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鬼の哭く道には雪の花が咲く  作者: 久保 雅
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第5話 石長比売 そのニ

ひと月一話……無理!

 運命の日。膨大な数の妖が神域に押し寄せた。


「こっちです。押さないようにして下さい! 水辺に住まう妖達は小川の方に行って、そこで指示を受けて下さい! 子供がいる者は此方へ必ず報告して下さい!」


 入り口から、ぞろぞろと川のように流れてくる妖で、神域はごった返す。押し合いへし合い、巫女達は走り回る。

 父のところから駆け付けた(みこと)達にも手伝ってもらっているが、やはりこの数を捌き切るのは無理があるようだ。私も手伝いところだが、神が下の者の仕事を取ると、その者達の存在意義を無くしてしまう事になる。もどかしく思うが、線引きは必要なのだ。


石長比売(いわながひめ)様、現在約半数の妖が神域へ入りました」


 特にやることのない私が様子見として巡回していると、(ひいらぎ)が報告をしにやって来る。


「ふむ、思いの外手間取っていますね……」


「はい。神域は広いですから、収容には問題ございません。しかし、妖達が一気に雪崩れ込み、作業が遅々として進んでいないのが現状です」


「まずいですね……明日の明朝が開戦だというのに。一刻も早く、妖達を神域に入れなければ、最悪巻き込まれて死者が出てしまいます!」


「しかし、神域の入り口はそれ程広くはございません。今の速度が限度です」


 無理をしてしまえば、踏み潰される者もでる、か。準備を怠ったつもりはないが、実際してみるとなかなか上手くいかない。何より人手が足りない。父から巫女を借りて来てはいるが、それでもあと十人は欲しいところだ。


「……やはり私も――」


「なりません」


「………」


石長比売(いわながひめ)様。貴方様は"神"です。()()()()()()()()()()()()()()()()


 私が言いかけた事をいち早く理解し、凛とした声で柊はきっぱりと拒絶する。


 理解(わか)っている。私がどういう存在で、どういう立場なのか。理解(わか)っている。私がこれ以上何かをすれば、柊達の立場を悪くしてしまう事を。理解(わか)っている。それをする事が、"神"として、どれ程おろかなのか。理解(わか)っているのだ。


 私が出来るのは、こうした場所を提供する事と、協力を仰ぐぐらい。その後の事は任せたばかりか……これが"神"だというのか。こんな、何も出来ないような私が。なんと情けない。この時ばかりは"神"として生まれた事を後悔した。


「はは、ここ安全?」私の耳に、小さな幼子(おさなご)の声が届く。ふと気になって目を向けてみれば、"鎌鼬(かまいたち)"という妖の母子(おやこ)だった。


「ええ、此処なら安全よ。外はきっと黒縄丸様達がなんとかしてくださるわ」


「ほんと?」


「え、ええ……」


 目を輝かす子に対して、母親は歯切れが悪い。相手は妖の中でも特に力を持つと言われている内の一つ、"鬼"その首領である。酒呑童子(しゅてんどうじ)の強さは妖達の間で知らぬ者はいない。いくら黒縄丸達がこの場の妖達全てから信頼と信用を勝ち取っていたとしても、勝てるかどうかはまた別問題である。母親はそれを理解しているからこそ、はっきりと言えないのだろう。だから、"勝つ"ではなく"なんとかしてくれる"なのだ。


「これは良くないですね」


「はい。妖達は不安がっています。これがこのまま続くと、不安はいつしか怒りとなって爆発する恐れがあります。こればかりはあの鬼頼りという事でしょうか」


「なんとしても勝ってもらはねばならない、か」


「はい」


 柊は「では、私も務めがあります故、これで失礼致します。何かございましたら、すぐにお申し付け下さいませ」頭を下げ、柊は自身の持ち場へ戻って行く。

 やる事がない私は、巡回の続きをする。


 一面妖達で埋め尽くされている。外界とは違い、冬の季節でも神域は暖かい。子供達のはしゃぐ声や喧騒が耳に入る。


 こんな状況だが、この喧騒が少し心地いいと思う、いつも神域は静かで、どこか寂しく感じてしまうのだ。私は神で、柊達は神に使える巫女だ。どうしても壁を感じてしまう。


「神とは、存外孤独なものよ……」


 勿論、私はいつも一緒に居てくれる巫女(かのじょたち)が好きだ。とても大事に思っている。だが、いつも賑やかかと聞かれると当然そうではない。巫女である柊達は私の一歩後ろを歩く。その為か、やはり会話は事務的な事が多く、私に話を合わせるのが常だ。私としてはもっと彼女達自身の話が聞きたい。もっと、気兼ねなく話をして欲しい。だが、その夢は叶わぬだろう。これは私の我儘だ。彼女達に強要は出来ない。そもそも、そんな事はしたくない。


「戦が終われば、祝勝会ぐらいは開いても良かろう。誰も文句は言うまい」


 どうやら、私は集まって楽しく騒ぐのが好きなようだ。祝勝会と言うが、本当はただ私が楽しみたいだけなのかもしれないな。


 そうして色々考えながら歩いていると、巫女の一人が私めがけて慌てて駆け込んでくる。私に使える巫女の一人、(むすび)だ。彼女には外の様子を見に行ってもらっていたのだが、慌てて駆け込んでくるところを見ると、良くない事があったのだろう。やれやれ、良くない報告を聞かなければならないというのは、いつも本当に嫌なものだ。


「何事です、(むすび)?」


石長比売(いわながひめ)様、一大事にございます! 開戦でございます。鬼達が戦を開始しました!」


 凍りつく。私だけではない。周りにいた妖達も、せっせと忙しく走り回っていた巫女達も、皆一様に時を止める。言葉の意味を理解するまで、とても時間がかかった。


「なん、だと……?!」


 面の下で盛大に顔を歪める。


 話によれば、どうやら酒呑童子に情報が流れたのが原因なようで、なし崩し的に開戦となったようだ。


 馬鹿な。戦を始めるのは明日の明朝の予定だっのに。そもそも、まだ日が真上に昇ったばかりだぞ。まだ妖達の避難は半数しか済んでいない。もう半数は神域の外だ。

 まずい、まずいまずいまずい。このままでは神域の外にいる妖達は鬼達の戦に巻き込まれてしまう。彼ら鬼の戦いは無茶苦茶だ。周りの事などお構いなしだ。周りの者が死んでも気にも留めぬだろう。


 こうなったらなりふり構ってはいられない。


(むすび)、急いで妖達を全て神域に入れるのだ。点呼も取る必要はない。多少無理は許す。とにかく早く避難させよ。このままでは本当に巻き込まれてしまう!」


「は、はい、直ちに!」


(ひいらぎ)(みこと)、話しは聞いていたな!」


「「はっ!」」


「貴女達二人は他の巫女数人を連れて、今すぐ神域の外にいる妖達の誘導を。その場の判断は貴女達に任せる!」


「「はっ!」」


「時間がない、行ってくれ!」


「畏まりました!」


 (ひいらぎ)(みこと)の二人は、軽く一礼すると、巫女数人を連れ、急ぎ神域の外へと向かった。外は危険かもしれないが、彼女達なら心配はないだろう。巫女達は神の側仕えと言う仕事の他に、神の護衛も兼ねている。実力は確かだ。特に私に使える巫女達の中では(ひいらぎ)が一番強い。正確には護りに強い、だ。一方(みこと)は、父である大山津見に使える巫女の中では二番目である。その実力は(ひいらぎ)に勝るとも劣らず。妖達の護りはひとまず安心という形で問題はない筈だ。

 とにかく、私には信じる事しか出来ないのだから。




 ♢♢♢♢♢


 神域の出口を抜け、(ひいらぎ)(みこと)率いる巫女達は山道を駆ける。そのすぐ横は妖達による長蛇の列。夥しい数だ。


 聞いていた話よりずっと多い。


「これは……?! 黒縄丸、話が違うではないですか!」


 列の横を駆けながら、(ひいらぎ)が呪詛を零すように唸る。


 列に並ぶ妖達の数は、現在神域にいる数の()()()()()()()


 (ひいらぎ)はこの光景を伝える為に、すぐさま巫女を一人、石長比売(いわながひめ)の元へ送り、自分達は先を進む。


「これでは例え収容できたとしても、食べ物が……!」


 そう言って後ろをついて来る(よしみ)という巫女が表情を固くする。(ひいらぎ)(みこと)も同様に眉間に皺を寄せ、表情(かお)を固くする。


「もって二日……いや、二日ももつかどうか!」


(ひいらぎ)、貴女の気持ちは痛い程分かりますが、今は妖達の避難が優先です。私達は神に使える巫女。神の命は絶対です。神がそうせよと言うのなら、私達はその期待に応えなくてはなりません。理解(わか)りますね?」


「ええ、勿論心得ています!」


「ならば、今は余計な事を考えず、やるべき事の最善を尽くすだけです」


 一行は進む。すると、最後尾へと近づくにつれ、雰囲気が変わって行く。先頭の方は不安に混じって落ち着きというものがあったのだが、最高に付近になれば、様子は混乱の一言であった。

 足を一歩踏み出すたびに肌を突き刺すような妖気が全身を叩きつけ、戦乱の匂いが嫌でも鼻腔を通る。


 叫び声。地鳴り。充満する殺気。そして、血の匂い。


 どうやら戦はかなり本格化しているようであった。


(よしみ)(つかさ)(なぎ)の三人は妖達の誘導を! (やまと)(ともえ)は妖達が巻き込まれないように結界を張って護りなさい。何人(なんぴと)たりとも敵を近づけさせてはなりません! 私と(みこと)は逃げ遅れがいないか辺りを捜索して参ります。貴女達は先に行きなさい!」


「いけません(ひいらぎ)姉様。お二人だけでは危険です! (わたくし)も共に参ります!」


「なりません。貴女は妖達の誘導をしなさい!」


「し、しかし……!」


(つかさ)! 責務を全うしなさい。これは命令です!」


 今も地鳴りと一緒に叫び声が聞こえて来る。おそらく現在位置からかなり近い所で戦っているのだろう。最早一刻の猶予も無い。下らない意地を張っている場合ではないのだ。


「……わかり、ました。(ひいらぎ)お姉様、(みこと)様、お気をつけて!」


「貴女達も気をつけて。行きましょう、(みこと)!」


「ええ」


 (つかさ)達を見送り、(ひいらぎ)達は逃げ遅れた妖がいないか辺りを捜索し始める。

 進むにつれ妖気と血の匂いが濃くなってゆく。硬い金属のぶつかる音も聴こえる。相当近い。


 二人は周囲への警戒を強め、更に進む。すると、少し進んだ山道の先に数人の妖達の姿を確認する。半分は子供だろうか、かなり小さい者が多い。

 妖達は(ひいらぎ)(みこと)の姿を見ると、少し安心したように顔で駆け寄る。


「あんた達、神様の所の巫女か?」


 代表して聞いてきたのは一つ目の妖だ。


「ええ、そうです。貴方達は――」


「どこに! どこに逃げれば良いんだ!」


 凄まじい剣幕で捲し立てられ、流石の(みこと)若干ものけぞる。


「少し落ち着きなさい。今説明しま――」


「駄目だ、すぐそこまで来てる!」


 その言葉を証明する様に、山道脇の林から、甲冑を纏った黒髪長髪の男が現れる。手に持った刀は血に濡れ、額からは太く立派な捻れた角。夥しい血の匂いを纏うその男は、確認するまでもなく、鬼だ。


「どこへ行くつもりだ、低俗な妖共。ん? 貴様はあの神の所にいた女か……成る程、神が妖を助けるか、愚かな奴だ」


 鬼は(ひいらぎ)達を姿を見つけると、憐むように笑う。


 (ひいらぎ)(みこと)は鼻で嗤う鬼に、少なくない怒りを覚えつつ、妖達を庇うように前に出る。特に(ひいらぎ)は主人である石長比売(いわながひめ)を馬鹿にされ、気分は最悪だ。


「そういう貴方は戦の最中にこのような所で何をしているのですか? ああ、申し訳ありません。実力不足で戦いについて行けないから、力のなき者の首でも取って満足しようという腹なのですね。私とした事が気が付きませんでした。随分と小さな事をなさるのですね?」


 額に青筋を浮かべながら清々しくにっこりと告げる。(みこと)は隣でぎょっと驚く。


「言ってくれるな、女ぁ……!」


 鬼の男はびきびきと青筋を走らせ、長い黒髪が生き物のように蠢く。


(こんな分かりやすい挑発に乗るとは……底が知れますね)


(みこと)、結界を」


「ええ」


 (みこと)が手を軽く横に振ると、澄んだ鈴の音が鳴り、妖達を護るように青白い壁が張られる。結界だ。


 彼女達巫女は妖などが扱う"妖気"とは違い"霊気(れいき)"という力を使う。主に癒しや護りに強い力であるが、使い方によっては攻撃にも転じる事ができる。


「さて、私達はやるべき事が山積みです。よって貴方のような小物にかまっている時間はありません。意気揚々とご登場して頂いて大変申し訳ありませんが、ご退場願います」


「ぬかせ、女共ぉ!」


 怒り心頭に達した鬼は目を真っ赤に充血させ、正面から斬りかかる。

 (ひいらぎ)は動揺することなく、冷静に鋭く鬼を睨む。


「短気にも程がありますよ。冷静を欠いた時点で貴方の敗北です」


 真っ直ぐ走り込んでくる鬼に対し、(ひいらぎ)は流れるような手つきで軽く手を振り下ろす。すると、澄んだ鈴の音が鳴り、鬼の頭上から押しつぶすように結界が落ちる。


「ぶがっ?!」


「まさか、巫女である私達が弱いとでも? では、一つ勉強です。閻魔大王様と出会う前に学んで逝きなさい。

 神とは何より尊く、偉大なる存在です。そしてその偉大なる存在に仕えるのが、私達巫女。神に仕え、護る者達。巫女は一人一人が強力な結界を扱う事が出来ますが、これは単純に主人たる神をお守りする為です。ですが、何も結界だけで護れるとは私達自身思ってはおりません。この世には結界を斬る輩がごろごろいますから。故に、私達巫女は厳しい戦闘訓練を受けています。例え結界が破られようと、その身一つで悪しき存在から神をお護り出来るように……理解出来ましたか? 貴方程度の妖なら十や二十いてもわけありません。ましてや正面から馬鹿正直に突っ込んで来るなど論外です。片腹痛いですね」


 このまま押しつぶしてしまおうかとも思った(ひいらぎ)だが、後ろには子供がいる。妖とはいえ、子供は子供である。見ている側で圧殺するのは流石に気が引ける。まだ幼い()()()()()()()()()()()からだ。


「仕方ありませんね……」


 (ひいらぎ)は振り下ろしている手の指を二本だけ立て、横に一閃する。すると、結界は鬼を完全に囲ってしまい。脱出不可能にしてしまう。


「貴様、出せ! 今すぐ殺してやる!」


「殺すと宣言する輩を素直に出すと思いますか? つくづく頭の悪い方ですね」


 溜息混じりにそう零すと、立てた指を鬼に向ける。


「――針縫(はりぬ)い・神凪(かんな)


 静かに唱えたその瞬間、鬼のど真ん中、心の臓を針ほどの細く小さな光が貫く。

 刹那の出来事。鬼は操り手のいなくなった人形のように動きを止める。文字通りの瞬殺であった。


 (ひいらぎ)は結界を解き、鬼を下ろし、周囲に敵がいないか警戒を強める。鬼がこの男一人とは考えにくいのだ。


「さてと……」


 (みこと)に顔を向けると、視線で結界を解くようにお願いする。すると伝わったのか、(みこと)は結界を解いてくれる。


「貴方達に少し聞きたい事があります。この先に逃げ遅れた者はいますか?」


 いるのであれば引き続き助けに行かねばならない。しかし、妖達は首を横に振る。どうやら話によれば、ここまで来るのにかなり殺されたようで、もう誰も残ってはいないそうだ。


「そう、ですか…………残念です」


 殺されたのはその殆どが子供で、特に理由もなく嘲笑うかのようにゆっくりじわじわと(なぶ)り殺しにされたらしい。


 本当に、噂以上に下衆な連中だ。


 悔しい思いと、どうしようもない怒りが込み上げる。


(ひいらぎ)、今は……」


「ええ、分かっています。行きましょう」


 (ひいらぎ)(みこと)の二人は妖達を引き連れ、その場を後にする。

 それから何事もなく、神域に辿り着く。常に周囲を警戒していたが、特に気配は感じられなかった。どうやらあの鬼以外に追ってはいないようだ。


(ひいらぎ)(みこと)、無事だったか!」


 二人を見つけた石長比売(いわながひめ)が安堵の息と共に駆け寄る。


「遅くなりまして申し訳ありません、石長比売(いわながひめ)様。途中、鬼と交戦になりました」


「何?! お前達怪我は?」


「ご心配には及びません。瞬殺いたしました」


「そ、そうか………それにしても」


 二人に怪我がないと知り、ほっとしたのも束の間、石長比売(いわながひめ)は後ろを振り返り、面の下で顔を引き攣らせる。


「これは不味いな」


「はい。当初予定していた数の二倍近くはいます」


「神域は広い。故に場所に関しては問題はないだろうが……食べ物が圧倒的に足りないな」


「戦がどれだけ長引くか分からない以上、多少危険ですが、外へ取りに行く他ないかと……」


 (みこと)は"多少"と言うが、そんなわけがない。外は戦で混沌と化している。巻き込まれればいくら巫女とも言えど危険すぎる。そして、食料確保をしに行くのは必然的に巫女達だ。正直行かせたくはない。しかし、食料なくば餓死者が出るのもまた必然である。


 行くも地獄、戻るも地獄とはこの事だろう。


「どれぐらいもつ?」


「おそらく二日。切り詰めれば三日は持つかと思われます。しかし、あくまで我々のような体格を基準に計算しておりますので、それ以上に体が大きい妖がいるとなると……」


「状況は厳しいか……!」


「やはり、外へ調達しに行くしか……」


「はっきり言うが、あまり現実的とはいえんな。この数だ。それ相応の食料を調達するとなれば、酒呑童子が溜め込んでいる倉から拝借して来る他あるまい。だが、おそらく今あそこは戦場だ。お前達とて行かせるわけにはいかぬ」


「しかし……!」


「心配ない。私が他の神にもう一度頼んでみる。望みは薄いが、一番安全だ」


石長比売(いわながひめ)様、それは……!!」


 また、頭を下げるのか。また、あの蔑んだ眼差しに晒されようと言うのか。駄目だ。それだけは駄目だ。そんなのは耐えられない。


「なりませぬ、石長比売(いわながひめ)様。あのような事……他に方法が――」


「なんだぁ、ぞろぞろと逃げてくから後つけてみりゃ、神が余計な事してたのか。めんどくせぇ事しやがるぜ、まったく」


「?!」


 不意に聴こえる、重く圧の籠った男の声。巫女達は動きを止め、神域の入り口に体を向ける。

 結界の向こう側から漂う妖気。只者ではない。

 (ひいらぎ)(みこと)以下全巫女が表情を険しくし、警戒を強くする。身構えこそしていないが、臨戦態勢である。そして、それを肌で感じ取った石長比売(いわながひめ)は入り口を油断なく見つめる。


「何者だ。出てこい!」


 神域の入り口付近にたむろしていた妖達が異変を察して離れてゆく。すると、一人の鬼が姿を現す。

 黒茶色の短髪。見る者を凍りつかせる眼光。頭の横から捩れるように伸びた太い二本の角。巌のような顔つきに蓄えられた顎髭。赤い甲冑に、手には身の丈程もある巨大な刀。

 隠しきれない重圧と妖気。強い。おそらく巫女達では太刀打ち出来ないだろう。


「知っているぞ。ぬし、以前酒呑童子と共にやって来た鬼だな」


「なんだ、憶えていたのか」


「記憶力は良い方でな。大概の者の顔は憶えている」


「そうかい……そんじゃ、無駄話はここまでにして、ちゃっちゃと終わらせるか。お頭から言われてるんだ。全員皆殺しにしろってなぁ!」


 悍しい笑みを深め、妖気を撒き散らす。肌を叩くような重圧が押し寄せ、冷や汗が額を流れる。


「その妖気、まさか貴様……」


「あー、そう言えば名乗ってなかったな。俺ぁ、星熊童子(ほしくまどうじ)だ!」


 男の名前に(ひいらぎ)達が驚愕に目を開く。


星熊童子(ほしくまどうじ)だと?!)


 星熊童子(ほしくまどうじ)。酒呑童子率いる鬼達の中で四天王と呼ばれる大幹部の一人。その戦いっぷりは一騎当千。無茶苦茶の一言で、斬馬刀を用いて敵を全て砕き切ってしまう。星熊童子(ほしくまどうじ)の後には、ぐちゃぐちゃに潰れた肉塊だけが残るという。


石長比売(いわながひめ)様、おさがり下さい!」


 近くにいた(ひいらぎ)(みこと)が護るように前に出る。他の巫女達は表情(かお)を固く身構える。空気を察してか、妖達は奥へ奥へと避難してゆく。


(かける)(みやび)、貴女達は石長比売(いわながひめ)様をお護りしなさい!」


「はい!」


「畏まりました!」


 この場にいては彼女達の邪魔になる。何も出来ない自分に腹立たしさを覚え、石長比売(いわながひめ)は唇を噛み締める。


「無理だけはするな。良いな!」


 (かける)(みやび)を共ない、石長比売(いわながひめ)は妖達と共に安全な場所まで去ってゆく。


「さて、中々厳しいですね……」


 現れたのがただの鬼であればどうとでもなったのだろうが、いかんせんやって来たのが星熊童子(ほしくまどうじ)という大物だ。巫女達の顔に余裕がない。


「………」


 星熊童子(ほしくまどうじ)が一歩踏み出す。それだけで面白いぐらい大きく反応する。


「くくくっ……笑わせんなよ!」


 斬馬刀を引きずるように持ち、一気に駆ける。重い甲冑を身に纏っているのが嘘のように軽々とした動きだ。


 標的は近くにいた猫又の父子。父親は自分達が狙われているのだと理解すると、子供を庇うように覆い被さる。


 距離は一瞬で潰れ、死は目の前。


「そんなんで護ったつもりかぁ!」


 大上段に構えられた斬馬刀は重い音を立て空気を退け、猫又の父子を襲う。


「させません!」


 鈴の音が鳴る。


 斬られる寸前で(やまと)が結界を張ったのだ。反応できたのは奇跡だ。

 斬馬刀は青白い壁に阻まれる。


「ちっ! 結界かよ。めんどくせぇ!」


 砕く事は容易だが、隙を生む。星熊童子(ほしくまどうじ)は猫又の父子から巫女達へと標的を変え、近くにいた(よしみ)へと斬りかかる。


「ぐちゃぐちゃにしてやるぞ、女ぁ!」


「やれるものならやってみなさい!」


 結界を張る。(やまと)が張ったものより分厚い。しかし、同じ手が何度も続くわけがない。星熊童子(ほしくまどうじ)は斬馬刀を結界へ投げる。すると、斬馬刀は結界を貫き、深々と突き刺さる。(よしみ)に届く事こそなかったものの、切先は目と鼻の先である。

 顔のすぐ前で止まった事に安堵の息を漏らすのも束の間、目に映った光景に背筋を凍らす。


 結界の向こう側。星熊童子(ほしくまどうじ)が凶悪に顔を歪め、拳を振り上げていた。

 大きく後ろへ振りかぶられた拳で勢いよく斬馬刀を殴る。すると、結界の途中で止まっていた斬馬刀は殴られた衝撃でさらに前へと進む。

 切先が進むその先には(よしみ)の顔。当たれば脳漿を撒き散らして絶命である。


(よしみ)っ!」


 一瞬の事で固まってしまった(よしみ)(つかさ)が引っ張り、斬馬刀の軌道からずらす。斬馬刀はついさっきまで(よしみ)の頭のあった位置を通過する。もし(つかさ)が袖を引っ張ってくれていなかったと思うと、恐ろしくて背筋が凍る。


 今度こそ一安心。なんて事はない。下を向いていた刃はいつのまにか(よしみ)(つかさ)の方に向いており、柄は既に星熊童子(ほしくまどうじ)が握っていた。


 理解した時には結界が砕ける音が鳴り、刃は二人に向かって来る。


「っ!!」


 (つかさ)より早く事態を理解した(よしみ)が動き、(つかさ)を押し倒す。すると、頭上を斬馬刀が風を引き連れ通り過ぎる。


「ちょこまかと……!」


 中々しぶとい巫女に舌打ちを鳴らす。途端、鈴の音と共に、凛とした声が辺りに響く。


剣薙(けんなぎ)(だん)!」


 唱えたのは(なぎ)だ。


 指を二本立てた手を振り上げる。途端、青白い刃が空を切り裂き、星熊童子(ほしくまどうじ)に迫る。だが、刃は斬馬刀で呆気なく叩き落とされてしまう。


「なっ?!」


「こんなものが通用すると思ったか!」


「ならばこれはどうです――」


 (みこと)が両手の指を三本づつ立て、胸の前で三角を作る。


「――剣薙(けんなぎ)龍烈(りゅうれつ)!」


 青白い光が強く光ったかと思えば、目の前に大きく口を開けた龍が現れる。

 『剣薙(けんなぎ)龍烈(りゅうれつ)』。彼女達巫女が扱う術の中でも大技にあたる切り札の一つだ。猛烈な勢いと存在感で迫るその姿は、まさに圧巻。さしもの星熊童子(ほしくまどうじ)と言えど、動揺を隠せずにはいられなかった。


「んなっ?!」


 猛烈な龍の行進。そして広い攻撃範囲。こう至近距離で撃たれては避ける術は無い。


「ちくしょうがっ!!」


 星熊童子(ほしくまどうじ)はとっさに斬馬刀を縦に踏ん張る姿勢を取とった。その直後、龍は一瞬で星熊童子(ほしくまどうじ)を呑み込む。

 龍は地を抉って神域入り口付近に在る巨石に突っ込み、土煙を巻き上げる。


「………」


 (みこと)は龍が突っ込んだ場所を油断なく見る。手応えはあった。しかし、やはり四天王と言われるだけのことはあるようだ。すんなり倒されてはくれないらしい。


「……しぶといですね」


「ったりめぇだ! こんなんでくたばってたまるか!」


 悪態を吐きながら土煙から出て来た星熊童子(ほしくまどうじ)の姿は甲冑が砕け、着物はぼろぼろ。見るも無惨である。しかし、見た目以上に傷は浅く。寧ろ平然としている。


「今のは流石に肝が冷えたぜぇ……で? 次はどうするつもりだ。まだ抵抗すんのか?」


「大人しく殺されろとでも? 冗談はその髭面だけにして下さい。汚らしくて不快です」


 鋭く睨みつける。


「そんな安い挑発に乗るかよ……」


 斬馬刀を軽々と持ち上げて肩に担ぐと、威嚇するように巫女達を睥睨(へいげい)する。


 眉を逆立たせ警戒する巫女達。しかしその顔は非常に整っており、身体の肉付きも良い。それが星熊童子(ほしくまどうじ)の劣情を掻き立て、口元がいやらしく歪む。


「良くみりゃいい女が揃ってやがる。殺す前にちょっと()()()か!」


 劣情を抱いた眼差し。その眼差しに巫女達は肌を粟立たせ、身を抱き締めたくなる様なとてつもない嫌悪感と吐き気に襲われる。


「下衆が……!」


「まぁ、そう怒んなよ。やってみりゃ案外楽しいもんだぜ。最も、そんな事を思い始めた時には死んでるかもしれねぇがなぁ!」


 にちゃぁとした笑み。星熊童子(ほしくまどうじ)の頭の中を考えただけで気持ちが悪い。


「貴様の様な男に体を許すなど死んでもありません! これ以上の話も無用です!」


 (ひいらぎ)が隠しきれない不快感を含んだ怒気を放つ。


「怖い怖い。その顔がいやらしく乱れる様が愉しみだねぇ」


「そんな事は無いと言っているでしょう――恢槍(かいそう)乱穿(らんは)っ!」


 鈴の音が鳴る。途端、星熊童子(ほしくまどうじ)を取り囲む様に青白い無数の槍が出現し、間髪入れずに襲いかかる。

 避けることも、逃げる隙間も無い。だが、星熊童子(ほしくまどうじ)の顔は自信と余裕に満ち溢れていた。


「これだから女は。すぐに頭に血が上りやがる」


 途端、妖気が溢れる。そして次の瞬間、星熊童子(ほしくまどうじ)が肩に担いだ斬馬刀を持ち上げ、左脚を軸にその場で高速回転する。まるで竜巻だ。

 槍は全て竜巻の前に弾かれてしまう。


「なっ?!」


 目の前の光景が信じられない巫女達は、唖然と口を開ける。


「今のがさっきの龍だったらやばかったが、あの程度なら余裕だぜ」


 そう不敵に嗤った、かと思えば、既にそこに姿は無く。


「お前からだ、女ぁ!」


 聞こえて来た声は(ひいらぎ)の背後だった。


「っ!」


 背後を取られた事に驚きと不覚を取り、振り向きざまに攻撃を仕掛けようとする。しかし、星熊童子(ほしくまどうじ)は歴戦の猛者である。その様な行動は慣れっこであり、お見通しである。

 攻撃を放とうとする(ひいらぎ)の腕を掴み、首に斬馬刀を添える。


「くっ……しまった!」


「お前ら経験不足だな。神の護衛として鍛錬積んでたんだろうが、実戦経験に乏し過ぎる。だから俺一人倒せねんだよ」


 こうなっては最早どうしようもない。かくなる上は。


 (ひいらぎ)はもう片方の手で星熊童子(ほしくまどうじ)の腕を掴み、その上から結界を重ねる。ちょっとやそっとでは解けぬであろう強固に固める。


「……なんの真似だ?」


 (ひいらぎ)が不敵に笑う。その笑顔に星熊童子(ほしくまどうじ)は僅かながらの悪寒を感じ取る。


「私ごとこの男を討ちなさい!」


「んな?!」


 (ひいらぎ)の目に覚悟と強い意思が燃え盛る炎の様にゆらゆらと揺れる。その言葉が虚言ではない事を表していた。


「分かりました」


(みこと)様?!」


 (みこと)が一歩前に出る。同じく石長比売(いわながひめ)に使える(つかさ)(やまと)では荷が重いと判断したからだ。


 (みこと)の霊力が高まる。十分な殺気も満ち満ちており、疑う余地もなく本気であった。


「くそっ! 離せこの(あま)ぁ!」


 星熊童子(ほしくまどうじ)は死に物狂いでもがく。しかし、腕は固められて動かない。首に添えた斬馬刀と(ひいらぎ)の足も地面と固めてしまってびくともしない。

 巫女如きの攻撃では死にはしないだろうが、重傷は避けられない。その後は動けなくなったところをとどめを刺されるだけの結末だ。 


「ふざけんなてめぇっ! この女がどうなってもいいのか?!」


 最早余裕など無い。必死の形相だ。


「準備はいいですね?」


 (ひいらぎ)は無言で頷く。「やってくれ」と言わんばかりに。


 (みこと)は心を鎮めるようにほっと息を吐く。そして、指をニ本立てた手を二人に向ける。


「――神風(かみかぜ)琉破(りゅうは)


 澄んだ鈴の音が大きく鳴る。すると、巨大な青白い球が二人に向かって放たれる。


 神域全体に広がる地を揺らす轟音。


 地を抉り、空気を押し退ける。


「やめろ、くそっ! 離せぇぇぇぇぇ!!」


 これが最期。(ひいらぎ)はそう悟った。その瞬間、走馬灯が駆け巡る。どれもこれも懐かしく愛おしい思い出ばかりだ。決して楽しいものばかりではなかったが、それでも、充実した人生であった。

 巫女となり、石長比売(いわながひめ)に使えた事が何よりの誇りである。


 もう十分だ。


 自然と涙が頬を伝う。もうお使え出来ないのかと思うと悲しいが、石長比売(いわながひめ)の為に死ねると言うのなら、それはそれで本望である。


 最早、思い残す事は無い。


 (ひいらぎ)は目を閉じた。瞼の裏に見えるのは、平和で和やかな温かい日々。


 霊気の塊が地響きを鳴らして迫る。そして――




「え……?」




 ――一刀(いっとう)のうちに両断された。


「そう命を粗末にするものではないぞ」


 強く、凛とした綺麗な声。


 目の前では、艶やかな朱色の髪が風を包むように舞う。


 女だ。鬼の女。


 (ひいらぎ)は時を止めたように呆然とする。(ひいらぎ)だけではない。(みこと)(つかさ)も、星熊童子(ほしくまどうじ)でさえも時を止めた。しかし、その瞬間にも『神風(かみかぜ)琉破(りゅうは)』を斬った鬼の女は止まらない。腰を落とし、片足を軸に体を回すと、手に持った刀を斬り上げ、(ひいらぎ)の腕を掴んでいた星熊童子(ほしくまどうじ)の腕を斬り落としす。更には一瞬で(ひいらぎ)が張っていた結界をも斬ってしまう。


「ぐ……あ、あぁぁぁぁぁぁ!!」


 腕を斬り落とされ絶叫する星熊童子(ほしくまどうじ)を尻目に、鬼の女は(ひいらぎ)を抱き抱え、(みこと)達のところへ行く。


 一瞬の事で何がなんだか分からない巫女達は動揺を隠せない。ただ、(ひいらぎ)が死なずに済んだという事実に胸を撫で下ろした。


「あ、貴女は……?」


 腰の抜けた(ひいらぎ)は、鬼の女を見上げる。息を呑むほど綺麗な鬼だ。

 朱色の柔らかく艶やかな髪。額の右側からは、象牙のように綺麗な捻れ曲がった角が一本。金色に輝く澄んだ眼はまるで月のように美しい。目鼻立ちもしっかりしており、まさに美女だ。しかし、身に纏う格好は真逆である。

 少し仕立ては良いが、ぼろぼろの藤色の着物。その上には真っ赤な胴当て。そして、申し訳程度の籠手(こて)具足(ぐそく)。手には血に濡れた刀が一本。それは、戦場を駆ける鬼の姿であった。


「誰だか知んねぇが、助かったぜ!」


 星熊童子(ほしくまどうじ)は斬り落とされた腕を拾い、それを切り口にくっ付ける。傷はみるみる内に治り、やがて腕は完全にくっつく。


 それを見届けた鬼の女は優しく「ここで待っていてくれ、すぐに終わらせる」とだけ告げ、星熊童子(ほしくまどうじ)と対峙する。


「なんだ、お前みたいな女は初めて見るな? どこの誰だ?」


「………」


「黙んまりかよ……どうだ、ここにいる連中皆殺しにしたら、特別に俺の伴侶に迎えてやっても良いぜ。俺は()()()からよぉ、良い声出させてやるぜぇ!」


 女と見れば見境がないのか、はたまた鬼の女の容姿とその乱れる姿を想像したのか、舌を舐めずり、いやらしく気持ちの悪い視線を飛ばす。


「黙れ下郎。その臭い口を閉じろ」


 鬼の女は不快感を滲ませた言葉を投げかける。


「あ?」


「貴様のような下衆と伴侶? 笑わせるな。鏡を見てものを言え。誰が好き好んで貴様のような奴と契りを結ぶ馬鹿がいる。そんなに伴侶が欲しくば肥溜めにでも行って蛆虫とでも契りを交わせ、阿呆(あほう)が!」


 怒涛の如く押し寄せる罵声。腕を斬り落とされた事も合わさり、星熊童子(ほしくまどうじ)の目は充血し、額には青筋が浮き上がる。射殺すような視線を鬼の女にぶつけた。


「んだとてめぇ……調子乗ってんじゃねぇぞ(あま)ぁ!!」


「調子に乗っているなどと言う言葉は、自分のやっている事に自覚のない奴の言う言葉だ。まさに今の貴様だな。そんな事も分からないなら鏡と見つめ合って他人と話す練習でもしていろ」


「……っ!!」


「さて、私も暇ではない。この後すぐに兄者(あにじゃ)の元へ行かねばならん。貴様のような下衆とこれ以上交わす言葉も時間も無い。見ているだけで不快だ」


 あまりにも煽り散らかす鬼の女にドン引きの巫女達。一方で星熊童子(ほしくまどうじ)は顔を真っ赤に怒髪天である。


「この、くそ(あま)ぁ! こっちがした手に出てりゃ好き勝手言いやがって! そんなに死にたきゃ尊厳も何もかもぶち壊した後で望み通り殺――」


「死ぬのは貴様だ下郎!」


 言い切る前に、鬼の女の姿は視界から消え、気づいた時には星熊童子(ほしくまどうじ)の背後に立っていた。


 小さく息を吐き、刀に付着した血を振り払うとそっと鞘にしまう。そして、刀が鞘に完全に納まったその瞬間、星熊童子(ほしくまどうじ)は文字通りの八つ裂きとなって、あっけなく死を迎える。


 刹那の出来事。その場にいた誰もが息を呑んだ。


「そうだ、名乗り忘れていたな。私の名は"朱蓮(しゅれん)"。黒縄丸の妹、朱蓮(しゅれん)だ」


 それは、瞬殺だった。



まだ続く

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