは間違っているし、それはあなたのせいだ」と言っているようなものだ。

 普通ならブチギレて当然だ。

 だが目の前のロリババアはなぜか豪快に笑った。

 「ぶわっはははははは。そんな事まで気付くとは侮れん奴よのう!」

 否定しなかった。

 つまり俺の考えが正しかったという事だ。

 その姿に少しの怒りを覚える。

 「なんで、そんな事を」

 「ん? 決まっとるじゃろ。わしら以外みんな支配するためじゃよ。最低限の魔法の生活に慣れ、その魔法に依存した世界を作り上げる。そうしてわしらは魔法力を生かして優位に立ち、この世界の全てを支配するんじゃ」

 世界を支配する。

 途方もない言葉に戸惑いを隠せなかった。

 「何を言ってるんだ……」

 「今までは力ずくで支配しようとしたんじゃが、それだと邪魔が入るからの」

 「あなたは、いや、お前は魔族って事なんだな」

 その表情は先程までの可愛らしさは無く、ただ邪悪な笑みが張り付いていた。

 「そうじゃ、わしは悪い魔族じゃ。お前()が知りたがってたの」

 そう言って部屋の入り口を開ける。


 「……っ! いつから気付かれてたのかしら」

 エクレレは見破られていた事に動揺を隠せていない。

 「最初からじゃ。何ならわしらの後を付けていたところからじゃがの」

 俺は図書館でここに来る前、エクレレに(めくばせ)をし、彼女は俺のその意図に気付き後を追ってきた。

 だがそれも最初からバレていたか。

 知っていた上で彼女をここまで誘い込んだ。

 「まさか貴女達魔族にそんな野望があったなんて知りませんでしたわ」

 「別に知られた所で計画はほぼ進んでおるし、お主達にはどうする事もできんよ。それに、やはりお主も侮れん奴じゃ、あいつの言った通りじゃな」


 確かに、「今の魔法は間違っているから使うのをやめましょう」と言っても、真に受ける者などいないだろう。

 これだけ魔法に溢れた世界で魔法を手放すことも出来ない。

 ただこいつらの思惑に踊らされるしかない。

 「それでも、お前達魔族の野望に従うつもりはない! そんな事、止めさしてもらう!」

 「ほう、ひよっこ一人がどうやってわしらを止めるというんじゃ?」

 「俺は一人じゃない、仲間がいる」

 エクレレもそれに賛同する。

 「そうですよ、ただ手を拱いているだけじゃ意味ありませんもの!」

 二人とも戦闘体勢に入る。

 だが、恐らくこの魔族には敵わないだろう。

 対峙してるだけで感じる威圧感が、昔戦った魔族と比べ物にならない。

 それでもやるしかない。

 そのつもりだったが——


 「ぶわっはははは。お主ら最高じゃな、実に気に入ったぞい」

 なぜか攻撃をしてこなかった。

 ただ笑っているだけ。

 「何がおかしいんですの!?」

 「いや、すまんの。まさか本気で歯向かってくるとはの。その勇気は見上げたものじゃ!」

 俺は少し興醒めした。

 俺たちを力でねじ伏せにくると思っていたから。

 「俺たちを倒さないの、ですか?」

 力が抜けたのか、口調が(へりくだ)ってしまった。

 「倒す? バカ言うでない。お主らがどこまで抗えるか、わしの新たな娯楽が生まれたんじゃからな」

 そう言ってまた大きく笑い出した。

 「それはわたくしたちが舐められているってことでしょうか?」

 「どうとでも好きに受け取るがよい。ただし、この国にもわしらの仲間は結構潜んでおるからの。簡単に死なぬよう気を付けることじゃ」

 「最近の人が魔物になる事件もあんた達の仕業なのか?」

 「それはわしのせいではないぞ。他の奴が勝手にやっとるだけじゃからな」

 「その証拠は?」

 「ふむ。そうじゃな、ではヒントをやろう! この国は商業が盛んじゃ。そこを探っていくと何か答えが見つかるかもしれんぞ?」

 実は知っているが、あえて教えず楽しむつもりか。

 なかなか趣味が悪い事だ。

 「仮にそうだとして、敵に塩を送る真似して良いんですか?」

 「言ったじゃろ?わしの新たな娯楽じゃと。まあ、精一杯足掻いてみることじゃな」

 「そのヒントでその相手を倒しても文句は言わないでくださいね」

 「ほう。人間如きが随分と生意気じゃの。その心意気は嫌いではないが、油断は身を滅ぼす事になるぞい」

 「それは誰だって一緒ですよ。教えてくれた礼にこちらも一つアドバイスしましょう。上手く行ってる時ほど足元を掬われやすいんで、気を付けてくださいね」

 「……ふむ、やはりお主は面白い奴じゃの」

 この魔族の少女はどこか面白そうに俺を見ていた。

 

 話が終わったので俺たちは帰ろうとした。

 「また話がしたかったらいつでも来る事じゃな」

 一体どういう了見だろうか。

 いまいちこの魔族の事が掴みきれない。

 それでも今の所危害を加えたりはしてこなさそうだ。

 油断を誘っているだけかもしれないが。

 「分かりました、ではお言葉に甘えてまた来ますよ、()()()

 そうして部屋を出ようとした時、エクレレが質問をする。

 「あの、今更ですが、あなたの名前を伺っても?」

 「おお、そうじゃったな、自己紹介がまだじゃったな」

 確かにまだ名前すら知らなかった。

 聞けばこの魔族の事が何か分かるかもしれない。


 「わしはアゼルじゃ。可愛い可愛い女の子じゃぞ」

 今更ぶりっ子ぶっても無理があるだろう。

 てかそのキャラ設定は何なんだ?

 そもそも年齢考えろよ。

 心の中で厳しいツッコミを入れる。

 ん? アゼルってどっかで……

 「よし、お主らの名前も聞いてやろうぞ。」

 俺の心の中のツッコミなど届いてるはずもなく、このロリババアは全く気にしてる様子は無かった。

 「わたくしはエクレレ・エールトヌスと申します」

 「俺はリーベスト・ドミニアンです」

 「うむ。きちんと覚えておいてやろうではないか。よし、では帰ってもよいぞ」

 こうして俺たちは色々あったこの部屋を後にするのだった。


 −−−


 「それにしてもリーベスト・ドミニアンか。まさか()のような存在がまたわしの前に現れる事になるとはの。これで勇者クヴァールとのあの約束も果たせる時が来るやもしれぬな」

 彼女は一人誰も居なくなった部屋で、外を眺めながら嬉しそうにそう独り言ちた。

 

  

 

 

 

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