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29. スタート配置に着きまして

『さーあ始まりました第18回神々の祭典通称神フェス!司会は毎度お馴染み、私神官ラファルト!そして気紛れ解説は我らが主催神ラディアン様でお送り致しております!』

『妙な肩書きを増やすな。前にも言った』

『善処致します!

さて今回の神フェス、 通算2回目となるレース形式が採用されております。前回はコースの破損地形の崩壊等々割と甚大な被害が出ましたが、その辺り今回はどうなっているのでしょうか?』

『コースの素材補強は勿論だが強制力も割り増しした。参加者には前以て釘刺しという名の忠告もしたし後は知らん』

『このやるだけやって投げやりな感じ!今回参加される神々には是非とも自戒と自己責任とを胸に刻んで頂きたいですね~!』


調子の良さそうなラファルトと名乗った男が、軽快なトークで進行を開始する。

ざわめく会場に朗々と響き渡る声。観客たちは一時声を落とした。


『さぁでは早速、注目の参加神のご紹介と参りましょうか!まずは一番手この御方から!


収めるはクライストロ大陸東部、貫禄ある巨躯は頼れる漢の印ッ!揺るぎなき地の男神、レオナルドーッ!!』


「わああああああっ!!!!」

「よっ男神の中の男神ぃーーーっ!!!!」

「レオナルド様ーっ頑張ってーっ!!!!」


「うむ、此度も存分に楽しませてくれる!」


名を呼ばれると同時に威風堂々とした足取りで会場の中心に大柄な男の姿が現れると、一斉に大歓声が湧き起こった。

突然の大音量にも怯まずがっしりとした太い腕を上げて応えるその姿は、流石の貫禄と言えるだろう。


『そして今回そのパートナー、クライストロ大陸最東域に君臨する武闘派代表格!焔の男神、ユージーーーンッ!!』


「ユージーン様ーーーっ!!!!」

「かっこいーーーーっ!!!!」

「ユージーン様の戦い楽しみにしてましたーーーっ!!!!」


「はっ、物好きなこったな」


レオナルドと比べると若干黄色い歓声や年若い青年の声が多く聞こえるのは、支持層の違いだろう。当の本人は呆れた顔で肩を竦めてそれらをいなし、レオナルドの隣へと立った。


『さてそこに対抗するは我らが風の申し子!子どものような外見に惑わされることなかれ!暴風の男神、ヤズラルムッ!!』


「きゃーーーっヤズム様ーーーっ!!!!」

「可愛いーーーーーーっ!!!!負けないでねーーーっ!!!!」


「おっしゃー!任しときぃ!」


見た目だけならば天真爛漫なショタ枠と言っても過言ではない故か、ヤズラルムへの歓声は女性が中心だった。

しかしそれに靡く様子は見せず、自分のペースを崩さずにヤズラルムは本意からのやる気を見せる。


『そして今回も彼の神のお目付け役!最早見慣れた保護者の風格ッ!大いなる地の男神、シュナードーッ!!』


「男神シュナードーーーっ!!!!」

「シュナード様あーーーっ!!!!」

「シュナード様だってお強いのちゃんと知ってますからーーーっ!!!!」


「はは、は……うん、ありがとう、頑張るよ」


まるでヤズラルムのおまけのような紹介を受けたが、特に怒りなどを見せることもなくシュナードも背筋を伸ばして堂々と会場に姿を現す。

しかし寧ろ観客らからのフォローめいた声援に苦笑いを洩らしていた。


『そして今回、久々の登場だっ!昨年燃え上がった艶姿以来かっ!小大陸の女神、ミリアーセーーーッ!!』


「ミリアーセ様ああああああっ!!!!」

「相変わらずお美しいーーーっ!!!!」

「またあの輝きをお見せくださーーーいっ!!!!」


「ふふっ、ありがとうみんな。頑張るわ!」


天舟(ルアル)を従えて現れたミリアーセは、慣れた様子で微笑み手を振り返す。意外にも若い女性からの声援が多く、彼女の人柄が窺える瞬間であった。



『―――さあ皆さん、大っ変お待たせ致しました!本日のメインゲスト!永らく空白だった彼の地に満を持して舞い降りた、麗しき天上の美貌!たおやかなる凛々しい立ち姿が数多の心を奪う新しき風の支配者!女神!イファリーーースッ!!』


わああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!


割れんばかりの大歓声が会場中に木霊する中、渦中の女神は慈愛に満ちた微笑みをその美貌に浮かべていた。

並び立つ神々の中央に、堂々と長い黒髪を風にたなびかせ背筋を伸ばして宙に浮かび立ち―――女神(わたし)は思った。

前振り長い、と。


エンタテインメント性は理解しているので文句は言わないが、こっ恥ずかしいことに変わりはない。意地でも顔には出さないけども。祭りのノリでなければ逃げていたところだ。

アルカイックスマイルを浮かべたまま優美に宙に立っていると、群衆に向けて表示されている巨大な映像に自分の顔がアップで映し出されたのが視界の端に見えた。

仕方がない。

腹を括って私は口を開いた。


「ごきげんよう、あまねく人の子らよ。私は風と太陽の女神、イファリス。此れよりは大陸の西の地より、大いなる祝福の風を吹かせましょう」


「わああああああああああああっ!!!!」

「イファリス神、ばんざーいっ!!!!」

「新たなる女神様に祝福をーーーっ!!!!」

「女神イファリス様、ばんざぁーーーいっ!!!!」


うん。こっ恥ずかしい。

頬が引きつりそうになったけれど、ふと見えた関係者席からこちらを見つめるメイルとシーファ、ついでにファランケと目が合って、自然ににこりと笑って見せた。

大丈夫だ、頑張れる。

私が笑いかけたのがわかったのか、メイルが何事か叫んでいた。遠くて声は聞こえないけれど、多分頑張ってと言ってくれてるように見える。

シーファは微動だにしていないけれど、緊張した様子でじっと私を見ていた。


『それでは早速競技を開始する。全員スタート地点へ移動しろ』


慇懃無礼なラディアンのアナウンスが聞こえて、私はもう一度二人を一瞥してからミリアーセの元へと向かった。




* * *




事前に説明されていたスタート地点にそれぞれのペアが配置につく。

慣れた動作でルアルに乗り込むミリアーセの肩に手を置き、後ろに屈み立つ形で私もそれに続いた。

残りのペアもそれぞれが自前で用意していた乗り物に腰を落ち着ける。レオナルドとユージーンは大型のバイクのようなもの、シュナードとヤズラルムはジェットスキーのようなものをそれぞれ用意していた。使用が許可された乗り物は1ペアにつき一台まで。よってユージーンはサイドカーに、ヤズラルムはシュナードの後ろに腰を下ろしていた。

そもそも乗り物が違えばレースにならないのではないかとラディアンに指摘したところ、どれも出力は操縦者の技量によってスピードが決まる仕様の為、機体を統一する意味はあまりないと言われた。要するに全て、科学的技術で作られた乗り物ではないのだ。

勿論全ての乗り物が事前に点検を兼ねた検査をされていて、度を越した魔改造などがされていた場合はその場で他の機体にチェンジを言い渡されることになっていたらしい。無論、そこで強制交換を受けた物は一つとしてなかった。


スタート地点から伸びる広大な荒野のような道の先を見据えて、事前にあったラディアンの説明を思い返す。



―――今回用意したコースはだだっ広い荒野を適当にそれっぽくアレンジしたものだ。主にコースを形造る岩石の素材は昨日見せた通り。破壊なんてしようものならば即座に跳ね返ってくるからそのつもりでいろ。


ホワイトボードに貼られたコースらしき図形は一見曲がりくねったりしていたが、それほど意地悪なギミックはなさそうに見えた。がしかし。


―――今回のレースには3つの関門を設けた。それぞれを突破しなければ先に進むことは出来ない。そこで今回は機体を操って先に進む者、そして関門含む障害物を排除する者とに別れてもらう。無論、可能ならば操縦者が障害物の排除を試みても良い。競うのは単純にスピードの速さ。どのペアが揃ってゴールするかという一点のみが勝敗を決する

―――ペアが揃ってってことは、どっちか片方だけじゃ駄目ってことか?

―――その通りだ。このレースはあくまで二人揃ってこそ意味があると思え。



勝利条件はいち早く二人揃ってゴールに辿り着くこと。コースの破壊は推奨されない。操縦者を上手くサポートし、スムーズに突き進むことが望まれる。

今回私たちのペアが使う乗り物は天舟ルアルである為、操縦は当然所有者であるミリアーセが務める。私はそもそも自力で飛べるし、今回はミリアーセの行く先をあらゆる形で支援するのが役目となる訳だ。


「面倒な役を任せちゃったけど、大丈夫?」


気遣わしげにこちらを見るミリアーセに、しっかりと頷いて見せる。


「平気よ。それよりなるべく制御は心掛けるけど、私も自分の力を手探りしながら色々ぶっ放すから、とばっちりとか食らわないように気をつけてね?」

「ふふっ、わかったわ。最初が肝心だもの。貴女は思いっきり暴れてちょうだい」


流石ファランケで慣れている女神は度量が違った。思わず拝んでしまいそうである。


3メートルほどの間隔を空けてスタート地点に並ぶ3組。操縦を担当するレオナルド、シュナード、ミリアーセの三柱は、既に500メートルほど前方に見えるコースの入り口を注視していた。


「ええかシュナード、勝負なんやから思いっきりかっ飛ばしぃ」

「わかってるさ」

「走んのはおっさんに任せた。俺は好きにやらせて貰うぜ」

「うむ、ほどほどにな」

「いい、イファリス。向こうの遊撃手はどちらも厄介よ。焦らず自分のペースを保ってね」

「りょーかい。せいぜい楽しむとするわ」


いつでも飛ばせる態勢に入った3組が、各所に設置された大画面に映し出される。会場に集まった観客が、世界中の群衆が、各神殿の神官たちが、固唾を飲んでその動向を見守る。


『レディ―――GOーーーッ!』


ラファルトの号令を合図に、3組の走者たちは一斉に機体を駆り出した。

【おまけ~関係者席でのぼやき~】

ファ「ノリノリでスリーカウント決めたかったのに却下された」

マ「大人しく見てましょうね」

ファ「はぁい」

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