SS1 ベルンハルト・ドミニアン①
今日は本編は休みです。すいません。
短編でベルンハルトの過去をさらっと書いてみました。
続きはまたその内書くと思います。
また明日には本編の続きを投稿するのでよろしくお願いします。
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ベルンハルト・ドミニアンはとある商会の次男として生まれた。
幼い頃より一人の兄と共に商才について学び、商人としての基礎や知識を叩き込まれた。
この商会では主に、冒険に役立つ装備等や、回復用のポーションといった商品を扱っており、冒険者にとっては貴重なお店として、このエールトヌス王国で発展していった。
時には父や兄と一緒に国外にも商品を届けに行ったりもしていた。
そんな彼にとって商人としての道は簡単ではなかった。
ベルンハルトの兄ヘンドラー・ドミニアンは商才に溢れた男だった。
それに対し、ベルンハルトは商人としては少し慎ましい性格で自分に厳しかった。
時には兄と比較され、ベルンハルトは次第に自分自身の劣等感に苛まれ、商人としての意気を失っていってしまった。
しかし、そんな彼にとって冒険者の人たちの話を聞くことは唯一の楽しみであった。
話を聞いてるうちにベルンハルトは、次第に冒険者について興味を持っていった。
商会で売れ残った剣を使って素振りをしたり、内緒で冒険者の人たちに稽古をつけってもらったりすることで彼は、自分の中の劣等感を紛らわしていた。
ただ、自信を持てない彼は、ずっと自分のやりたいことを言い出せずにいた。
そんなベルンハルトが14歳の時に転機が訪れる。
その日は商品を隣の国へ送り届けていた。
その道中で彼は盗賊の襲撃にあった。
彼は大切な商品を守るため必死で戦った。だが、所詮は大した技術も経験もなく、対人戦もしたことがなかった彼は、なす術もなくやられてしまう。
そこに現れた一人の男がいた。彼は盗賊相手に怯むことなく立ち向かっていき、数人いた盗賊相手に剣一本で戦い、何事もなかったかのように退治したのだった。
圧倒的な実力を目の当たりにした彼は思わず、その姿に一目惚れした。
その男に憧憬を抱いた彼は思わず「僕に剣を教えてください!」と口に出していた。
だがその男は彼の顔をしばらく見てからこう問いかける。
「少年よ、君の眼は迷いに満ちている。そんな中、剣を学んだとしても中途半端な技術しか身につかないだろう。本当に学びたいのであれば、自分の中にある迷いと向き合いけじめをつけてきなさい。」
そう言われ、ベルンハルトは悩んだ。前から興味のある冒険者と剣の道、それに商会のこと。
どれも自分には欠かせないものではあった。それでも彼はあの時の剣士への憧れが忘れられず、剣の道を進むことを決意した。
襲われた日から一週間、ベルンハルトは父に商人としてではなく、自分は剣の道に進みたいと伝えた。
「お前には向いていない。」
父はそう一言一蹴するだけだった。
しかし、ベルンハルトの意思は固く、
「何を言われても自分は剣の道に進みたいんです!憧れの人がいるんです。その人に少しでも近づきたいんです。」
「今よりも困難な道のりだとしてもか。」
「そうだとしても、自分は諦めたくない。」
言い放った言葉は、今までにないくらい力強かった。
その顔を見た父は静かに目を閉じ、問いかける。
「本当に剣の道に進みたいのだな。」
「はい。なりたいです。」
「そうか、ならばこれ以上何も言うことはない。」
父はそう言い目を開けて彼をジッと眺めていた。
そして少し嬉しそうな悲しそうな、どちらともとれる表情で口を開く
「いつからか自分を信じ切れていなかったお前が、今では少し自信を取り戻したかのような顔つきに変わっている。そこまでお前を変えてくれる出来事があったのだろう。その中で私が言えることはただ一つだ。自分でやると決めたからには後悔はするな。この事だけは忘れずに生きていきなさい。」
そう言ってくれた父に対しベルンハルトは、急に感情を堪えきれなくなった。
自分は兄のように出来なかったから父に見限られていた、と思い込んでいた自分が情けなかった。
不甲斐なかった。
ただ父は、兄や周りに流されずに自分を信じる心に気付いてほしかっただけなのだと、自信を持ってほしかったんだと、そのことを試していただけだった。
厳しさばかりに目が行き、父の本音を少しでも気付こうとしなかった。どうして兄に出来て自分は出来ないのだろうと自分を責める日もあった。
それは間違いだったんだと父と話す事で気付けた。そんな彼の目からは涙が零れていた。
それからベルンハルトは商人ではなく、憧れのその男に弟子入りをし、立派な剣士になるために色々と学んでいくのだった。




