第十三話 始まりの王都
お待たせしました!
物語は王都学園編に突入します!
これから色んなキャラが出てくるので、この先も読み進めてもらえると嬉しいです!
エールトヌス王国。
この国は中央大陸の中央〜東にかけて広がる、この大陸一の国である。
まず、この世界は5つの大陸がある。
簡潔に説明していこう。
まずは中央大陸。
俺のいる大陸で、ここから様々な人や物が流通している。
いわば世界の中心だ。
次に西に位置するクヴァール大陸。
千年前の勇者の生まれ故郷であったため、その功績を讃え大陸に彼の名を冠している。
このエールトヌス王国もクヴァール大陸のゾーヤ帝国と昔から交流があるため、身近な存在ではある。
他に南のブント大陸や北のイムニス大陸、東の魔大陸があり、それぞれが独自の文化を築いている。
さて、俺は今王都にやってきている。
この王都は城壁都市であり、入口が全部で6箇所しかない。
それぞれが入門管理を厳しくしており、初めて入門するには個人の魔力を採取される。
そうする事で、問題が起きた時の魔力から犯人がわかるっていう仕組みだ。
魔力=マナは個人個人が微妙に違うため、この王都では犯罪防止に役立っている。
前世でいうところのDNA鑑定みたいなものか。
ちなみに魔力は保存されるので、2回目以降の入門は魔力を流すだけでオッケーみたいだ。
「では、次の方々」
入門手続きで既に2時間は待っている。
普通なら非難の声が上がってるだろう。
だが、みんなそれを平然と受け入れてる様子が窺える。
「父様、いつも王都へ入るには時間が掛かるんですか?」
「人流が多いからな。酷い時は半日待たされることもある」
半日も待たされたら、前世ではネットで炎上待ったなしだな。
「その時に当たった人たちはかわいそうですね」
「確かにそうだが、これも治安のためだ。特にこれだけ人がいるといつどこで何が起こるか分からんからな。抑止力のためにも必要な事だ」
「なるほど。だからみんな素直に待っているのですね」
ふと隣に目をやると、暇すぎて寝てしまったフランメの姿が目に入った。
彼女はこれだけ待つことに慣れてないみたいだ。
「次の方々、どうぞ」
ようやく順番が回ってきた。
ここまで3時間、長かった。
最初にベルンハルトが専用の魔導具に魔力を流す。
すると緑色に光った。
「はい、大丈夫です。では、そちらの子供たちもどうぞ」
「すまないが、この子たちは今日が初めてだ」
「そうでしたか、ではこちらの魔導具に触れて魔力を流してください」
そう言われ、俺は手をかざして魔力を流す。
すると先ほどとは違い青く光った。
「はい、これで登録は完了です。入っても大丈夫ですよ」
フランメも同じ事をして、同じく青色に光った。
多分初めて登録する時は青く、前に入った事がある人は緑に光るという事だろう。
10メートルほどのトンネルを抜けると、目の前には王都の景色が俺の目に飛び込んできた。
王城を中心に、円状に街が広がっている。
その王城へと続く大通りには、人がたくさん歩いている。
屋敷にいた頃とは比べ物にならないほどの規模だ。
「うわぁ、王都ってこんなに凄いところなんだ」
「うん、こんなに人が多いといっぱい物見しそうだよ」
初めて東京に来た時もこんな感じだった。
普段からかけ離れた光景に目線が固定出来ず、キョロキョロしてたのは懐かしい思い出だ。
「二人とも、迷子になられては困るから、逸れないようにちゃんとついてくるんだぞ」
こうして俺達はベルンハルトに連れられ、泊まる宿に向かった。
「いらっしゃい。おや、久しぶりだね〜ベル君」
「今はその呼び方をやめてもらいたいですね、ガルブさん」
ベル君と呼ばれ、ベルンハルトは少し嫌な顔をした。
こんな姿のベルンハルトは少し新鮮だ。
そのガルブと呼ばれた少し膨よかな女性は、俺たちの方を見てニコッと笑った。
「お前さんの子供たちかい?」
「はい、明日から学園へ通うので。私はその付き添いですから」
「そうかい。まあ、今日はゆっくりしていきな。子供たちもゆっくり休んでいきなよ」
ひらひらと手を振り、奥の方へ消えていった。
随分と気さくなおばちゃんだ。
父とはどういった関係なんだろうか。
暇があれば聞いてみるとしよう。
それから俺とフランメだけ先に部屋へ行くことに。
父はどうやらガルブさんと話があるようだ。
部屋自体はそこまで高級感があるわけではないが、広さは三人にしては広いし、清潔感がある。
まあ、素泊まりと考えればそんな贅沢なことは言ってられない。
「結構広いんだね。屋敷ほどではないけど」
「生活するわけじゃないんだから、これで十分だと思うよ」
「それくらいわかってるよ〜」
そう言いながら、持ってきた荷物を部屋の端に置いておく。
(さて、荷物を部屋に置いたところでどうしようか)
いきなり観光に行きたい気持ちはあるが、右も左も分からない土地だしな。
携帯もこの世界にはないので、どこに何があるかなんて知ることも難しいし。
「ねえリーベ、ちょっと出掛けようよ!」
案の定、じっと出来ない彼女は外に出かけたいようだ。
期待を裏切らないからついため息が漏れる。
「何よ、何でそんな顔するのよ」
「こんな広いところに俺たちだけだと、迷子になったらどうするんだ?」
「それは……まあ何とかなるんじゃない?」
ならねぇよ。
「とりあえず父様が来るまで待とう」
そう言うと、凄い嫌そうな顔をしていた。
だが、構わずスルーして椅子に腰掛ける。
「だって、いつ終わるかわかんないし」
確かにそれは同感だ。
あの感じだと過去に色々あったはずだろうし、久しぶりに会うから話が盛り上がるとかは全然有り得る。
「……分かった、この辺ならすぐ帰ってこれるから、ちょっとだけだよ?」
「やった! さすがリーベだね!」
満面の笑みだ。
でも本当にいつ終わるか分からないし、このまま時間を潰すのももったいない。
せっかく腰掛けたのに面倒だが、立ち上がり部屋を出る。
というわけで、二人で宿の付近を散歩することに。
宿から出る時にちょうどベルンハルトがいたので、観光してくる事を告げた。
「あまり遠くには行くなよ。帰ってこれなくなるからな」
そう言われ俺たちは、宿の近くにある屋台に来た。
ちょうどお昼過ぎで、小腹が空いていたから何か食べたくなってきた。
「フランメは何か食べるかい?」
「んー、私はあの串のやつがいい。」
「分かった。すいません、そこにある焼き串を3本ください」
「はいよー。3本で30トワーズね」
トワーズとは、この世界にある唯一の通貨である。
10トワーズは銅貨一枚、1000トワーズで銀貨一枚、100000トワーズで金貨一枚が取引される。
この基準があるため、別にトワーズ自体無くても銅貨や銀貨があれば物を買えたりできる。
それゆえ通貨自体無くても大丈夫だが、エールトヌス王国は独自にこの通貨を設定している。
このおかげで、金貨や銀貨などを大量に持っていればこの王国では超お金持ちになれる。
それで得た金貨などは国の大事な資金源にもなる。
この国独自の基準だが、ゾーヤ帝国も採用しているし、国が価値を決めてる安心感や信頼があるみたいだ。
まさにwin-winの関係と言えるだろう。
実際の貨幣の流れとかはまだまだ勉強の余地があるが。
話が逸れたが、焼き串を買った俺たちは、王国のメインストリートを歩いていた。
「この串美味しい。もう一本買っておけば良かったな〜」
「あんまり食べすぎると夜に食べれなくなるぞ」
味付けはシンプルに塩だけ。
素材がいいからか、ただの屋台の割には肉にジューシーさがある。
「もう、そんな事自分が一番分かってるよ。リーベは心配性だなー」
「別に心配性ってわけじゃ……! フランメ!」
俺は彼女の袖をグイッと引っ張った。
対面から歩いて来る人にぶつかりそうになったからだ。
「ちゃんと前見て歩かないと」
「うん、ごめん。あの、すみませんでした」
彼女はぶつかりそうになった相手に謝った。
その人はフードを被っていた。
でも、どうやら身長は俺たちより少し小さい。
フランメの謝罪の言葉を受け、その少年はこちらを向いた。
鋭い眼光で、一瞬見えたその目は殺意が宿っているように見えた。
「っ!?」
その殺気は一瞬ではあったが、俺達の中に強烈な印象として残った。
どうやら俺が警戒したことに気付いたのか、すぐにその気配は収まり、背を向けてそいつは再び歩み始めた。
「リーベ、今のアイツ……」
「フランメも気付いた? とんでもない殺気をしていたよ」
「何者? 普通の子供じゃなさそうよね」
「一瞬で収めたあたり、恐らく問題になるのはまずいと思ったんじゃないか? いずれにせよ、ただ者ではなさそうだ」
その少年の背中を俺はずっと見ていた。
「リーベ?」
「ああいや、何でもない」
どうしてか、あの少年とはどこかで会ったような気がした。
その夜、王都で晩御飯を食べ終えた俺達は宿に帰っていた。
「そういえば父様、ガルブさんとはどういった関係なのですか?」
「ん? あーあの人は、俺が初めてリヒャルトと王都に来た時からの知り合いだ」
「そうだったんですね。それはだいぶ古い関係ですね」
「ああ、昔は色々世話になったんだ。実はさっき、そんな彼女から妙な噂を聞いたんだ」
「妙な噂、ですか?」
「最近王都では、原因不明で人が魔物に姿を変える事件が起きているらしい」
人が魔物に姿を変える?
「それってどういう意味ですか?」
「詳しくはまだ分かっていないらしい。だからお前達も一応気を付けておくことだ。まあ、お前たち二人なら大丈夫だと思っているが」
「大丈夫です、ベルンハルト様。そんなのにやられるわけないですよ」
その時だった。
悲鳴が聞こえてきた。
「……! あっちからか」
「父様、僕も行きます」
「私も行きます」
「いや、お前たちは明日入学だ、怪我をさせるわけにはいかん」
「大丈夫です、行かせてください」
自信に満ちた眼差しを父に向ける。
「はぁ、仕方ない、だがくれぐれも無茶はするなよ!」
「「はい!!」」
こうして俺達三人で現場に急いで向かった。
現場に着くと辺りは騒然としていた。
逃げ惑う人々の中心には魔物がいた。
普通こんな所に魔物は存在しないし、侵入することもほぼあり得ない。
王都の騎士団や冒険者達が、この付近に出る魔物は王都に来ないようにしている。
それでも、この場に魔物がいるという事はつまり、件の噂のことだろう。
いち早く飛び出したベルンハルトがポーチに入れていた短剣を取り出し、その魔物に切りかかった。
ガキン、と音がしたが傷は付いてない。
「なかなか硬いな。これならどうだ!」
剣速で衝撃波を生み出し、そのまま直撃した。
が、傷は付いたものの、致命傷には至ってない。
「これならちゃんとした剣を持ってくれば良かったな。さて、どうするか」
(それに、本気を出すわけにはいかんからな)
ベルンハルトは悩んでいた。
確かに彼が本気を出したら、周りの建物ごと斬り伏せてしまう可能性がある。
それだけは避けたい所だろう。
「リーベ、行くよ! 援護お願い」
そんな時、フランメが勝手に飛び出した。
「おい、フランメ、待つんだ!」
父の制止は届かず、彼女は魔物に接近する。
「やれやれ、ほんとすぐ突っ込むんだから」
俺は呆れながらもマナを集め、魔法を発動する。
「時間魔法 時間停止!」
俺は、「神贈の恵与」の力である時間魔法を発動させた。
すると、魔法の発動と共に辺りの時間が停止する。
動けるのは俺と、俺が任意で設定した対象のフランメだけだ。
そのフランメは魔物に自身の得意魔法の炎拳を打ち込み、相手を爆発させる。
そのまま魔物は消し炭になった。
「ふぅ。まったく、街を焦がすんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」
「それくらいの加減くらいちゃんとできるから!」
「これは一体。何をやったんだ、お前たち?」
ベルンハルトは驚きを隠せずにいた。
実はベルンハルトに俺がギフト持ちの事は伝えていない。
言ったら俺の自由がなくなるかもしれないと思ったからだ。
人生を管理されるんじゃないかと。
まあ多分そんな事はないのだろうが、今更言う気にもなれなかったし。
だから、黙っている事は本当に申し訳ないと思っている。
「ミーレ師匠に比べれば大した事なかったね」
こっちが彼に対する言い訳を考えてるのに気楽なことだ。
「お前たちは、あのお方の元でどんな特訓を積んできたんだ?」
ベルンハルトは少々混乱しているみたいだ。
「普通に魔法の使い方を教わっただけですよ、父様」
「いやしかし、それだけではこんなあっさり魔物を倒せるとは思えんのだが……」
「それはなんて言っても師匠が育ててくれたからですよ、あの師匠が!」
「そうか、まさかこれ程とは——とにかく、この後の処理は俺がする。お前たちは先に宿へ帰っておいてくれ」
よし、ゴリ押しで何とか押し通せたな。
そんなベルンハルトは、少々納得がいってなさそうだったが、後始末を優先し俺達を置いてどこかへ走って行った。
「じゃあ行こ、フランメ」
「あーあ、もうちょっと強い奴期待したんだけどなー」
そんな敵がいたら街中大パニックだな。
それにしても、改めてフランメの魔法は強力だと俺は思った。
「どうやら例の実験失敗に終わったみたいだな」
「あれはまだサンプルの段階、それにまだまだこれから楽しみは残っている」
「そろそろ騎士団がやってくるでしょうし、早く行きましょうか」
「うん、分かった」
謎の男たちと一人の少年がそう話しながら、暗い路地へと歩いていった。
−−−
「それにしても急に魔物が現れるっていうのが不自然だな」
俺は例の噂について考えていた。
「考えすぎじゃない? そんな奴ら、どうせ全部ぶっ飛ばせば良いだけじゃん」
「その考えは気が楽で羨ましいよ」
「あー何その言い方、またバカにしてるでしょ」
バカにはしてるが口には出さない。
「実際、原因を探っていかないと、また繰り返すだろうからな」
「もしかして、強いやついたりするのかな?」
「結局そうなるんだな。まあ、裏で事を起こしてる奴らは簡単にはいかないかもしれないな」
「おー、なんか、凄くワクワクしてくるね!」
「それについては分からんこともないかもな。この先、暇で退屈することがなさそうだし」
気楽に越した事はないが、多少のストレスや刺激がないと人間はダメだって言ってた気がするし。
それでも、この王都での生活は一筋縄ではいかないだろう。
そして、波乱に満ちた学園生活が始まろうとしていた。




