表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変転人生~唯一の異世界ライフを歩む物語~  作者: 風竜 巻馬
第一章 一つの出会い
15/64

SS1 ベルンハルト・ドミニアン②



 –––


 時が流れ一年後、ベルンハルトは16歳になっていた。

 この時期に剣の師匠であるリヒャルトと共に王都へ来ていた。

 「王都はいつ来てもやはり広いですね!」

 「ええ、今日は観光ではありませんが。では、向かいましょうか。」

 今日は王宮の騎士団の入団テストの日だ。

 この2年間、リヒャルトの地獄の特訓を耐え抜いてきた。

 時には岩を砕き、時には滝に打たれ、時には魔物と対峙したりと、彼は容赦なくベルンハルトを追い込んだ。

 逃げ出したくなる事もあったが、それでも父の後悔だけはするなという言葉を思い出し、自らを奮い立たせ日々特訓に打ち込んでいった。


 「それでは、王都騎士団の入団テストを始める。最初に言っておくが、この王都騎士団に弱い奴はいらない。どんな時でも我が王の為、職務を全う出来るよう強くあれ!」


 騎士団の入団テストは体力テストや実技だけだ。

 まず体力テストで志願者の8割が落とされる。

 次に実技テストだが、こちらは残った2割の者同士で模擬戦をする。

 そこで勝ち残った1割弱が晴れて騎士団として任命される事になる。

 

 ベルンハルトは必死に食らいついた。

 元々バイタリティには自信がある方だったが、それでも騎士団のテストは過酷だった。

 それでも何とか耐え抜き、無事実技試験に駒を進める。


 実技テストの模擬戦は、体力テストのすぐ後に行われる。

 身体を追い込んだ状況下でどれだけ動けるかを試す事が狙いだ。

 もちろん、いくら実技テストまで残った猛者であろうと、この模擬戦で身体が満足に動くわけもなかった。

 それでもリヒャルトとの特訓で追い込まれたベルンハルトは、この試験でその本領を発揮した。

 何人もの相手を打ち倒していき、最終的には最後まで勝ち残るのだった。

 

 晴れて騎士団に入団したベルンハルトは、その後も王国の為に戦い続けた。

 そんなベルンハルトが21歳の時にある事件が起こる。

 

 その時はエールトヌス王の第一王子である、サクレ・エールトヌスの五誕行祭のパーティーが王城にて行われる日だった。

 五誕行祭当日、ベルンハルトは会場の警備を任されていた。

 パーティー当日はつつがなく進行していたが、終わりに差し掛かり、客人達が帰り出した頃にいきなり会場の照明が魔法で破壊される。

 全員がパニックになり、その間にサクレが捕らわれてしまう。

 

 「サクレがいない、どこに行ったのだ。」

 王は必死に我が息子を探した。

 その言葉を聞き、会場警備だったベルンハルトと、同僚のスレクトが素早く駆け出した。

 「王よ、必ず私たちがサクレ王子を連れ戻します。この失態は私たちの不手際ゆえ。」

 「頼んだぞ、お前達。だが、攫われた事を今は誰にも知られたくない。出来るだけ隠密に頼む。」


 –––


 こうして街へと繰り出した。

 「どこかアテはあるのか?」

 「攫われたって事は堂々と大通りは歩けんからな。そういった怪しい経路は把握している。」

 「さすがだな、スレクト。」

 「だが敵が何人いるか分からない以上、あと二人ほど人員が欲しいな。」

 「じゃあ俺は人手を集める。居場所がわかればこれで呼んでくれ。」

 そう言ってベルンハルトは通信魔道具を渡した。

 「ああ、頼んだぞ。」

 「俺が行くまでに死ぬんじゃないぞ。」

 「ぬかせ。」

 拳を合わせて、お互い走り出した。


 「おお、ベルンハルト、今日は王子のパーティーだったんだろ?もう終わったのか?」

 「ノインか。——ちょうど良かった、お前に他言無用で頼みたい事がある。」

 その様子を不審に思ったノイン・アンファングは人目がない場所へ彼を誘導した。

 

 「——はぁ?第一王子が攫われた!?」

 「今その犯人を追っている。悪いが力を貸してくれないか?」

 「しゃーねえな。友人の頼みなら断れねえーよ。」

 「後もう一人、口が固そうで実力がある奴は知らないか?」

 「それだったらあの人で良いんじゃねえーか?」

 「あの人?」

 

 「こんな所で悪い話でもしているのですか?ベルンハルト殿。」

 「リヒャルト?!どうしてここに?」

 「何か王城の様子がおかしかったので街を走っていたら見かけたもので。それで一体どうされました?」

 「実は———。」


 「なるほど、それは人攫いの仕業ですね。最近、色々な所へ見て回ってましたが、どうも盗賊や人攫いの活動が増えているみたいで。」

 「それは一体どうしてなんだ?」

 「詳しくは分かりませんが、何やら武器やら魔道具を横流しにしている所があるという噂です。」

 「いずれにしても無視は出来ないな。」


 すると通信魔道具が反応した。

 「見つけたぞ、王都の北東地区の通りから外れた所にある小屋に入っていった。見た所人は五人ほどだ、すぐ来れるか?」

 「ああ!すぐに行く!」

 三人は急いで北東地区へ急いだ。


 −−−

 

 すぐしてスレクトと三人は合流した。

 「なんだ、ノインを連れてきたのか。それと、その方はまさか、鬼才のリヒャルト?!」

 「随分懐かしい呼び名ですが、今はただの隠居してる身ですよ。」

 「ったく、俺に対してのその言い方はなんだってんだ。優秀な俺が来たんだからありがたいと思っときな。」

 「それより、今はそんな事言ってる場合じゃないだろ。」

 「あれから動きはないのか?」

 「今の所はな。」

 「よし、じゃあ行くぞ!」


 そして突撃すると、そこはもぬけの殻だった。

 「誰も、いない?」

 「いや、そんな事は無さそうです。」

 リヒャルトが床を剣で切り裂くと、隠し階段があった。

 「ここから逃亡したのか。」

 「急いで追いましょう。先頭は私が行きます。罠やらが仕掛けられていてもおかしくありませんので。」

 

 「こんな地下通路があったなんてな。」

 「密輸が行われている危険もあるな。この事は今回の件が片付き次第団長に報告しよう。」

 「それにしても罠らしい罠はありますが、どれもお粗末ですね。」

 そう言いながら次々罠を看破していく。

 「何でそんなに罠のある場所がわかるんだ?」

 「こればかりは経験でしょう。幾度となく戦場へ赴けば、こういった勘も身につくという事です。」

 「本当とんでもない人だぜ。」

 「出口が見えてきたぞ。」


 そこは王都の外にある、今は使われていない井戸だった。

 「くそ、どこに逃げやがったんだ?」

 するとリヒャルトが地面を見てしばらく考え込むと、そのままみんなを誘導する。

 「こっちに逃げたんでしょう。ご覧なさい、微かですが足跡がまだ残っています。人を抱えて逃げるという事はそれだけハンデを敵は抱えています。それに対しこちらは全力で追いかけるだけですから、これならすぐに追い付くでしょう。」

 「改めて感じるけど、ベルンハルト、お前凄い人を師匠に持ったな。」

 「本当にな。まだまだ学ぶ事はいっぱいだよ。」


 リヒャルトの見立て通り、ベルンハルト達はすぐにサクレを攫った者たちに追い付いた。


 「もう観念しな。」

 「何でこんなに早く追い付かれんだよ。聞いてた話と違うじゃねーか。」

 「話?それは一体どういう事ですか?」

 「それだけは言えねえ!それを言っちまったら、俺たちは…。」


 「こんな所で何をやっているのですか?」

 その男が現れると、リヒャルトの表情が緊張していた。

 「おや?ここに運んでくださいと言ったのは王子だけですよ?どうして余計な虫が引っ付いているのですか?」 

 「すいません!これは、その…」

 「言い訳はいりません。ただ許してあげる事は出来ますよ。死をもってですが。」

 人攫いのうち一人の男の首が飛んでいった。

 首から血飛沫が噴き上げる。

 「ヒ、ヒィィィ!?」

 「こうなる前にあなたたちはとっとと失せなさい。」

 男たちは全力でこの場から走って逃げた。


 「おや?ここから失せなさいと言ったはずですが、そうしないという事は死にたいのですか?」

 「良いですか、三人とも。あいつは私がやるので、その隙にサクレ王子を救ってください。」

 「リヒャルト、あいつは一体…。」

 「あの男は、魔族です。」

 「嘘だろ。ただの人間にしか見えねぇぞ。」

 「私も人間の姿をしているのは初めて見ました。とにかく、やりましょう。」


 3人は頷き、リヒャルトは地を蹴り魔族に接近した。

 「むっ!?」

 素早く剣の間合いに入り込んで一閃した。

 が、魔族の身体まで剣が通っていなかった。

 「驚きましたね。まさかここまで早いとは、少々見くびっていたようです。」

 リヒャルトを弾き飛ばし、風の弾丸を打ち込む。

 無数の弾丸が彼を襲い、リヒャルトも剣で弾丸を捌くが、数が多く次第に傷を負い始める。

 「フフフフフ、ん?」


 「ハァァァ!フンッ!!」

 スレクトが隙を見て魔族に仕掛ける。

 だが、これも攻撃までは至らなかった。

 「ウザいですよ。」

 突風を発生させ、彼は吹き飛ばされ木に直撃する。

 「ぐはっ!?」

 そのまま倒れるが、何とかすぐに起きあがろうとする。


 「聖剣流奥義 長久の斬撃(デュランダル)!」

 振り下ろした剣から斬撃が発生し、そのまま魔族に向かって飛んでいく。

 「ぐおおっ!」

 先程と違い、両手でこの斬撃を受け止める。

 「今です!」


 「行くぞ、ベルンハルト!」

 ベルンハルトとノインはその隙に捕らえられていたサクレ王子の救出に成功する。

 「そのままお逃げなさい!」

 「それは困りますね。これ以上予定を狂わされるのは鬱陶しいですから、全力で相手しましょう!」


 広範囲に渡ってかまいたちが発生した。

 木は削れ、地面も抉れていく。

 その攻撃を防げず、4人とも傷を負う。

 「あなたが一番厄介ですので、あなたから殺しましょう!」

 大気の砲弾がリヒャルトを襲う。

 リヒャルトも剣で何とか捌くが、ずっと続く砲弾に体力が削れていく。

 (物質ではない分捌きづらいですね)

 

 「よし、行くぞお前たち!」

 「お前に言われなくとも分かっている!」

 「一発がデカいから食らえば死ぬと思えよ!」

 三人で一斉に飛びかかる。

 ノインが敵の気を引き、その間にスレクトかベルンハルトが死角に回り込んで攻撃する。

 普段から付き合いが深い三人の連携は完璧だった。

 お互い気のしれる仲同士、どのタイミングで攻撃したり避けたりするのかが、言葉に出さずとも通じていた。


 「羽虫のくせに目障りですね!」

 「まずい!」

 魔族はつむじ風を複数作り出し、それを三人に目掛けて放つ。

 正面からまともに受けた三人だったが、ベルンハルトは何とか剣術で受け流した。

 しかし、スレクトとノインは魔法の力に負け、吹き飛ばされてしまう。

 「ノイン!スレクト!」

 「余所見とは感心致しませんね。」

 そこへ間髪入れずに攻撃してくる。

 (まずい、間に合わない!)

 

 「くっ!」

 「リヒャルト!?」

 「おやぁ?隙だらけですねぇ。」

 不気味に笑う。

 そして、大気の壁でリヒャルトを上から押し潰す。

 「リヒャルト!!この野郎!!」

 「あなたはもういいですよ。」

 吹き飛ばされるベルンハルト。

 血を口から吐き出し、そのまま倒れ込んでしまう。

 「さて、行きましょうか。」

 「来、来るな!!」

 落ちていた剣を構えるサクレ。

 その身体はブルブルと震えていた。

 「そんな事をしてもムダですよ。」

 バキッと顔を殴り飛ばすが、それでもまだ剣を捨てずに立つサクレ。

 その眼には死を恐れない力強さが宿っている。

 「僕が、お前を倒すんだ!」

 「はぁー。もう良いですよ。人間は本当にしぶとくてウザいですね。」

 サクレを睨みつけた。

 身体が硬直するサクレ。

 そのまま歩み寄っていく。

 「っ!絶対に、絶対にお前を倒す!!」

 「やめるんだ、サクレ王子…!」

 ギリギリ意識が飛ばずにいたベルンハルトだったが、身体が動かない。

 

 諦めかけたその時、サクレに変化が起きる。

 「それが君の願いかい?では、困難に立ち向かう君に力を授けよう。」

 光が彼を包んだ。

 そして、その光は彼が持つ剣にも宿る。

 「これは、まさか神贈の恵与(ギフト)?!忌々しい存在め!」

 その光に触れたベルンハルトは急に身体が軽くなった。

 そのままサクレの元へ歩いて行く。

 「あなたは、騎士の人…。」

 「サクレ王子。私はあなたの勇気に励まされました。どうか、その勇気を貸していただけますか?」

 そう言って、光に満ちた剣を受け取る。

 「あなたごときが私なんかに攻撃なんか出来るわけがない。」

 「じゃあお前に教えてやるよ。やると決めた人間の覚悟ってやつを。」

 「ほざくなよ、下等種が!!」

 「それがお前の本音か。随分醜いんだな。」

 この時のベルンハルトはやけに落ち着いていた。

 この剣の光のおかげかは分からない。

 ただ、今の自分なら何だって出来ると感じていた。

 

 限界まで身体強化魔法を発動し、一気に距離を縮める。

 その速さは、リヒャルトの速度を超えていた。

 「!!?」


 「聖剣流奥義 光速一閃(クラウ・ソラス)!」


 光速の一撃が魔族を襲う。

 「こんなもの、私にはきかな…!?」

 魔族の身体を覆っていたものが光によって溶かされていく。

 「まさか、これは神聖魔法か?!」

 「うおおぉぉぉ!」

 「くっ、こんなとこで、こんな奴らに、負けることなどあってはならない!!」

 「これで、終わりだ!!」

 

 魔族の身体が真っ二つに切り倒される。

 「やった、ぜ。ざまあ、みろ。」 

 そしてベルンハルトもその場に倒れ込んだ。



思ったよりもボリュームがデカくなりすみません!

本当はもっとコンパクトにまとめて終わる予定だったのですが、終わりませんでした。

また明日もこの続きになるかと思いますが、是非読んで頂けると幸いです。

二章の方は少し間隔開いて20日ごろから投稿していくと思いますんで、そちらの方もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ