SS1 ベルンハルト・ドミニアン③
戦いの後、サクレを含む全員が無事王都に帰還した。
今回の件は、スレクトが王に報告した。
ベルンハルトは、あの後倒れてそのまま王都の診療所に運ばれた。
「報告ご苦労。それで、サクレが不思議な力を手にしたとは誠か?」
「はい。ベルンハルトはそれが神聖魔法だと、戦った魔族から聞いたと言っておりました。」
「それは不幸中の幸いというやつだな。今後のことは少し考えよう。それで、ベルンハルトは無事なのか?」
「命に別状はありませんが、ただ…」
「ベルンハルトさん!運動はお控え下さいと言ったはずですよ!」
「ああ、すまないイーデルさん。染み付いた癖が抜けなくてつい。」
「あなたの腕はボロボロなんですから。いくら動くくらいに治ったと言えど元には戻ってないんですからね。」
「そうだぞ、ベルンハルト。お前は安静にしとかないとダメだぞ。」
「そういうお前はもう大丈夫だろう、ノイン。いつまでここにいるつもりだ?」
「いやー、だってここは可愛い女の子がいっぱい居るからな。目の保養にちょうど良いんだ。」
「全くお前って奴は。」
「ノインさんはそろそろ出ていってもらうことになりそうですね。」
「それはひどいよイーデルちゃん。」
「失礼します。」
「これは珍しい客が来たな。」
「どうしたんだい?サクレ王子。」
「あのベルンハルトさん、ありがとうございました!あそこで僕は戦う事ができなかったですが、ベルンハルトさんの戦う姿に感動しました!僕もいつかあんなカッコいい人になりたいです!」
「いや、あの時魔族を倒せたのは王子の勇気があったおかげです。その勇気を持ち続ければ必ずかっこいい人間になれると思いますよ。」
「はい!それで、お怪我の具合はどうですか?」
「それは…」
「ベルンハルトの腕はボロボロだ。もう元のように剣を振ることは出来ない。」
「ちょっと、ノインさん!」
「良いんだイーデルさん。本当のことだから。」
「でも…」
「そんな、本当にもう治らないんですか?」
「本当だよ。もう騎士団としての仕事も難しいかもしれない。」
「それはやっぱり、僕のせいですよね…。」
「確かにもう剣をまともには振れないけど、でも王子、あなたは剣を振ることができる。この先老いていく者ではなく、この先強くなれる者が剣を振る事ができるという事は、僕にとって喜ばしいことなのですよ。」
「分かりました。ベルンハルトさんの分も僕、強くなれるように頑張ります!」
ぱあっと顔が明るくなるサクレ王子。
この頃から、ベルンハルトはイーデルと付き合い始めるのだった。
それから半年後、東部山脈において鉱山資源の発掘調査で大量の鉱物が眠っている事が分かり、国は確保に動く。
ただ、この時はまだ山脈近辺は木々が生い茂っており、魔物も頻繁に現れていたため、安全の確保が大事だった。
その手前の場所に宿場町として領地を開拓すべく、エールトヌス王はベルンハルトに声をかけた。
「私が、その地の領主として治める、という事ですか?」
「そうだ。そこは働く者の宿場町として領地を運営してもらう。色々やることは多いが、お前に頼みたい。
サクレを救ってくれたお前に。」
「分かりました。このベルンハルト、ありがたく承ります。」
こうして、ベルンハルトは領主になった。
「というわけで、王都から旅立つことになった。」
「そうですか…。あの、ベルンハルト。私も、付いて行ったらダメかな?」
「でもイーデルちゃん、診療所の仕事はどうするんだい?」
「その領地の診療所を私が作ります。」
「確かにそれは良いアイデアだな。」
「そうなると俺が寂しくなるじゃねぇーか。」
「ノイン、実はお前にも来て欲しいんだ。あの土地は魔物がまだ多いから、討伐してくれる人手が欲しいんだ。」
「ったく、わかったよ。ただし、給料ははずんでくれよ。」
「あとは、あの人だな。」
「私がベルンハルト殿の領地で働いて欲しいと。」
「ああ、頼む。リヒャルトの力を貸してほしい。」
「分かりました。この老ぼれにまた生きる理由を与えてくださり感謝します。」
「そんな、大げさだよ。でも忙しくなって大変になると思うけどよろしく頼む。」
こうして、ベルンハルト達は王都から派遣された人達と共に領地の開拓に勤しむのであった。
それから半年後に二人は結婚。
その2年後に長男のカールが生まれた。
その頃になると、領地の開拓も進み、人々の往来が増え始めてきた。
ベルンハルトは商人だった時の知恵を生かし、領地をどんどんと発展させていくのだった。
そしてそれからさらに5年の月日が経った頃。
「ベルンハルト様、生まれました!元気な男の子ですよ。」
「本当か!?すぐに行く!」
「イーデル!」
扉を勢いよく開けてベルンハルトは部屋に入ってきた。
「あら、あなた。ちゃんと無事生まれましたよ。」
「そうか。良かった。」
「父様、この子の名前は決まっているのですか?」
「ああ、女の子ならプリマ、男だったらリーベストと決めていた。」
「じゃあ、この子はリーベストですね!よろしくね、リーベスト。」
「んぎゃああ。ほぎゃあ。」
「この子も立派に育ってくれると良いわね。」
「ああ。そうだな。」
そう言って、二人はこの瞬間を堪能した。
だがこの生まれた少年が今後、世界を大きく変える存在になる事は、まだ誰も知らない。
その事はまた別の話にて…。
ここまでありがとうございました!
次は昨日も言った通り20日の更新です。
間が少し開く事になりすみませんが、また彼らの成長を見届けていただけると幸いです。




